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2011/09/28

国鉄貨車:カトーのワム90000キット組立

Construction of Kato's HO scale 4-wheel boxcars, WAMU-90000 of Japan National Railway

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 Brass_solderさんのブログで、2軸車のバネ可動化を試みられた中に、カトー製品を分解した話が出てきました。

 商品説明には「脱線防止対策機構付き」などと大層な謳い文句が掲げられていて、どんなものかという興味が湧いてきました。模型店でワム90000を見つけたので、買ってきました。2両で3千円ちょっとと、大きさを考えればアメリカ型と似たり寄ったりです。【画像はクリックで拡大します】

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 分解は、車体と下回りが簡単に外れたものの、あとは判じ物です。
 ツメと思われる部分を弄っていると、何となく取れてくれました。「へ」の字形の板バネが入っていて、軟質プラスチックの内側軸受を支える構造ですから、氏考案のものと同一指向ですけれど、カトーは内側軸受が線路方向に倒れないように、上下でスライドする形です。
 ただし、この前後にガタが1㎜ほどあるので、効果のほどは判りません。
 モデルでは車輪車軸に前後方向の力が加わらないので、Brass_solderさんの構造で十分だと思います。

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       この図は【追記3】の特許情報を引用

 実は、3点支持となっていることを心配していました。
 かつて、「イコライザーへの形而上的アプローチ」という記事でも書いたとおり、日本のモデラーのイコライザー至上主義的なところを懸念していましたので、バネ式でホッとしました。

 バネはリン青銅の様で、厚さ0.1mm、幅は2mmです。長さ22㎜のうち左右8.7mmほどを曲げてあります。なお、Brass_solderさんのトラ35000は、厚さ0.2mmで2×18mmとのことです。
 全重量は42gです。バネは浮いているのではなくて、上昇ストッパーに僅かに当たっています。可動代は1㎜弱です。

 ついでですから、全体を分解してみました。床板が2枚構成で、間にウエイトが挟んであります。白いプラスチックは手すりです。

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 購入者がなすべき最大の難事は、「転写シール」の貼り付けです。
 単なるインレタかと思ったら、黒い台紙と透明保護シートの間に、白い文字を載せた透明の粘着フィルムが挟まっていました。写真でも文字の周りが浮いていることが判ります。

 このため、貼りたい文字を台紙ごと切り出す必要があるわけですが、台紙を剥がそうとすると、文字が台紙の方に食い付いてしまうことがあり、その場合は文字をピンセットで摘まみます。
 一番難しいのが台枠側面右の形式番号で、予めセットされた車番とする方が無難でしょう。私は、「90920」から「92006」を、また「139176」から「91763」を並べ替えましたが、上手く貼れていません。ただ、貼り付けた後でも、爪で押せば、少し動かすことができます。

 軸バネ直上の「①」と「②」のうち、後者の位置に銘板状のモールドがあったので、冒頭の写真の様に92006だけ、その脇としました。これで良いのでしょうか。

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 なお目立つのはやはり、文字の周りにハミ出ている粘着フィルムです。たぶんメーカー側は、不透明でクッキリとした白を重要視したのでしょうが、使い勝手の面からも普通のインレタで十分だと思います。

 次は、側引戸を開けたところで、向こう側の引戸の裏側が気になります。側ブレーキのテコなどの厚さや、手すりの太さには目をツムる方が健康的です。

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 床下のブレーキ・リギングも実用本位です。

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 屋根の筋状のモールドは、キャンバス布の重なりを表現しています。

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 カプラーはケーディーの#5としました。ポケットのフタをこじ開けて、取り換えるだけです。

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 全体のプロポーションには惚れ惚れとします。早く、走行テストをしてみたいですね。

【追記1】「①」と「②」の呼び名については、「車軸箱位置称呼表示用」の文字が、鉄道史資料保存会編「スハ43系客車明細図」1983年刊p134に見えます。
 また、この製品の新発売紹介が“とれいん”誌2001年12月号にありました。「2軸車で問題となる走行の安定性では、両方の軸にバネを入れることでレールへの追随性を向上させている」と書かれています。ヨ5000と同時発売です。2011-10-01

【追記2】コメントでご質問のあった中床?の分解は、まず次の絵の矢印部分を外します。全部で4か所あるうちの対角の2か所を外すと簡単に離れます。
 ただし、カプラーの交換だけなら、ポケットのフタを外すことで可能です。絵のようにマイナス・ドライバーなどを差し込んでコジコジします。2017-04-29

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【追記3】カトーの特許を見つけました(公開番号1998-309384 astamuse)。単に構造を説明しているだけで、勘所となるバネの強さや上下スライドの維持には言い及んでいないところが意味深です(笑) なお有効期限は出願日から20年なので、ちょうど2日後に切れます! 2017-05-10

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コメント

こんにちは
>バネのサイズ
あれ?と思ってKATOのトラ45000をもう一度分解して見たら・・・ワークスKさんの書かれたとおりのサイズのバネが出て来ました。
私が作ったバネが幅18ミリだったのでそれと混同して誤記してしまったようです。
失礼しました。

久しぶりに震災で落下して床板と妻板だけになったトラを見ましたが、側板は何処に行ったのか?不明です (笑

>>この方式はイケると思います。既存モデルへの適用で大きなポイントは、車軸方向の寸法を如何に縮めるかでしょうか。タイヤ厚さ2.8㎜(0.110インチ)を2.2mm(0.088インチ)まで薄くできますから‥‥【ワークスK】

投稿: Brass_solder | 2011/10/05 08:07

はじめまして、もう5年前位の記事に質問をして恐縮です。最近、カトーHOワム90000を手に入れました。あれから再再販せずにいるメーカーの姿勢に疑問を感じております。
イモンカプラーを付けるため、分解することに致しました。ボディーは簡単に分解できたものの、ウエイトをサンドイッチしている下回りの板がなかなか外れません。管理者様のワムは綺麗に分解できていますね。コツさえつかめばカンタンかも知れませんが…ブラを折ってしまいそうで、マイナスドライバーとかヘラを差し込んで分解されておられるのでしょうか。宜しかったらご教授下さいませ。
宜しくお願い致します。

>>ありゃ、普通は添付されているアイソメトリックの総組立図がこの製品には無いのですね。本文に追記しておきました【ワークスK】

投稿: 本山敏彦 | 2017/04/29 17:50

本当に有難うございました。1両は無理やりカプラー上部からデザインナイフを逆さに装填し、力任せにはがすように取ろうとしたため中床が割れてしまいました。お釈迦にしてしまいました。
最初から相談するべきで管理者様の通りにすると簡単に取ることが出来ました。感謝いたします。

>>お役に立てて何よりです。
 カトー・カプラーはケーディーとは相性が悪く、取り換えるユーザーが多いことをメーカーは認識しているはずです。取扱説明書に何も記していないことは手落ちでしょうね【ワークスK】

投稿: 本山敏彦 | 2017/04/30 16:11

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