貨車用台車の変遷 CBD 1909年版
Transition of freight car trucks appeared in the Car Builders' Dictionary 1909 by the Master Car Builders' Association
前回のカー・ビルダーズ・ディクショナリー1906年版では単体写真だけの掲載だったベッテンドルフ台車が、1909年版(コーネル大学図書館所蔵)には実車完成写真で登場です。まず、この辺りから見ていきます。【画像はクリックで拡大します】
ミルウォーキー鉄道の42フィート40トン・ボックスカーです。台枠は未だ魚腹ではありません。
同鉄道の40トン・フラットカーは図面です。
CNJの30トン・ストックカーで、台枠はストラクチャル・スチール=鋼材組立です。
CB&Qの40フィート長、50トン・ドロップボトム・ゴンドラです。これは魚腹台枠と言えそうです。
タンク車2種です。06年版での台枠だけとは異なり、タンク体と台車を含めてベッテンドルフ社製となった様です。
06年版の写真では不鮮明だった側枠の裏表です。軸箱部は思いのほか奥行きボリュームがあります。
そして、スイング・モーション台車が掲載されています。これの枕バネを重ね板バネとすると、以前に紹介したカブース用の初期型となります。
巻末の同社広告です。製造品目が増えています。
この時点で、やっとベッテンドルフ台車が普及し始めたというところでしょうか。
一方、アーチバー台車の発展型として外せないアンドリュース台車の方も、この09年版で初めて登場します。
ただし、不思議なことに、出ているのはその名称だけで、写真や図面がありません。右のASF社の広告で黄線を引いた部分です。
他方、その名は名乗ってはいないものの、同様に鋳鋼製の側枠と軸箱をボルト・ナットで組み立てる方式が沢山出ています。
まず、グールド社Gould Coupler Co.製の台車単体です。上弓棒に相当する部材がU形で、下弓棒部分はL形をしている様です。
他は実車例で、UPのボックスカーは、初お目見えの鋼板張りオール・スチール車です。
台車とは無関係ですが、この車体台枠が珍しい組み方なのでお見せしておきます。
次はポールトリーカーpoultry car=家禽車で、"without coops"は、金網がまだ張ってない、あるいは、鳥籠が未設置の状態ということでしょうか。
冷蔵車です。スキャニングが拙くてレタリングが読めません。
もう1両、36フィートの冷蔵車で、共にWhipple Car Co.製です。
AC&F製の40トン・フラットカーはNYC&HRです。中梁だけが魚腹状の台枠は、この版が初出です。
50トン積みの全鋼製ホッパー車で、Ralston Steel Car Co.製です。
40トン積みの全鋼製オア・カーはAC&F製です。
これもAC&F製の、40トン積みコークス車です。
2社の広告をご覧に入れます。スタンダード・スチール社は後年、プルマン社と合併して、プルマン・スタンダードとなった会社です。
AC&F社です。
不思議な点は、これらの台車が皆、どこかしら異なった部分を持っていることです。
次は、自動連結器メーカーのMcConway & Torley Co.のBuhoupというブランドの台車です。
これの特徴はコラム部分です。枕梁の上下スライド・ガイドを開いて、側枠がポコっと抜けることです。素人目に見ても、輪軸wheelset交換が容易そうです。
また、控棒相当部材の形態を選べると謳っていますが、その効能はちょっと理解不能です。
なお、3年前の06年版に、アンドリュース系に“見えなくもない”台車がウエスタン・スチール・カー&ファンドリー社製として掲載されていることに気が付きました。その写真は前回記事の追記に仕立てておきました。
ところで、次のスカリン社Scullin-Gallagher Iron & Steel Co.の側枠は、軸箱の固定方法がアーチバーやアンドリュースとは異なっている可能性があります。軸箱中心直上の孔を使うのでは小さ過ぎる気がします。残念ながら、台車に組み上げた写真はありません。
"Open Hearth Cast Steel"は"平炉鋳鋼"という意味でしょうか。
さてアーチバー台車は、大勢力となっています。ほとんどはMCBA規格型に見える中で、ここでは変わり種をピックアップしてみました。
まず、AC&F製です。一見規格型ソックリなものの、アーチバーの断面がチャンネル状となっています。このような形状は、03年版のコモンウエルス社製にありました。
同じくAC&Fのスイング・モーション台車です。"Santader a Biboa"が意味不明ですが、検索すると、スペインの地名"Santander a Biboa"をヒットしました。
Union Tank Lineのタンク車です。上弓棒が直線的な形をしています。
次は巻末のフォーサイス社Forsyth Steel Tie Companyというところの広告で、アーチバーの断面がT字形と変わっています。(あるいは、アンドリュースの変種でしょうか)
次はRussel Wheel and Foundry Company製のロッギングカーです。この会社は、日本でも知られたRussell Car and Snow Plow Companyとは無関係で、ラッセルの綴りも異なっています。
ところで、バーバー台車というブランドを持つStandard Car Truck社の製品は本編中には出てきません。左の広告だけです。
ここのラテラル・トラベルLateral Travelは、1895年版にDrexel truckとして出てきた機構です。
まあ、このカー・ビルダーズ・ディクショナリーでは紹介されないけれど、実車には普及していた方式もありえるということでしょうね。
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