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2013/04/17

13mmゲージJMを始める前に(4)

Basic study for the beginners by a beginner of 13mm gauge (1:80, JM gauge) modeling, part 4: fundamentals of the wheelset JMゲージとは、13mmゲージとは

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 13mmゲージで、16.5mmゲージの車輪、すなわち厚車輪がそのまま使えるのなら、こんな便利なことは無い。

 確かに薄さの点で実感を損ねるけれど、それは蒸機などの一部の車両に限ったこと。電車や客貨車では側面から眺めることが多いから、厚さはそれほど目に入らないし、第一、元のものをそのまま使えて、費用の面で助かる。

 じゃあ、その厚車輪をどういう具合に改軌したらよいのか。
 これが意外と難しい。【画像はクリックで拡大】

 

[10] チェックゲージをチェック

 ネットを検索すれば、大凡は、「バックゲージを11.2mmに」ということなんだと読み取れる。他に「11.2~11.3mm」や、「11.2±0.1mm」という記述も見つかる。
 ただ、不思議なことに、いずれも根拠がはっきりしない。
 トライ・アンド・エラーということなんだろうか。

 しかし、よく考えれば、 

(1) 規格値だけで単純に求まるはずだ

 まず、2003年に公表された13mmゲージ規格委員会の仕様が存在する。
 そして、厚車輪の規格であるNMRAのS-4.2が厳然とある。
 よって、単純な算数で求められる。

 なにせ、
【チェックゲージ】=【バックゲージ】+【フランジ厚】
 なのだから。

 薄車輪のチェックゲージ12.0mm[+0.0 -0.2]が、基準。
 厚車輪のチェックゲージも、この値としなければならない。

 そこで、その値からNMRA S-4.2のフランジ厚0.76mm[±0.05]を差し引く。

 すると、厚車輪のバックゲージは、11.09~11.19mmと、簡単に計算できる。
 この間に収めれば、OKのはずだ。これは次のポンチ画の通り。

Nmra_wheelset_bg

 しかし、これから外れる11.2~11.3mmが駄目だ、とも言えない。
 厚車輪のフランジ厚が下限値寄りならば、その値を採りえる。

 さらに、疑問が湧いてくる。
 NMRAに準拠していない車輪はどうするんだ。そんな規格の存在は知らず、見よう見真似で造っているメーカーだってたくさんある。

 そんなの簡単。
 それらも全て、チェックゲージを合わせれば良い。

 

(2) チェックゲージって?

 ところが、どっこい、
 チェックゲージが判らない。
 上のポンチ画でいったら、「チェックゲージ基準線」の位置が曖昧だ。

 もちろん、バックゲージはハッキリしている。

 委員会仕様と、NMRA推奨仕様を見てみよう。

 まず、委員会仕様(とれいん誌2003年10月号p59)

Committeetread1

 驚くことに、チェックゲージが示されていない。想像すれば、C:フランジの厚さとある交点がチェックゲージのつもりなんだろうが、これを直接測って確認することが出来ない。

 次は、NMRAの推奨仕様RP-25。配置は弄っている。

Nmra_tread1

 こちらは、フランジ根元からPだけ下がった位置がゲージング・ポイントGaging Pointだと明記されている。
 注記3には、それがR1とR2の変曲点だと書いてある。委員会仕様とは異なり、T:フランジ厚さには、Pの寸法が必要ということ。
 ところが、NMRAで売っている定規にそのチェックも入っているものの、Pを考慮したものではなさそうだ。こちらもマユツバ。RP-2 Standards Gageの"4.-C. Check Gage Too Wide"

Rp25

 NMRA推奨仕様RP-25は、この通りに描こうとすれば判るが、輪郭を厳密に定義しているものではない。概略を示していると考えるべきだろう。【⇒「車輪フランジ角度の決まり方」で【追記3】を参照願いたい】

 しかし、両者とも、車輪を寸法内に作って、バックゲージをセットすれば、チェックゲージは自ずから決まって、事足りるわけだ。

 ところが、13mmゲージは違う。別の面がある。
 車輪を作った者の想定外の使い方をしなければならない。踏面コンタに種類があるのだから、それらに共通する指標としてチェックゲージを使う必要性が出てくる。
 これはまさしく他に例を見ない特殊性だ。

 

 そこで、またまた疑問が出てくる。

(3) 実物はどうなっているか

 お手本として実物を参考にしたらどうだ。
 1分の1は、ちゃんとしているはず。

 記憶を巡らして探すと、軌道建設規程にあった。
 この第26条ノ2に曰く、

輪縁ノ厚ハ輪鉄中央ノ踏面ヨリ十粍下位ニ於テ測リ常ニ左ノ寸法ヲ保タシムヘシ
一 軌間一米〇六七及一米四三五ノモノニ在リテハ十六粍以上‥‥

Tihoutetudou 要は、タイヤ幅の中心線の、踏面の10mm下でフランジ厚を測れ、ということ。チェックゲージなんていう言葉は出てこない。要は、「バックゲージ」+「フランジ厚」。
 国鉄も10mm下。ところが、国鉄民営化以前に存在した地方鉄道建設規程(右図)では13mm下だった。もちろん、方針は同じ。(日本国有鉄道編纂「鉄道辞典」p1009-1010

 アメリカも原理は一緒。次はLocomotive & Car Cyclopedia 1984年版p482に出ているAARの規格。

Clc1984p482b

 ベースラインBase Lineが基準となる。これの下5/8インチ=15.9mmにゲージング・ポイントGaging Pointを設定している。幾何学的や物理学的な意味は全く無くて、完全に人為的な位置。NMRA推奨仕様が似ていなくもないが、変曲点でないことは明白。

Shototu  そう、ここで疑問が湧いてくる。
 これでは、フログに衝突するぞ。

 その通り。当たってしまう。右図のイメージ。

 でも、割り込みはしない。
 それと、車輪がフログ側へ常に寄っていくわけではないという認識。車輪が真っ直ぐに転がっていけば当たらない‥‥。
 たぶん、どの鉄道でも一緒。

 模型も同じで、当たる。というか、当たる寸法になってもよい。

 

(4) 誰も知らない鉄道システムの根幹

 それにゲージング・ポイントって、わりと融通無碍。

 なぜ、そうなるかの根本は、フランジの斜面にある。
 これ、当方は大好きな話題なのだけれど、小難しいことが嫌いな方は飛ばして読んでいただいて一向に構わない。

 以下は別稿車輪フランジ角度の決まり方に改めました。

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コメント

「gauging pointは変曲点ではない」のですか!
でもその違いは概算で0.8mm。これは擦り減りを見込んでいるのではないでしょうか。

>>いずれにしろ日本の場合は直線斜面上ですね。車輪径が摩耗すると、日本ではゲージング・ポイントも鉛直方向に移るのに対して、アメリカはたぶんそのまま。また軌間を測る位置は、日米共これとは無関係-という具合に我々の想像力が通用しません。なお、NMRAの規格と推奨仕様は、保線屋の知識だけで作っているような気がしています【ワークスK】

投稿: dda40x | 2013/04/18 01:16

RP25の図中、Tangencyの訳語は変曲点ではなく接線です。微分不可能な点です。
色々考えてみましたが、ゲージング・ポイントはNominalな点のように思えて来ました。
決めておかないと面倒なので、不合理でない範囲でえいやっと決めたのではないでしょうか。
車輪の直径も同じくNominalな数値です。

>>「変曲点」という語は、図からお分かりのように、反向する2単曲線が接線を同じくしているという意味で使っています。またゲージング・ポイントの決め方は、この記事の主題でして、ご理解いただけたようで何よりです。車輪径の定義については別記事をご覧ください【ワークスK】

投稿: dda40x | 2013/04/18 21:03

仮にバックゲージは規格の範囲より広くても、チェックゲージさえ規格の範囲内の値(→フランジが薄くなる)であれば問題なく運行できる車輪になるという理解でよいですか?

>>原理的には仰る通りです。ただし、記事には、この定義が問題だと書いたのです。現在、研究中で、続編は今しばらくお待ちください。【ワークスK】

投稿: DS | 2013/05/03 19:10

ワークスKさま
いつも楽しく読ませて戴いています。
貴、博識ぶりには畏敬の念をすら感じて居ります。
昭和30年代から13mmを始めましたが、当時は3.5mm詰めるだけで何も考えていませんでした。
今や規格も車輪も色々と出て居り、まさかこの様な時代になるとは複雑な心境です。
せめて、スパイクモデルと珊瑚模型が統一規格になればと思うのは私だけでしょうか?
ダラダラと乱筆乱文を申し訳ございません。

>>コメントありがとうございます。いつも精力的なモデリングを羨ましく拝見させていただいております。私は、頭の中の妄想ばかりでお恥ずかしい限りです。よろしくご指導ご鞭撻をお願いいたします。【ワークスK】

投稿: チャーチャ | 2013/05/28 09:33

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