珠玉のミニ・ハイキューブ・ボックスカー(2)
さて、先日の記事に追記したことですけれど、アサーン製品の2種類は、プラグドア車の方が、UPが1967年にオマハの自社工場で製造したBF-50-4という型式で、スライドドア車は、PC&F社が1970年代にSPとSSWへ供給したB-70-36がプロトタイプと判明しました。
Tony Cook氏による「みにくいアヒルの子Ugly Duckling」と題するページの情報です。
ということは、BN色のモデルは絵空事の可能性が高くなってきたということで、私としては面白くありません。
それなら‥‥と、実際に在籍したプルマン・スタンダード製の方のキットを組み立てることとしました。都合の良いことに、同氏のページでBN用のデカールを販売するサイトがリンクされていましたので、早速注文しました。
キットは、ハイテク・ディテールズ社が2001年に発売したもので、CB&Q塗装済と未塗装を揃えて、DRGWやMilw、IC、NP、BNで使用という説明がウォルサーズ・カタログの2002年版に出ています。
CB&QはNPやGNと共に、合併してBNになった鉄道です。
このとき、直ぐに各1両注文したものの、未塗装は売り切れで後日の入手となりました。パッケージが異なっているのはそのためです。
キットの構成は、今の時代には珍しい6面体を組み上げるスタイルです。側板の湯口の切り取りに、少々の手間を必要とするなど、パッパッと組んでいける楽な代物ではありません。
写真の、上に載っている方が、その加工済です。ドアの上レール辺りですからモデルではよく目立つ部分です。
また、各モールドは少し厚めで、妻板が少し反っています。次の画で上に載っている方は修正済です。
床下は、台枠横梁のリブを10個、接着しなければならないという面倒さです。
また通常のブレーキ3点セットとハンドブレーキ関係の他に、水平テコやロッドの先端部分がモールドされていて、黄銅線を加えてリギングが組めそうだと、一瞬は嬉しくなります。
しかし、説明図などは何も無くて、位置を示すモールドも無いので、私は月並みに部品だけを接着しただけです。
一方、床板の取付は、プラスチックのブロックを車体側に貼り付けて、ネジ止めとしました。
床上面へは鉄板50gを両面テープ(自動車内装用)で貼り付けて、総重量115gとなりました。製品にはウエイトが添付されていません。
車体四隅に取り付けるハシゴは、キット本来の想定では、それぞれ4つのボスで車体面からわずかに浮く形となっていて、CB&Q車はそれに従いました。
ただし、これでは破損し易いと考えて、BN車はボスを切り取ってベタッと車体面へ貼り付けています。
塗装は、BNデカールの指示では、屋根を銀、床下を黒とされていますが、私は全体をグリーンとしました。実物の工場が、理由も無く面倒なことをやるはずがないと思ったからです。
CB&Q車は、屋根が銀に塗装済でした。下回りには黒を吹き付けました。
また、プラスチックのモールド自体が灰色ですから、ハシゴなどのパーツで湯口の切り取り口が目立ちます。これは、未塗装の手ブレーキ装置と共に、手近にあった赤塗料でタッチアップしました。
グンゼのキャラクターレッドですけれど、小面積ですから違和感はありません。加えて、デカール貼付後に全体をオーバーコートすれば、ツヤが統一されて、さらに目立たなくなります。
BN車のレタリングは、デカール・メーカーのサイトにアップされていた姿に仕上げました。
膜は十分に薄く、印刷はちゃんとしたシルク・スクリーンで、メーカーサイトで謳っているアルプス・プリンターではありませんでした。ホワイトは、十分な隠蔽力があります。
側面右下のリューブ・プレート(コンソリデーテッド・ステンシル)は、白と黒を別々に重ねて貼り付ける方式でした。
セット以外で使ったものは、ACIラベルだけです。
CB&Q車には、BN車に合わせて、リューブ・プレートとACIラベルを追加しました。また、BNセットに含まれていた、リース関係と思われる標記を、側面の左上部に貼り付けました。
台車は、CB&Q車にはアサーン製が添付されていました。これは、カトーのバーバーS-2に交換しました。例の軸端キャップが回るやつです。
BN車はアキュレール製で、そのままです。
さて、組み上がって線路に載せてみると、車体が腰高な点が気になりました。
それで、Car & Locomotive Cyclopedia1974年版pS3-24に出ている図面を確認すると、全高が16'8・5/8"=5,096mmということで、HOスケールでは58.5㎜となり、縮尺通りです。
図でも車輪と床下面の空き具合が判りますが、たぶん、クッションアンダーフレームを装備しているために台枠高さを下げられないのだと思います。
右は、同じページにあるCB&Qの車です。ドアの白い斜線の意味は、Evans社製のDF2という"loader device"を備えていることなのですが、これがよく判りません。
この年代に製造されたCB&Qのボックスカーには、時々見られて、その説明には"DF"の他に"nine-belt"とか"belt rail"などという語句が付いています。
たぶん、積荷を車体の奥へ送る装置だろうと思うのですが‥‥。
Michael J. Spoor著"CB&Q Color Guide to Freight and Passenger Equipment"に拠れば、19825-39の15両がイリノイ州GalesburgのAdmiral社用で、そのDF2付です。
19840-74の35両が、オハイオ州Marionと、インディアナ州EvansvilleのWhirlpool社用で、Equipcoバルクヘッド付だとあります。私のCB&Q 19871はこれです。
Equipcoについては、Car & Locomotive Cyclopediaの1966年版から広告頁をスキャンしておきます。荷崩れ防止用の可動式仕切り壁ですね。【拡大画像はスクロールします】
これらの車両は全て1967年製で、3年後の70年の大合併により、BN 281425-74という車番を割り振られました。徐々に塗り替えられつつ改番が行われ、また廃車があって、1990年前後にはBN色もほとんどが消滅したようです。
が、なんと“私の”CB&Q 19871を1997年に目撃したという話があります。
ところで、このBNデカール・セットには、丸に"Exceeds Plate C"と、 四角に"Plate F"の両方が入っていました。製作者の Daniel Kohlbergに尋ねたら、「丸拡大Cは製造された1960年代後半から70年代初頭までで、角Fはそれ以降だ。Fはその頃に制定された。妻面上部白帯の有無は理由が判らない。1960年代から両方存在する」とのことでした。
Cook氏も書かれているのですけれど、そろそろHOでもアトラスが製品化しそうですね。NP車は、それで揃えることにしたいと思います。アサーンのミニ・ハイキューブについては第1回をご覧ください。
【追記】エバンス社のDF-2についての稲葉さんのコメントに、気を取り直してCar & Locomotive Cyclopediaの1966年版をもう一度ツブサに見直していくと、なんとなくイメージが変わってきました。右は同社の広告です。【拡大画像はスクロールします】
"DF"がダメージ・フリーを意味して同社のブランド名ということで、"DF-B"が可動式仕切り壁で、"DF loader"がツッカイ棒、"DF-C"が圧延鋼板コイル運搬車用といった辺りでしょうか。
"DF-2"の文字は、UPの70トン50フィート車にあります。この床が滑動するように見えたもので‥‥(笑)
さらに"ベルト・レール"は、NYCの70トン車です。この側出入り口のところの桟の数がちょうど9本です。これのことでしょうか。
【追記2】同辞典の1953年版に"Evans DF Loader"を発見しました。
次は1957年版のSparton Corporationという会社ですけれど、"Wall members"が"belts"と同義であるような書き振りです。
どうも「ベルト」は、我々の持つイメージとは違うのかもしれません。2011-08-13
【追記3】鍵穴様マークの見分け方が判明しました。詳しくは、アメリカ型鉄道模型大辞典の“ローディング・デバイス”の項をご覧ください。ネタは、Walthers Decal Catalog 1985年版p131です。2013-08-09
【追記4】四隅のステップを金属製パーツに取り換えました。この記事です。2015-03-12
【追記5】この車がタンジェント・スケールTangent Scale Modelsからも発売となりました。2016-07-20
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珠玉のミニ・ハイキューブ・ボックスカー
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コメント
Evans の DF もしくは DF2 はトレインオーダーズ・コムのこのあたりのやりとりで如何がでしょう?
奥へ送る装置ではなく、ベルトがぐっと締まる装置です。
Evans 自身は、autocar のキーパーツである autoloader の販売で (戦前から) 有名な会社でしたが、戦後はこうしたこまごましたパーツも作り始めたって事で‥‥
しかし、boxcar に縦に乗用車を積もうと考えた発想はやっぱり理解できん ;-)
>>コメントありがとうございます。カーサイクロから画像を幾ばくか本文中へ引用しておきましたが、まだちょっと‥‥(笑)【ワークスK】
投稿: 稲葉 清高 | 2011/08/12 11:25
DF=ダメージフリー という言葉は知っていましたが、てっきりクッションアンダーフレームのようなデバイスのことかと思ってました。
昨今の日本の箱トラックでこういう棒で荷物を押さえつけるのを見ますが、DFがこういうのだったとは・・・
勉強になりました
>>私も一緒です。掲載されている書籍を持っていても宝の持ち腐れ! で、カミさんに取り付けさせられた鴨居の突っ張り棒だと、原理的に車体幅が膨れてしまう‥‥ということで、クロスメンバーの壁面での支持方法が肝要の様です。DFとDF-2では互換性が無いのだそうです【ワークスK】
投稿: Brass_solder | 2011/08/15 17:39