国鉄貨車:中村精密/エーダイのプラモデル(5)
この写真は良い感じです。文字の配置は弄っています。
そして次の10月号では早々と製品紹介が登場しました。
扱いは1/8ページ大で、「チ1000を除く5型式が下回りを大幅に改良して再発売、床板と軸受まわりを一体のダイカスト製とし、同時にブレーキシリンダーとエアータンク、ステップ、縦横の梁などを表現している」とあります。
完成の写真が2枚添えられ、下回りはブレーキテコが表現されたエーダイ・プラモデル並みに見えます。値段の記載はありません。
さらに12月号の広告で価格が、有蓋車900円、無蓋車800円と出ました。6年前のざっと2倍です。
私は、この大幅値上げにガッカリするどころか、逆に期待をしました。もちろん、既に就職してフトコロが暖かくなっていたこともあります。
理由は、大量に抱えていたエーダイ製キットの、ヤワい軸受やブレーキまわりの解決になるかもしれないと考えたからです。
しかし、購入した中身を見た途端に、その望みは打ち砕かれました。
なんと、広告や製品紹介から受けたイメージとは大違いだったのです。下回りが無塗装のダイキャスト一体です。TMSの製品紹介文を仔細に読めば確かに書いてあるものの、その写真は黒です。
それに、車輪をどうやってセットするのでしょうか。説明書が入っていたかもしれません。たぶん、亜鉛メッキの鋼製スティック(写真の右隅)でコジろというのですけど、このダイキャストの頑丈さでは到底無理です。
ディテールについては、フォルムは改善されているものの、如何せん、モールドはアマく、板バネの重なり模様が消えています。右写真は組立塗装後です。
また、ダイキャストの下回りには、プラ製のブレーキシューと側ブレーキを取り付けなければいけないのに、その接着面積はホンの僅かです。
さらに側ブレーキ・足踏み部の取付では、ダイキャストの側梁に1㎜の孔をあける必要があります。
ちなみに、この位置が難しくて、ズレると側ブレーキの案内棒というか、表面を白く塗る縦の棒が傾いてしまいます。
これではプラスチックを採用した効果がサッパリです。
TMSの紹介がベタ誉めなのは、塗装組立済みのサンプルだけをチェックしたのでしょうか。
私の製品に対する邪推は、「最初に売り出したシリーズは想定したほどには売れなかった」のではないかということです。事実、周囲の同好者には見向きもされず、私のモデルは稀有な存在でした。
それでメーカーが考えたことは、「天賞堂と同じダイキャストとしてイメージアップを図ろう。また、下回り全体を金属で作れば、無蓋車にもウエイト効果を付与できる‥‥」という勘繰りはどうでしょうか。中村精密は、1974年末に発売した客車でも床下機器をダイキャスト一体とする愚を犯しています。
それを今回、組み立てる気になったのは、コニシ・ボンドの「ウルトラ多用途SU」という接着剤を見つけたことが大きな理由です。「今までにないスピード」を謳っていますので、この接着に最適と判断したのです。
それは思惑通り、上手くいきました。
しかし車輪の保持については、何とかなるはずとの楽観は甘過ぎました。
車輪を填め込むと、軸方向の寸法が固くて回りません。仕方がないので、先端部分の窪みを0.7㎜のドリル刃でサラってみました。孔が斜めにならざるをえないのは覚悟の上です。
何とか回るようになって、グリスを塗れば滑らかになったものの、保持については、1軸がどうしても落ちてしまいます。
次の写真で、右の軸にモタレかかるように植えているビスは、この落ち止めです。
エンドウ製ブリキ貨車の末期に、下回りがダイキャストで、車軸をZ形のプレス金物で覆っていたのは、これと一緒ですね。
そして、組み上がっても落とし穴です。カプラー高さが約1㎜も低いのです。
それでその取付面を削ることとしました。トムは加工が難しいので、上まわりをワムと交換しました。こちらの床板は平板1枚だけという構成ですから、手で保持するのが楽ですし、他の部分を傷つけることもありません。まあ、40年前に仕上げた車体の横流しです。
後から考えれば、ケーディーの下シャンク型、たとえば#27を使う手がありました。不思議にも、この時は思い付きませんでした。どうも日本型とアメリカ型とでは別の頭が働いているようです。
何とか完成した姿が次です。車輪側面は、油性ペンで黒く塗りつぶしています。こうして見ると、裏も塗った方がいいですね。
重さは約60gで、4つの車輪のレールへの接地は、合格です。ブレーキシューも車輪に触れることはありません。
手すりを白とするのを忘れました。下回りの充実ぶりには満足ですが、はやり腰が低過ぎるような‥‥。
【追記】とうくんさんよりコメントをいただいて、やっとこの軸の固定方法が理解できました。なるほど、写真を拡大して見ると、軸先端を両側から包み込む様な突起が夫々2つあります。金槌が必要だったとは驚きました。説明書は大事にしなければいけません。2011-10-17
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コメント
いつも楽しく読ませていただいております。
このキットの車輪取り付け方法は、キットの中味を並べた写真の右端にある平板金具を使って、軸受けの内面両側にある突起を曲げてカシメてしまうというものでしたね。
金具の逆山型を軸受けに当て、反対側の端を上から金槌でコンコンと叩いてカシメるのですが、最初は力加減が分からず、おっかなびっくりの作業だったことを覚えています。
我が貧乏鉄道でも何両か製作しましたが、何とか形にはなっています。ただし、カシメなので再び車輪を外すことはできず、無理に外せば今度は2度とカシメられなくなるという不便な構造です。
完全プラキットの時代は、残念ながら発売を知らなかったので購入したことはありません。でも知っていたらきっと購入していたことでしょう。なんせ昔から貧乏鉄道なので
>>ご教示ありがとうございました。製品の意図がやっとわかりました。ううぅむ、恐るべしナカセイですね【ワークスK】
投稿: とうくん | 2011/10/17 22:59