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2012/08/26

京阪とJRの東福寺駅でジゴクを見た

Transfer in Tofukuji station between Keihan line and JR-West Nara line

電車&ウォーク2012年9月号

電車&ウォーク2012年9月号 先週金曜日の朝刊にJR西日本の折り込みチラシが入っていました。
 京阪神地区のイベントを紹介するB4版8頁というリーフレットです。ここで、左上の経路図に注目です。これ、京都市内観光の清水寺や八坂神社は、一旦奈良線に乗り、東福寺駅を経由して京阪本線で市内へ向かってくれ、という案内なんですね。

 去年、この「乗り換えの便を図って、ジゴク(!?)ができた」と聞いていたものですから、行き帰りのついでに写真を撮ってきました。【画像はクリックで拡大します】

 あらかじめ駅の構造を知っていただかなくてはなりませんので、航空写真を掲げました。
 北を左へ回転させています。すなわち、東側を南北に京阪が走り、西側をJR奈良線が通っています。

Google
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 次は、駅のレイアウトで、JRのものに手を加えました。グリーンが京阪構内で、ブルーがJR構内、グレーがラッチ外です。

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 両鉄道共に地上駅で、JRのみが橋上駅舎です。
 従来は、乗り換えの全ての経路で階段の上り下りを強いられていました。その中で、隣り同士となっているJRの奈良行ホームと、京阪の出町柳行ホームとの間は全くの平面で、昨年11月、ここに通路が出来たのです。

 実は“ジゴク”というのは、通路の両端に両社それぞれの改札が設置された、その中間が何処へも抜けられなくなっているという単純な話です。乗り換える利用者は改札を2つ、通過しなければなりません。

 航空写真と較べると、民家の用地を買収したことが判ります。

 さて、撮影してきた写真です。
 まずJR側京都行ホームに貼ってあったポスターで、京阪の“おけいはん”と、JR西の“カモノハシのイコちゃん”が仲良く手を繋いでいます。御両人が立っている場所が“ジゴク”です。

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 次は、夜になって撮影したJR側の“ジゴク”入り口で、朝7時から夜7時までの利用となっています。通りがかったのは8時半で、残念ながら閉まっています。

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 次は京阪側です。表示がアッサリしています。

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 柵越しに覗いた“ジゴク”内です。京阪側の改札は左にかすかに見えます。

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 次は京阪淀屋橋行ホームよりの遠望です。

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 駅員氏に拠れば、利用者は少ないとのことでした。それが開通時間帯にも影響しているのでしょうか。

 ついでに撮影してきた写真をお見せします。
 まず、一般道=本町通からの駅入り口です。入り口はここだけです。

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 正面です。京阪の改札機の向こうに、地下道が見えます。
 左方向にはJR駅へ上がる階段があります。

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 南端の京阪踏切(二ノ橋踏切)です。

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 その隣りのJR踏切(二の橋踏切)です。共に、駅の出入り口を作るにはあまりにも狭すぎます。

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 北端の京阪踏切(十二丁目踏切)です。ホームの向こうが買収した用地です。ここを使えば、一般道へ繋がって、“ジゴク”を解消できないこともありませんが‥‥。

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 ところで、この経路のメリットですけれど、良く考えれば、JR西日本の乗車距離はたった1.1kmで、しかも京都の特定都区市内(Wikipedia日本語版)ですから、増収分はごくわずかなはずです。
 かつて伺った話では、市内の道路交通が渋滞続きで、バスやタクシーでは時間が掛かるからとのことでした。まあ、京都観光の評判を落としたくないという大所高所からの施策なんでしょうかね。

 次は2008年12月撮影の京都駅での案内看板です。以前にもお見せしています。
 奈良線に加えて、蹴上の永観堂や東山の知恩院は山科から地下鉄東西線でと謳っていて、こちらなら増収となることでしょう。

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 一応、ウィキペディアの東福寺駅の項を読む上でのオサライをしておきます。

 まず1880年、官設鉄道(工部省→鉄道院→鉄道省→国鉄→JR)が、東山を南に迂回して東海道本線を開通させます。東福寺に駅は無しです。

 1910年、京阪本線が開通と同時に東福寺駅を開業します。官設鉄道は駅無しのままです。
 次の写真がその頃で、トラス上が京阪線です。地上の左側の線路を蒸気機関車が走ってくるのが見えると説明されています。「民営鉄道の歴史がある景観Ⅱ」p262からの引用です。

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 1921年、東海道本線のショートカットとして東山トンネルが開通すると同時に、こちらの線路は奈良線となります。
 奈良鉄道や近鉄京都線との関係がややこしいので、次の図をご覧ください。「京都滋賀 鉄道の歴史」1998年刊p314からの引用です。東福寺は、京阪と奈良線(東海道本線)との交差の、すぐ北辺りです。

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 1957年、奈良線の東福寺駅が開業します。この頃は線路が1本です。ホームは京阪の京都方面行ホームと地続きで、かつ改札業務は京阪に委託されます。

 1958年、京阪の上下ホームを結ぶ地下道ができます。ウィキペディアがいう連絡施設です。

 1984年、奈良線が電化されます、

 1993年、JR駅が橋上駅舎化されます。この橋上コンコースへは、京阪の改札口を一旦入ってから階段を上るというレイアウトでした。
 このとき同時に、上下線が分離したと思います。その計画段階でしょうか、ホーム上にJRの社員が大勢いて、計数器を手に乗客の動きを数えていた場面に出くわした記憶があります。

 2003年、橋上コンコースへの階段が、京阪の改札口を通らない形に改造されます。
 実はこの少し前、鉄道投資を審査する立場にあって、予備調査の予算を付けました。自動改札機が大変に特殊なソフトを使っていて、運賃改定のたびに莫大な費用が掛かっているとの説明でした。
 申請してきた担当者は、さも当たり前という顔をしていて埒が明かなかったものの、事は重大と感じ取って、知っていたメーカー担当者に内緒で直接尋ねてみました。すると、改札口を挟んで両鉄道のラッチ内が直に接する場合は、チェックすべきケースの組み合わせ数が半端ではない。また、私鉄の改札口を通らなければJRの改札口に行けない駅は他に無い、とのことでした。

 これと同じことが、今回の“ジゴク”通路にもいえるわけですね。JR・京阪間の改札口を2重ではなくて、1つにするためには、ここの改札機のプログラムを両社の条件が変わるたびに特注しなければならないということなのでしょう。JR・近鉄間の鶴橋などと比べると通過人数が桁違いに少ないはずですから、費用対効果の面もあるかもしれません。

 次は、京阪ホーム夜8時半頃の賑わいです。右が出町柳行ホームで、画像のちょうど真ん中に地下通路の入り口が見えます。
 過ぎゆく電車は淀屋橋行特急の8031編成(旧3000系)で、惜別ヘッドマークを付けているようです。

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【追記】ネットを検索すると、京阪とJR西日本共同の告知(pdfファイル)がありました。工事中の様子は「JR奈良線の話題」、使用開始前日が「鉄まっち撮影日記」と、「芥川の辺で一人。弐」、当日は「京都新聞」と「RMニュース」、京都市長の「活動日記」、その後の状況は「山城のタマちゃん的ウェブログ」がそれぞれ伝えています。2012-08-27京都市長門川大作乗換口連絡口

【追記2】ネット上に踏切の一覧がアップされていたので、名前を参照するとともにリンクを張っておきました。駅南端のものは、京阪が“二橋”で、JRが“二橋”と書くようです。2012-08-30

【追記3】“ジゴク”が開いているときの様子を撮影してきました。両ホームの仕切りがシースルーになりつつあるような感じでした。

 まず京阪側です。表示が無味乾燥なものの、地面に案内が書かれています。

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 ジゴク内部のパノラマ写真のアングルは、“おけいはん”と、“カモノハシのイコちゃん”のポスターと一緒です。JR側は工事中の様子で、資材を十二丁目踏切から搬入しています。

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 JR奈良線側です。2012-10-28

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【追記3】JR奈良線京都・宇治間の混雑具合を報告するYouTube動画を見つけた.アップは2023年12月3日.2024-05-03

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コメント

 google検索より偶然見つけました。
 なぜ改札が二つも必要なのか理解に苦しみますね。乗換改札一つで充分だと思うのですが。
 また、スマホに熱心になって日本語も読めない日本人が増えていますから、出口と間違えて「ジゴク」に入って身動きが取れなくなった時にトラブルが起こるのは確実です。やっつけ仕事のようにしか感じませんでした。

>>コメントありがとうございます。まあ、利用者の便というよりも、すべては関係者の“思惑”ですから‥‥(笑) 改札口を2つ通ることとなった直接的な理由は記事本文中にも書いた通り、改札機々能の制約でしょうか【ワークスK】

投稿: 匿名 | 2013/07/30 14:25

 奈良線から京阪本線への乗り換え時間を調べていて、拝見しました。
 半分ぐらいしか理解していないのですが、つまり、「ジゴク」というのは、東福寺駅で降りるつもりで連絡通路に出てしまうと降りられない、ということでしょうか。

>>ここでいう「ジゴク」はスラングで、「行き止まり」とか「袋小路」、「閉塞空間」ほどの意味です。このブログは限られた分野の読者を想定していて、多くの方々にとっては意味不明な点が多々あろうかと存じます。申し訳ありません【ワークスK】

投稿: ジェイ | 2015/10/22 09:34

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