台車探求:カブース用ベッテンドルフ台車
A pursuit of truck construction, Bettendorf and Barber-Bettendorf swing motion caboose trucks 追記と訂正を繰り返して読みにくくなったため、全体を書き直し 2019-11-19 ベッテンドルフ系に限定する内容に変更 2024-02-02
C&S 10401は元ATSF車。モデルはInterMountainで、台車はTahoe Model Works製の前期型。
2008年の訪米でロサンゼルス郊外パサデナのオリジナル・ホイッスルストップという有名な模型店に立ち寄った。
まあ、この時代だから、わざわざアメリカに来て買う品物なんて無いとばかりにタカを括っていたら、見知らぬHOゲージの台車を発見。メーカーはタホ・モデル・ワークスTahoe Model Worksだという。
そのバランスの悪い側枠には見覚えがあった。BNのいくつかのカブースが履いていた。【画像はクリックで拡大】
ベッテンドルフといえば貨車用台車でお馴染みだけれど、実はカブース用のスイングモーション台車で絶大なシェアを持っていた。1942年にはスタンダード・カー・トラック社がライセンスを買い取って、同社のブランドである“バーバーBarber”を冠し「バーバー・ベッテンドルフ」となった。この流れを説明したい。ただし、解説がどこかにあったということではなくて、私がBNを調べていて見当をつけたストーリー。話半分に聞いてほしい。初期型、前期型、中期型、後期型という呼び名も私が勝手につけている。
(1)初期型(c1907-c1924)コイルバネ>>板バネ
これが最初のもの。側枠はみるからにTセクション型である。Car Builders' Dictionary 1909年版に初登場。その一つ前の1906年版は普通のスイング式ではないTセクション型のみなので、その後に製造されたのだろう。トランサム=横梁が、前期型以降の一体鋳造ではなくⅠ型鋼(あるいはチャンネル)で、また板バネではなくて、コイルバネである。
続いて1912年版が全く変わらず。1916年版は、これに加えてスイング・モーションではない板バネ付Tセクション型がカブース用として出ていた(次の図版)。左右動よりも上下動の減衰に重きを置かれたという形になる。1919年版はネット上で未だ公開されていない。1922年版(CD-ROM本)にはスイングモーションは掲載されていない。
Tセクションで板バネ付は、GNの木造トランスファーカブースに発見した。1911年製のX-419で、BN 10928となった。他にNYCの19000シリーズとか、Soo、C&NW、RF&Pにも見つかった。内部構造を明示した資料は無いが、板バネを囲む口型の端面からスイング・ユニット付と考えられる。1909年版のコイルバネを改造で板バネに変更したということにしておこう。
モデルではケーディー社が発売している(品番581)。
(2)前期型(1924-1930s)
冒頭で言及した台車がこれ。スイングモーションとキャプションされている.
BNでは元CB&Qの1930年製NE-10や、元ATSFのラジアル・ルーフ車が履く(冒頭写真)。また、蒸機のテンダー用としてLocomotive Cyclopedia 1930年版p822に、側枠を外した図版(直上のもの)が出ていた。我が国を含めて旅客用機テンダーにスイング台車を採用することが多い理由は、水の踊り(液面揺動sloshing?)を防ぐためだと思う。
モデルはタホ社が発売。品番がTMW104とTMW204。品番の見方は、100番台が車輪幅0.110"のスタンダード車輪付きで、200番台が0.088"のセミスケール車輪付き。
(3)中期型(1935-1960s)
これの採用時期はタホ社が50年代までと書いている、当方が見付けた1960年代車は旧品流用かもしれない。30トン台車という触れ込みで、側枠が変更されている。カブースがスチール製となって重くなった時代なのだろう。まさにトランジション・エラ。このバージョンの組立図がCar Builders Cyclopedia 1940年版に公開されていて、スイング・モーション機構が判る。
このうち、トランサムtransomと呼ぶ横梁は、単体では次のような形をしている。
これで、側枠がゴソッと外れる構造を飲み込んでいただけると思う。上揺れ枕と横梁の間で、レール方向に力を伝えるスリ板と、左右動を制限するストッパーも判る。
右はオークションに出ていた1946年発行のリーフレット。“Brakeman Gets a Break”との文言で乗り心地の良さを謳っている。内容には、ここに示した図版以上のものは無い。BNでの装着は1964年以前の鋼製車で、元GN、NP、CB&Qの全てがこれ。一部に初期のW-Vカブースも含まれる。
モデルはタホ社で、品番はTWM105とTWM205。
(4)後期型(1966-1980s)
カブース用の最後を飾るのはローラーベアリング付きで、側枠の形が変わった。BN関連では1966年以降、最終の1981年まで全てに採用。モデル製品は概ねこれ。
1995年から発売のアトラス製。
ケーディー製(品番582)。
左の広告で、サイド・ビューが示されたワイド・ビジョン・カブースはキューポラの位置が特異なので、判る方には分かるはず。略称をMoPacともいう‥‥。
■で、これらの台車、メーカーは全て前述のベッテンドルフ社とスタンダード・カー・トラック社か、というとそう断言できないところが難しい。フレームの鋳出文字に、中期型でASF、後期型でGould、Scullin、UAFの名があるという。まあ、ライセンスを各社に供与したのだと思うが、よく判らない。
貨車のディテールにご興味がおありなら、CD-ROM本を発行する"freight cars illustrated"というサイトを覗いてほしい。台車は"Volume 9: Freight Car Appliances"。
さて、BNではバーバー・ベッテンドルフ以外にも、スイング・モーション台車があった。1980年に合併したフリスコSL-SFの1200クラス(1200-74 → BN11530-602)で、GSC(General Steel Castings Corporation)製。
実はこの台車、UPが愛用していて、セントラリア・カー・ショップ(現InterMoutain傘下)がHOゲージ製品を出していた。2008年に訪れたカリフォルニア州鉄道博物館でUPカブースの写真をたくさん撮影したのは故の無いことではない。不思議なことにUPはカブース用にBettendorfを購入したことがなかった。記事「UPカブース用台車の記事補遺」をご覧いただきたい.
タホTahoe Model Worksについては、アメリカ型鉄道模型大辞典を乞う御高覧。また本記事の引用画像は、その上にマウス・ポインターを移動していただくと出典を表示する。
【追記1】GNのカラー写真集で、車室長25フィートという短めの木造キューポラ・カブースが板バネ付き初期型を履いていた。車番はX330-X749辺りで、製造年は1907-11、1920-24、1929年というので、初期型の開始年を1907年としたい。ただし悩ましいことに、スイング・モーション・ユニットをアンドリュースが装着と見えるものもあった。X559とX714。これらの25'カブースは、1970年のBN発足時には28両が在籍していた。
また、天賞堂製品として有名な30フィート・スチールがアンドリュース付きだが、間違い。これらの実車は1920年代後半から1940年代前半まで製造が続けられていて、どれも次の写真の台車で、中期型とは異なる(タホはGNの中期型をX-200 – X-218 (some, 1941) だけとしている)。台車の項目には、"Sw Motion (GN & Bett)"とあるので、疑いなくスイング・モーション。余剰となった一般貨車用の側枠にベッテンドルフから購入した横梁ユニットを自社工場で組み込みという推察はどうだろう。2012-01-22 あるいは、前期型と中期型の中間の形態かも知れない。2019-11-19
Robert C. Del Grosso著"Burlington Northern Railroad Cabooses 1970-1995" 2006年刊 p58 Ed Chapman photo
【追記2】"とれいん"誌2012年7月号p106に、ケーディー製カブース用台車が1種類、紹介された(eTrain.jpサイト)。記述は無いものの、品番580のBettendorf-AARタイプ。
これはスイング・モーションではなく、カブース用としては珍品。まともな鉄道の、まともなカブースには使われないシロモノ。なのに、紹介記事では言及されていない。ということは、スイングモーションが我が国では未だ理解されていないことの証。別の品番583はArch Barタイプで、これもスイング・モーションではない。2012-06-30
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