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2013/04/05

13mmゲージJMを始める前に(2)

Basic study for the beginners by a beginner of 13mm gauge (1:80, JM gauge) modeling, part 2: Some problems and the history JMゲージとは、13mmゲージとは

 分岐器のフログ関係以外にも、考慮すべき事項がいくつかある。
 それに、このゲージが辿ってきた経緯、歴史を雑誌などから思い付くままに拾ってみた。【画像はクリックで拡大】

Shiratoric56
最初の13mmゲージモデルが発表された「鉄道模型趣味」誌1958年3月号p109

[5]  フログ関係以外の諸問題

(1) 線路関係の規格は制定されていない。
 基本的な考え方は前述のとおり、シノハラ製の線路や分岐器を使用すること、すなわち、シノハラがデファクト・スタンダードである。

(1-1) 軌間については、13mm規格検討委員会の仕様書に、薄車輪の仕様決定に当たって13.0-13.8mmを考慮したとある。
 この12.8mmという数値は、8番分岐の先端軌条手前に存在するという。(RMM誌2001年12月号p106-107)
 一方、当方の実測では、フレキシブル線路が軌間13.2mmで、曲げると13.0mmまで狭まる。本年入手した分岐器(6番左)は、13.2-13.4mmとなっていた。

31dsc05678 (1-2) シノハラ製の分岐器の一部は、分岐側曲線の精度が悪く、蒸気機関車などを通すことが困難で、PTCによって分岐器の改造法が考案された。(RMM誌2002年6月号p116-117 斎藤晃氏の記事、PTC:プロト・サーティーンクラブ) 
 現行製品は改良されているはずとの説もあるが、詳細は不明。参考として今年購入品の写真を2枚、アップしておく。方眼紙上に置いた画はスキャナーを用いていて、目盛がぼやけてしまったものの、レール頭部は正確に写せているはずである。

Sinohara13mm6r

(2) スパイクモデル製 薄車輪のフランジ形状は発売当初、フィレットが大きく、脱線し易かったという。そのことを斎藤晃氏がRMM誌2001年12月号に書かれた時点では、既に改善されていたとのこと。(ということは薄車輪は時代的に、スパイク製前期、スパイク製後期、さらに規格委員会仕様という3種類があることになる)

30dsc05673 当方の旧蔵品がどちらに該当するかは判らないが、左の写真の左がそれで、右は今年購入のものである。

 この昔の車輪は、上丸EB4111に装着して、廣瀬渉氏のレイアウトで無事に周回を重ねたものの、如何にも恐ろしい。新しい車輪は、委員会仕様に合致しているのか、チェックしたい誘惑に駆られる。

(3) アメリカ型のHOゲージでは「セミスケール」と呼ばれる#88(タイヤ厚0.088インチ=2.2mm)車輪を、インターマウンテン等が2000年頃から販売していて、極めて安価である。
 これは、NMRA規格の#110車輪のフランジの厚さと高さをそのままに、タイヤ厚のみを0.088インチ=2.2mmに薄くしたもので、「ファイン・スケール」用#88に準拠しているのではない、と考えられる。(写真は左から、スタンダード、セミスケール、プロト)

 よって、これを13mmゲージへ流用するためには、厚車輪と同様に、バックゲージを約11.2mmとすればよい。フログで若干落ち込むかもしれない。(決め方は前回述べたとおり)
 ただ、アメリカ型の車軸は日本型よりも長く、段付軸も多いので、それをそのまま使うことは難しい。それに量産品はディスク車輪だけである。

(4) NMRA規格で“プロト”車輪と呼ばれる極めて薄い#64は、タイヤ厚0.064インチ=1.6mm(上の写真を参照)で、80倍すると130mmとなる。国鉄/JR系実車の125mmに対して、ほぼ縮尺通りといえるが、使用および検討の例を雑誌にもネットにも発見できていない。
 もちろん、真のプロトJM規格も実現可能だが、線路も専用の寸法仕様となる。

 1971年だったと思うが、私は、市販の車輪を1枚、1.5mm厚に薄く削ってみた。フランジ側をそのまま残したので、半分ほどがフランジという奇妙な形になった。

(5) 軸を非可動=固定とすることの可否は、未確認の部分がある。軌道条件や走行速度にも依る。

(5-1) フランジの高い厚車輪では、16.5mmゲージの大半で採用され、13mmへの改軌例も多く、全く問題は無い。
 また固定軸間距離の長い2軸貨車でも、昔のエンドウのブリキ製がこれで、13mmゲージでも十分に可能と考えられ、既にアクラスが採用している。

(5-2) フランジの低い薄車輪では、ボギー車は問題が無い。動力車でもトレーラーでも改軌例がたくさん存在する。
 ただし、2軸貨車は実例を確認できていない。

(6) 自動連結器には、ほぼケーディー型が使われている。

(6-1) カプラーの中心高さは、実物に多い880mmの1/80=11.0mmではなく、ほとんどの製品やファンが、1mm低い、NMRA規格の10.0mm(25/64インチ≒9.9mm)を採用している。これは、16.5mm製品を利用して、大きく手を加えることなく、狭軌感を手軽に楽しみたいという意向からなのだろう。ただ、この問題は、多くのファンが認識しているようだ。

 なお、880mmは空車時の寸法で、積荷状態では少し下がる。
 また、客車に幌を装着する場合には連結器が低いと干渉しないので都合が良いと、廣瀬渉氏は言われる

 もちろん理論的には、低い連結器高さは軸重移動を軽減するというメリットもある。

10dsc05717(6-2) ケーディー・カプラーの種類には、ナックル部の小さな「スケール・ヘッド(写真右)」と、少し大きい従来の「スタンダード・ヘッド(写真左)」がある。
 外観上は当然、スケールヘッドに軍配が上がる。機能上では、スタンダードヘッドの方が上下動があっても分離し難いということで、有利である。

 

[6] 13mmゲージJMの歴史

 記憶を頼りに雑誌を引っくり返してみた。

1920s (OOゲージ、HOゲージ製品が欧米で発売され始める:Wikipedia英語版

1928 (Oゲージ32mm軌間の日本型を1/45とする提案がなされる:TMS誌1976年6月号p67山崎喜陽氏‥‥ただし、1/40製品が戦後まで流通していた模様)

1942 (OO、HOゲージが日本に紹介され、「科學と模型」昭和17年1月号に山崎喜陽氏による記事「16番ゲージ日本標準規格に就いて」において、日本型は1/80と提案される:廣瀬渉氏の御教示による)

1950 (16.5mmゲージ最初?の日本型スケール製品としてカワイモデルがED14を発売)

Shiratoric561950s (EMゲージがOOゲージから発展してイギリスで成立:Wikipedia英語版

1950s (アメリカ向けのブラス・モデルが盛んに製造、輸出されはじめ、HOゲージが主流になっていく)

1958 13mmゲージ最初のモデルC56を白取剛氏が発表(右写真:TMS誌3月号p109、1963年刊「日本型蒸気機関車の製作」p38に再録)

1961 (シュパーブラインD51をカツミ/アダチが発売)

Tms196411p7021964 13mmゲージ用車軸を いさみや模型が発売:TMS誌11月号p702広告

 この前後から経緯をリアルタイムで見聞

1966 (9mm=NゲージのC50とオハ31系客車を関水金属が発売:TMS誌1月号p67)

1966 (プロトフォーがEMゲージから発展してイギリスに登場)

1969 (フィレットの概念が日本に紹介される:TMS誌8月号p538ミキスト>>これが錯誤だという件は、アメリカ型鉄道模型大辞典「フィレット」を参照)

1971 (プロトフォーが初めて日本に紹介される:TMS誌10月号p766ミキスト)

197? 厚車輪(BG:11.0)を珊瑚模型店が発売:写真は、出所不明のナット止め車輪(フランジの薄さに注意)と、後年の珊瑚の松葉スポーク BG=11.0、さらに委員会仕様のスパイクモデル製

22dsc05657

1976 (この頃、1/80-1/87のゲージ論が勃興:TMS誌6,7,9月号ミキスト,10月号中尾豊氏)

Tms197701p 1977 薄車輪(BG:11.5)をスパイクモデルが発売(TMS誌1月号p106広告 右画像:不思議なことに車輪厚さの表示が無い。バックゲージと軸径は記載されている。7月号p38に製品紹介)

1977 厚車輪(BG:11.0)と蒸機用台枠改造パーツをニワモケイが発売(TMS誌11月号p85広告:車輪は#110ではなく、若干狭いとの話がある。また、後年は薄車輪に変更された)

1977 フレキシブル線路を篠原模型店が発売(TMS誌11月号p108、とれいん誌11月号p16)

1978 13mmゲージをテーマに、とれいん誌が通年で連載

Wheel13mm_gauge

1978 (アメリカでプロト87が発足:Wikipedia英語版

1978 8番ポイントを篠原模型店が発売(TMS誌4月号p114広告)

1978 「プロトサーティーン」の語がスパイクモデルの広告に初登場(下の画像 TMS誌1978年4月号p101)

Tms197808p

1980 珊瑚製造の9600下回りベースキットをツカサ模型が発売(2009年刊:珊瑚模型店45年の仕事)

1983 (HO1067、1/87 12㎜ゲージの構想が発表される:とれいん誌4月号p39-49)

1983 (ニワモケイ=ビックニワがB&Nジャーナルを創刊:ロストワックス・パーツの最盛期? この時点での車輪規格が薄車輪BG:11.5となっていたことは[7-1]を参照) ビッグニワBigNiwa

1980s (トミーやカトーから、プラスチック製の日本型1/80製品が発売され始める)

1995 (天賞堂が輸出向け最後?のブラス蒸機NP Z7 4-6-6-4を発売)

2002 13mmゲージの検証を齋藤晃氏が連載(RMM誌2001年12月号、2002年4、6月号)

2003 薄車輪(BG:11.5mm)の新仕様を13mmゲージ規格検討委員会が発表(TMS誌7月号p114-115、RMM誌8月号p110-111、とれいん誌10月号p58-59)

2009 1月にプロト・サーティーンクラブ、PTCは1/80・13mmを「JM」と命名

2009 13mmゲージ初の道床付線路をモデルズイモンが発売、「JM」の名称を使う

 JMという呼称の由来を、PTCの文書では「Jyuusan Miriの頭文字」としている。もちろん根本では、おなじ"M"を使ったイギリスのEMを意識していることは明らか。このEMの意味は、公式的には18mmゲージ="Eighteen Millimetres"とされている。(Wikipedia英語版
 一方、某氏による私見は、「実態は"English Model"。で、"JM"は、"Japanese Mokei"」というところ。JMとEMで、日英同盟か。

 次回に続く‥‥

 

 実際のモデルを手にしたり走らせた経験が少ない中での個人的な検討ですので、見当違いや間違いがあると存じます。皆様のご助言をお待ちしています。

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コメント

ワークスK・栗生弘太郎さん、こんにちは。こちらではお初でPTCのN品川線と申します。
JM全般について色々お調べになっておいでですが、名称JMについては2009年1月のPTC総会においてPTCは1/80・13mmの名称をJMとする事を決議し、2010年開催の浜名湖の「こだま合運」及び蒲田の「鉄模連ショー」にて趣意書を配布して発表しております。
されど[6] 13mmゲージJMの歴史、を見ますとPTCよりも井門の考案が先と取られかねないので、2009年の箇所に「プロト・サーティーンクラブPTCは1月の総会で1/80・13mmの名称をJMと決議」の一文を入れて頂きたいのです。
また名称JMの経緯に付きましては狭軌の世界Ⅱ掲示板の2008年12月14日付け内容をご覧頂くと参考になると思います。

以上ご案内させていただきます。
よろしく

>>御教示、ありがとうございました。さっそく訂正いたしました。これでよろしいでしょうか。ところで、もし御存じでしたら、スパイクモデルがJMゲージの名称を使い始めた年月をお教えいただけると助かります【ワークスK】

投稿: N品川線 | 2013/05/16 05:57

ワークスKさん、今晩は。
鉄道模型趣味1963年12月号(186号)に石田信夫氏の労作「東武モハ3210形製作記」が掲載されていますが、この作品は13mmで、車軸には「カワイ製13mm用車軸」を使用と記載されていますので、その頃にカワイモデルが13mmを手掛けたのは間違いないようです。

>>ご教示ありがとうございます。さっそくTMS誌を確認しました。「現在はありませんが」と書いてあり、それ以前のカワイの広告に当たったのですけれど、出てきませんね【ワークスK】

投稿: ミッキ~ | 2013/05/16 22:14

1)早速の訂正有り難うございます。
訂正されてモノに目を通してみましたが再度下記に変更していただけたら幸いです。
「1月にプロト・サーティーンクラブ,PTCは1/80・13mmをJMと命名」
以上のようにPTCではゲージと付いた用語での命名はしておりません。
1/87・16.5mmはHOと規定されておりHOゲージとはNMRAやNEMで規定されていないのに倣っているからです。

2)スパイクモデルが使い始めたのはJMゲージでは無くJMです。
手持ちのスパイク製品を見ると長らく品切れだったφ10.5車輪を再生産した時の部品のラベルから記載されており、時期的には今から1年から1年半程前としか判りません。

3)13mm車軸について
白鳥氏の記事が出た直後にPTCのH氏が友人と共同で長軸短軸で1000本をカワイモデルに作ってもらっています。そして友人はこの車軸をいさみやに流したそうです。
ミッキーさんのコメントの中のカワイの13mm車軸といさみや広告の13mm車軸のルーツは同じと思われます。

>>詳細なご教示をありがとうございます。仰せの通りに訂正しました。知られていない歴史も種々あったんですね。【ワークスK】

投稿: N品川線 | 2013/05/18 02:39

ワークスKさんこんばんわ。
JMの歴史の件で色々ご訂正をお願いいたしまして申しわけ有りませんが、あと二箇所のご訂正をお願いしたいのです。

13mmゲージJMを始める前に(3)、の[8] ファンの皆さん(豊富な改軌実例)、の中の

①、“東西合同運転会” を  浜名湖畔での“こだま合運” に。
東西合同運転会は「こだま合運」の名称で開催されています。

「“JM”の解説書・説明書」の箇所では、
②、井門義博氏のブログに  を  井門義博氏がブログに  に。
井門氏が自主的にアップされています。

度々で申しわけ有りませんがよろしくお願いします。

>>訂正しておきました。「こだま合運」は知らない方は知らないので、添え書きをしています【ワークスK】

投稿: N品川線 | 2013/05/24 03:04

ワークスKさま
お手数ながら度々の修正をしていただき有り難うございます。感謝申し上げます。

投稿: N品川線 | 2013/05/25 01:00

 初めまして、イモンのページで見た:JMの名称について:に対しての勝手な感想です。
 以前16番の運転会にて友人が持ち込んだ都営10000系を見たとき、縮尺と線路幅がほぼスケール通りのかっこよさに惚れ惚れしました。
 さて名称についてですが私は実物が1372軌間の1/80で16.5ミリの線路を使う模型を個人的にJM1372(数字部分は小さく表示。HO1067と同じ考えです)と心の中で思っています。
 駄文失礼いたしました。

>>4-ft 6-in ですね。1,372÷80=17.15ミリ 呼称は,インペリアル・システムとメートル法の狭間で藻掻き苦しむという図式なんでしょう【ワークスK】

投稿: サクヨウ | 2025/01/16 08:44

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