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2013/01/07

ディテールズ・ウエスト製ボックスカー(3)

Questions about combination-door boxcars, and a model of them manufactured by Details West, now by Athearn.

品番600 コンビネーション・ドア車

Mr198111p120dw600 ディテールズ・ウエストからは引き続き、2年後の1981年にコンビネーション・ドア車が発売となりました。MR誌1981年11月号p120に"NEW"として広告が出て、1986年7月号のペイント・ショップにUPスキームが取り上げられています。
 プラグドアとスライディングドアを備えていて、ちょっと目を惹くボックスカーです。

 私が好きなバーリントン・ノーザン鉄道BNにも、たくさん在籍しましたから、興味があった一方で、大きな疑問も抱えていました。【画像はクリックで拡大します】

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 プラグドアといえば、皆さんご存知のように、戦前のヒンジドアに代わって、戦後のリーファーやインシュレーテッド車に標準装備され、普通のボックスカーでも1970年代以降は多くの車が備えるようになりました。
 それは、保温・保冷のための気密や、風雨からの完全防護が目的のはずなんです。

 ところが、すぐ横に不完全なスライディングドアを設置というのですから、意味が分かりません。

 ひとつの答えが、カラー写真集にありました。BNの前身であるGNとNPの貨車のものです。Scott R. Thompson著"Great Northern Equipment Color Pictorial, Book 1" p62、Todd Sullivan著"NP Color Guide to Freight and Passenger Equipment" p43。
 長尺の製材済木材をフォークリフトで積み下ろしするときは、両方のドアを開ける。穀物(グレイン)輸送のピンチヒッターとして使うときには、プラグドアを閉め切り、スライディングドア部には“グレイン・ドア”を取り付ける‥‥というのです。

Rmj199209p7 ここで“グレイン・ドア”を知っていただくには、RMJ誌1992年9月号p6-16(TrainLifeサイト、右写真を引用)を読んでもらうのが一番ですが、ざっと説明すると、穀物をバラ積みするために、ボックスカーのスライドドア開口部、下3/4を板や厚紙(これがグレインドア)で塞ぐ。上1/4の何も無い部分から穀物を流し込んで積み込む。そのままスライドドアを閉めて走行する。
 目的地に到着するとスライディングドアを開け、グレインドアをバールなどで外して、穀物を取り降ろす‥‥というものです。
 アメリカ型鉄道模型大辞典もご参照ください。

 この方向性でBNコンビネーションドア車の製造年を調べていくと、40フィート車が1956-1964年、50フィート車が1960-1966年であることが判りました。すなわち、ルーフウォーク付の時代です。
 この後は、プラグドアだけを装備して、その上部に窓を設けたボックスカーが登場します。1963-1968年です。アサーンにある40' Grain Box Car(同社サイト、写真を引用)が、このタイプですね。(このモデルのプロトタイプがUPのリビルト・ボックスカーだという会話がMRH誌のフォーラムにあります。2013-02-08)

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 プラグドアが2枚並んでいて、右側のものの上部の色の変わっているところが穀物の投入口で、グレイン・アクセス・ドアと呼ばれています。(アサーンのサイトにはGNとCB&QというBNの前身のスキームがラインナップされているものの、実車とはドアなどの形状が異なります)

 というわけで、BN車は全て説明が付きます。
 ところが、ディテールズ・ウエストのコンビネーションドアは違うのです。

 それは、スライディングドアの幅です。
 開口寸法が、次の写真(RailcarPhotos.comから引用)の様にBNでは6フィート(HOスケールで21mm)と狭いのに、ディテールズ・ウエストは8フィート(同28mm)と広いのです。

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 さらに10フィート(同35mm)のものもあります。50' FMC Combo Door Boxcarで、ラウンドハウス(次写真奥、現アサーンRTRブランド)やエグザクトレール(同手前、同社サイト)から発売されています。
 これではグレインドアが膨らんで、スライディングドアに当たりそうです。

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 次の実車資料は、Car and Locomotive Cyclopedia 1984年版p102です。穀物輸送にボックスカーを使ったのは1986年までというのですから、この版の出版された時期に新車を広告というのは如何にも違和感があります。

Clc1984p102a

 では、別の理由があるはず、と探すと、昨年のTrainorders.comに同じ問い掛けを見つけました。答えはちょっと煮え切らないものの、普通のスライディングドア車として使うときに、プラグドアの内側が壁の部分とツライチだと便利、というようなことなのでしょう。

 さらに探索すると、Car Builders' Cyclopedia 1957年版に、なんと、ドアメーカーであるヤングスタウン社Youngstown Steel Door Co.の広告を発見しました。つぎの図が1頁大で、その次のp103にSP車の写真とコメントが掲載されています。

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 謳い文句は"All-Commodity Box Cars"、すなわち「全ての物資を運べるボックスカー」などと、大風呂敷です。もちろん、グレインのことも書かれています。「普通にはシングル・スライディングドア車と同一」と言っていて、どうもプラグドアを閉め切ると、その内面に積荷を接触させられる、ということのようです。
 壁のある部分ではギシギシに詰め込んで、ドア部分は開閉できるように隙間を開けておくということでしょうか。これなら、自動車運搬用のダブル・スライディングドア車との違いが理解できます。

 Car and Locomotive Cyclopediaでは最終となる1997年版にもトレントン・ワークスTrenton Works製のBC Rail車が掲載されていて、それなりのニーズが持続している様子です。

 ということで、当方が入手したディテールズ・ウエスト車は、スライディングドアの幅が広過ぎる点に加えて、本来の屋根上歩み板撤去車ではないといった理由があり、力の入らない状態のままです。

BC-600 Undecorated
BC-601 Santa Fe
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BC-602 Chessie
BC-603 Cotton Belt
BC-604 Burlington Northern
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BC-605 Rio Grande
BC-606 Milwaukee

 現在のアサーンRTRブランドでは、単に50' Combo Door Box Carと呼んでいます。また別に、より新しいエクステリア・ポストの50' FMC Combo Doorもラインナップしています。

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 他社では、アキュレールが40フィート(GN,、NP、B&Q共に許容範囲か)と50フィート、インターマウンテンは50フィート、マッキーンも50フィートを出しています。

【追記1】文中に実車写真を示したBNボックスカーの、GNスキーム(GN 37229)時代の図面がRMC誌1970年9月号p40にあります。Stanley D. Hayes氏が奥さんと共にネバダ州リノで実測して、Oスケールのモデルを作ったんだそうです。2013-02-13

【追記2】我が国の"とれいん"誌では1993年10月号p55に、ディテールズ・ウエスト社のモデルを改造したユニオン・パシフィック鉄道、UP 167193が出ていました。岡田宏さんの作例で、妻板の改造が必要とのことです。2013-05-02

【追記3】ジャンク品のATSF車を再生してみました。ドア1枚とハシゴ7本、ステップ2か所が欠品で、Front Rangeのボックスカー等から流用しています。色合わせは失敗です。2015-12-07

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