フカヒレ・イコライザーの改良試作(1)
An improvement of the Shark-fin equalizer system for four-wheel equipments, part 1
このところまた、伊藤剛さんが考案された所謂“フカヒレ”イコライザーが話題ですね。
dda40xさんの“Giants of the West”では、方向性を見極める試みがなされていますし、あちこちで盛り上がっているようです。中でも私が注目したのは、2軸貨車に適用されたBrass_solderさんのブログです。
そこに何度かコメントさせていただいているうちに、改良のアイデアを思いつきました。【画像はクリックで拡大】
いつもは“脳内モデリング”というか、この手の話は妄想でお茶を濁すのですけれど、今回の着想は、文字で説明するのが少し面倒で、かつ確認も必要です。プラスチック材料と線材だけで出来そうだったので、作ってみることにしました。
試作は2両です。
1両は比較用の、2軸が連動しないタイプで、上回りにカツミのワム90000を使います。
もう1両は、これにイコライザーを追加して連動させたタイプで、ホビーモデルのワム70000です。
それでは、まことに遠回りというか、理屈っぽくて申し訳ないないのですが、長講釈を聞いてやってください。
[1] “フカヒレ”の盲点
まず最初に、このイコライザーの概念図をご覧ください。成り立ちは、次の図1に示すようなものでした。
それによれば、軸A-Oと、軸A'-0が回転して、B点とB'点で反力を発生させ、2つの軸は互いに反対回転するという解釈です。
それに対して私の見立ては図2で、回転軸はA-B軸と、A'-B'軸です。
ただ、車体の長い、すなわちC-C'の距離が長いボギー車では、車体中心線から回転軸が傾く角度が緩やかですから、C点とC'点が回転軸から外れる量は、誤差の内といえなくもないのだろうと推定しました。だから、機能を損なうことは無いと考えていたのです。
ところが、車体が短くて、C-C'の距離が小さい2軸貨車では、回転軸の傾きを大きくできて【追記1】しまうのです。
その場合は当然、C点とC'点の外れる量も増えます。Brass_solderさんの例でいえば、2㎜も発生したようです。
その帰結として、軸には荷重による回転力が働きます。O点が沈み込む方向です。
どういうことかというと、その方向には回転し易いが、その反対方向には回転し難い、ということになります。いうなれば、滑らかに動かないわけです。
また、イコライザーの造作のすべては、回転軸の車体内側にありますから、これらの自重でも同じ方向へ回転する力が働いています。
ところで世の中に、倒立振子(とうりつしんし)、「逆立ちした振り子」という名の運動モデルがあります。我々が知っている時計の振り子とは反対に、重心が上にあって、回転中心が下というもので、その一例が図3-1です。
これをイコライザーに当てはめてみましょう。
そうすると、図3-2に示すとおりに、中心を少し外れたところでは、ネジレ棒の振れに連れて、荷重点=C点が上下に動いているといえるのです。(図は大幅にデフォルメしています)
すなわち、左へ回るときには、荷重の働きが加わって軽く動きます。
ところが、右へ回るときには、荷重を持ち上げなければなりませんから、“重い”ということです。
コンノさんなどの作例では、これを問題とされることが無かったので、オフセットしている量が僅かだから大したことが無いのだろうと考えていました。
ところがここへきて、言及される例が出てきています。これを解消するために、トーション・バネで反対向きの力を加える方法が、Brass_solderさんの”Gキャンセラ”だと思います。また、dda40xさんは“重さの補償”と表現されています。
そこで、私が提案した方法は、直線B-Cの延長線上にA点を移動させることです。
こうすることにより、荷重の真下にネジレ軸が来ます。すなわち、図3-3です。これこそが前回(2012-07-17)のポンチ画で示した概略というわけです。ただし、イコライザー機構の自重による回転力は、従前のまま残ります。
ちょっと強引ですけれど、御理解いただけたでしょうか。
イキがっていますね。息が上がったというか、疲れました。次回に続きます。
根本的な原理については、こちらをご一読ください。
【追記1】2軸車で、この「回転軸の傾きが大きい」点について、最初は「大きくなってしまう」と書いていましたが、正しくは「大きくできてしまう」です。B点とB'点は、車体中心寄へいくらでも近づけられる、すなわち、角度は任意で小さくすることも可能です。2軸車の軸間距離が短いことは、メリットであって、デメリットではありません。ただし、それを考慮してA点とA'点の位置を決めるということです。2013-02-23
【追記2】表題を「フカヒレ・イコライザー」へ改めました。ゆうえん・こうじ氏が書かれたTMS誌2016年1月号の解説記事に合わせるという理由です。2015-12-27
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コメント
確かに軸距離の短い二軸車ではこの誤差は無視できませんね。その他のファクタ(軸が進行方向に対して直角を保てないなど)も多少は心配です。
ボギー間の長い貨車では、トルクを掛ける棒(パイプ)の質量とその周辺の質量しか関係しないと近似できるので、重さはバネでcompensate(補償)できるということになりました。
もちろん多少の動きにより、バネの力は変動しますが、長いトーション・バァはその変動率も小さく、好都合です。
拙ブログに等角逆捻りのGIF画像を追加しました。
>>種々工夫をされておられるようで、是非一度、実際に触らせていただきたいと考えております。【ワークスK】
投稿: dda40x | 2013/02/22 08:07
奇麗にまとめられましたね、さすがです。
質問なんですが、
車軸付近の軸受もネジレ軸方向を向いているのでしょうか?
また、比較用の方はいわゆる3点支持なのでしょうか?
よろしくお願いします。
>>コメントありがとうございます。そうなんです。それこそが今回のテーマで、最初にお見せしてしまうと「な~んだ」といわれてしまいますので、冒頭のカットはわざと見えないようにして‥‥(笑)【ワークスK】
投稿: Brass_solder | 2013/02/23 15:23