国鉄貨車:エンドウのプラ製レ12000キット
買い値は2両セットで3千円を下回りました。6面体を組んで塗装の必要がある上に、車輪とカプラーが別売ですから、カトーのワム90000と較べて割高感があります。
車体が白色なので、編成のカラーバリエーションとしては貴重です。
次の写真は、インレタが2両分の他は、1両分です。
1.期待の3点支持機構は
さて、肝心の3点支持です。次の写真を見てください。黒色モールドの軸受はダミーです。
材質が白色なので判り難いのですが、拡大していただくと、車軸の中心となる辺りに2つずつのポッチがあります。
このポッチで鉄板製の内側軸受体がスイングする構造です。段付きビスは、位置固定用です。
で、右のポッチ2個は判るとして、左のポッチ2個は何でしょうか?
よく考えれば、このままでは軸受体=輪軸が前後に揺れます。もちろん、これでも3点支持は成立して走行性能に支障するというわけではないのですけれど、不要な動きです。
さらに、どうして支点が“ポッチ”なのでしょうか。
高さを測るとほぼ0.3mmという微妙な数字です。摩耗は考えられないものの、何か硬いものでも当たるとかちょっとしたことで寸法が狂ってしまうのは目に見えています。車体長手方向にもう少し長さを採れば安定したスイングを持続できるはずです。
勘ぐると、「3点支持の機構が失敗したときのことを考えた」のではないでしょうか。その場合は、この小さなポッチをナイフか何かで削れば、あっという間に普通の4点支持に早変わりです。
また、段付きビスを中心にしての内側軸受体の水平回転は、まさかラジアル1軸台車を狙っているのか、と訝ったのですが、さにあらずで、ダミー軸受で規制されます。
他の皆さんはどうかと、ネット上に作例を探してみたものの、この点への指摘は見つけられませんでした。ただ、可笑しいものは可笑しいので、左の軸受は固定してしました。
なお、スイングの支点の高さが0.3mmですから、軸受では0.6mm、車輪は0.5mmほどの可動代があることになります。
また、ダミー軸受の内側を斜めに削って、内側軸受体の動き代としました。
説明書による車輪の指定は、軸長24.5㎜の10.5㎜径ピボット軸で、プレートかスポークです。後者が望ましいものの、メーカー純正品は1軸380円で2両分1,520円です。
2.下回りのディテールは
このブレーキ関係のモールドは、中村精密の1977年発売のものに瓜二つでした。写真の奥がそれで、手前がレ12000です。
これで、これが同社製の直系であることを納得です。
こちらは側ブレーキ・テコが曲がっていますから、軸箱を避けている辺りの雰囲気が醸し出しているのかなとの期待は、次の写真のように裏切られました。
実物の図面を読み間違えたか、あるいは金型の制約かとも思います。次は鉄道史資料保存会編「1950年代国鉄貨車明細図集」1987年刊のワム23000で、上から見下ろしたところです。この黄色に着色した部分が側ブレーキテコです。
軸受まわりをエーダイと較べると、これは断然よくなっています。ブレーキシューヘッドのモールドもグッドです。
側ブレーキのステップが無かったので、1㎜角線と0.5㎜厚のプラ材で適当に作りました。
箱状の奇妙奇天烈摩訶不思議なものは「ウエイトカバー」という名称です。中に重りの黄銅板を固定します。
この薄い板を納めるだけなら、こんなに厚くしなくてもよさそうなものです。
ネジ止めとするので、重りを増やしたいときに外せるのかと思いきや、ブレーキシューや側ブレーキの“足場”になっていて、特に後者はダミー軸受と接着となりますから、取り外しは不可能です。ですから、このカバーは床板に接着してしまうに越したことはありません。
このカバー無しとするのは結構、ホネです。
なお、使用するビスが皆、頭が薄い精密ネジ・タイプというのは目立たさない配慮ですね。もったいないので他に使うこととし、こちらは普通のナベ頭を使いました。
ところで実物の写真と見比べると、側梁の辺りが何か寂しいことに気が付きました。
車体の補強というのか、片側で10個の帯材が斜めに付いているものです。塗装後だったので諦めましたが、精密化を図りたい方にはポイントとなるところでしょう。(これについては次回、もう少し詳しくお伝えします)
実物写真は誠文堂新光社「国鉄客車・貨車ガイドブック」1971年刊よりの引用です。
3.車体の組立は
全体の構成は、屋根板と妻板、側板を接着して、床板を取外式にしました。やはり、ウエイトを追加する必要性が発生したときのことを考慮しました。
ただ、このパーツの精度が悪いのには参りました。言葉では説明が難しいのですが、当たりが出ていないのです。次の写真で、屋根板の当たりと側板の間に隙間があります。
塗装は、少しグレーがかったグランプリホワイト(Mrカラー#69)としました。
屋根は黒色です。白色の実物写真も存在しますが、列車としては黒色の方が納まりが良いかと思います。
この違いが、製造ロットによるものなのか、あるいは時代的なものなのかを手持ち資料やネットに当たったのですが判りませんでした。
インレタは、ネット上では食い付き難いとの評判でした。パッケージに「2011年製造」とあったので、改善されているかと期待したのですが、私の腕では無理で、デカールをアルプス・プリンターで自作しました。
一般検査票の左のローマ字を「D」としてしまいましたが、前出の実物写真では「D2」です。
ハシゴはランナーに付けたまま塗装して、所定箇所に0.7mmキリで穴あけ後、接着しました。切り口にタッチアップをするつもりでしたが、目立たないのでそのままです。
車体の寸法は、長さ92.5㎜、幅31㎜ですから、奥井淳司さんの鉄道CAD製作所の図面とピッタリといえます。
4.雑誌の製品紹介欄では
ところで、この製品が何時ごろ発売されたのかと、とれいん誌を探すと2004年10月号に製品紹介がありました。
さらに、このシリーズを遡ると2000年7月号に行き着きました。上まわりは例の中村精密/エーダイの5種類で、下まわりの構造は、今回のレム12000と全く一緒です。
次は同じ号のエンドウの広告です。(拡大画像は横にスクロールします)
もちろん、TMS誌も7月号で、RMM誌は8月号で紹介しています。
不思議な点は、製品のルーツに言及していたのがRMM誌だけということです。これは当時、同誌だけにはエンドウが広告を出稿していなかったので書けたのだ、と邪推できます。まあ、2000年の新製品と言い放っても通用するほどにハイパフォーマンスだという解釈も成り立ちます。
組立見本はレタリングが美しく仕上がっています。
ただし、上述の指摘や、前回に話題とした寸法違いには一切触れられていないところを見ると、山崎喜陽氏時代のTMSが懐かしく思われることです。と、最後は老人の‥‥(笑)
【追記】この種類の3点支持方式に関する“懸念”について、「伊藤剛氏のネジレ棒式イコライザー」で考えてみました。経験をお持ちの方のご意見を是非お聞かせください。「追記3」です。2013-02-11
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