カブリツキ鉄橋巡り-JR万世橋架道橋
Steel bridge fanning by semi-cab-ride: The Manseibashi overpass of JR Cyuo-Line, between Kanda and Ochanomizu station, A pair of curved through plate-girder brighes
先日の上京で、懸案だった鉄橋を見てきた。
4年前に宮崎繁幹氏から御教示いただき、SDTM氏が報告されたもので、JR東日本の中央線、神田・御茶ノ水間に架かっている万世橋(まんせいばし)架道橋である。
この橋、世にも珍しく、他では見られない形をしているのだけれど、このキャブライド写真で気が付かれる方が何人おられるだろうか。たぶんリベット付は日本で唯一、下手をすると世界で一つだけかもしれない。【画像はクリックで拡大】
その場所は、次のGoogle Map航空写真でちょうど真ん中、緑色をして中央通りを跨いでいる。画面下右寄が神田駅で、左上が御茶ノ水駅、右上の十文字に写っているのが秋葉原駅。
冒頭は下り線で、次に上り線をお見せする。
カラーリングがおかしいのは、前面ガラスに濃い色が付いているため。乗務員室と客室との間のガラスも同じだから二重にフィルターが掛かっていることになる。JR東日本の新しい電車はどれも同じで、カブリツキ・ファンには面白くない。
もうお判りいただけただろうか。スルーガーダーの両側の橋桁が曲がっている。
製造は昭和3年、1928年というのだから85年前という年代物。
地上から眺めても遠目では全く分からない。
傍に寄っても無理。ちょうど中央に橋脚がある。
真下から見上げて、やっと分かる。
上が下り線で、次が上り線。目を凝らして辛うじて判断できる程度。
次の左は、レンガの橋脚に掲示してあった注意書き。この路線の最弱点部と言えるだろうか。知っていないと理解できない文章で、様々なことを考慮した苦肉の言い回しなのだろう。
右は塗装標示。SDTM氏の訪問直後に塗り替えている。この達筆は凄い。その上の製造銘板は塗料で埋まっている。
跨道橋を北側から眺めると、レンガの高架下は改装がなったばかり。(月刊とれいん誌のモデラーな日々)
それをカメラに収めようという人が引っ切り無し。曲がった架道橋は小生一人。
その先の総武線は神田川橋梁。レンガの高架に続くガーダーは昌平橋架道橋(土木学会歴史的鋼橋集覧)
ついでに、上り電車から眺めた優美なアーチブリッジは、松住町架道橋(土木学会歴史的鋼橋集覧)。そういえば、関東合運の鉄道サークル沼南のレイアウトで、この橋とレンガの高架を見た。
そして、万世橋架道橋の神田寄、靖国通りに架かる直線桁。たぶん製造は万世橋と同じ時期。
曲がったトラス橋を話題として、宮崎繁幹氏からお教えいただく切っ掛けとなった記事はここ。そして、SDTM氏の御報告。万世橋跨道橋に関する土木学会の歴史的鋼橋集覧。
曲線半径は、えいやっと計算すると、上り線が350mで、下り線が300mあたり。
冒頭の写真を眺めていたら、上下線の間の建造物がガラス張りとなっていて、人影が見えるような気がしてきた。この施設の案内サイトを覗くと、「旧万世橋駅ホーム部分をデッキとして整備」だという。ことによると、ここから曲がった橋桁が撮影できるかも。
撮影日は2013年10月12日、カシオEXILIM 12.5xというコンパクトカメラだった。
【追記1】Trainorders.comでこの橋を紹介したら、オレゴン州ポートランドにも存在するとのこと。なんとデルタ線を構成して2つもある。ストリート・ビューで眺め回すと、リベット構造に中間支柱と、万世橋と一緒。ただし、床に横梁というか根太が、ビッシリ入っている。周辺の線路配置からしてクリアランスの条件だろうけれど、こりゃ重そう。2013-11-19
【追記2】鉄道ファン誌2010年11月号を友人から借りた。このp148-153に小野田滋氏の「帝都復興事業と万世橋付近-万世橋架道橋-」という記事があって、詳しい経緯と構造、さらに設計者黒田武定の経歴が紹介されている。
本屋で立ち読みしたはずだったものの、この桁がゲルバーGerber式(別名カンチレバーcantilever式)であることを見落としていた。次は土木学会のサイトにアップされている図で、青丸が「架け違い」の箇所である。赤丸は橋脚で、記事を参考に印してみた。
外観ではどんな様子かといえば、当方が撮影してきた写真では、次の程度にしか写っていない。
次に行かれる方は是非、望遠レンズで狙ってほしい。ゲルバー桁は、ここに解説されている。
ただ、一体の不静定梁だとばかり思っていたので、少しガッカリ(笑) ポートランドのものは、ストリートビューでツブサに観察したけれど継目が見えない。
曲線半径は、上り線が398mで、下り線が317.5mとのこと。
なお、同じ筆者の著作である講談社刊『東京鉄道遺産-「鉄道技術の歴史」をめぐる-』では、「曲線の美学」として言及されている。この本は掲示板で紹介があった。中身はここ(リンク切れ)が詳しい。本の大きさは新書版で、鉄道ファン誌の記事のダイジェストという趣き。2014-01-09
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コメント
自動車が衝突したら電話して云々、の表示は横浜市神奈川区内の東海道新幹線のガードの橋脚でも見掛けましたが、この種の表示って必ず元払いで電話しないとならないんですね。細かい事ですが、安全云々を考えなきゃならないような事柄だったら0120-とかにしておいても良かろうにと思うのは、私がケチだからかなぁ。
>>仰る通り、問題はホンキの度合。事故事例が無いのかもしれません。国鉄時代や戦前に防護設備と表示がどうなっていたか、興味がありますね。そう、某私鉄には衝撃検知器!なんてものまで付いていました。【ワークスK】
投稿: 松本哲堂@風雅松本亭 | 2013/11/03 12:34
こちらはご無沙汰しております。
曲線桁といっても実際は桁が少しずつカクカクした直線の組合せなんでしょね。
実物はRが大きいのでこれで問題ないのでしょうが、Rが極端に小さい模型ではRの桁にしてまうのが見た目は良さそうな感じがしますが。。。。
道路では曲線桁の場合は3径間連続の一体物にするのが普通ですね。
>>コメントありがとうございます。1928年製というのですから、現代とは全く異なる設計なのでしょう。カバープレートが不規則に配置されているところから類推して、荷重を掛けてみて撓みと変形を測定し、手直しするという手法だろうと勘ぐっています【ワークスK】
投稿: ひかり.こだま | 2013/11/03 23:06
今日は:
神奈川に越して以来、都心もトンとご無沙汰になりましたが、中央線とは・・・
ところで、万世橋ですが「まんせいばし」と読むのではないでしょうか?ずっとそう呼んでいた記憶があります。
>>御教示多謝。さっそく訂正しました【ワークスK】
投稿: eltonjohn | 2013/11/04 10:59
☆ 管理人様、弊BLOG記事を参照して下さり
有難うございます。
万世橋は毎日通勤の行き帰りに通過して
おります。朝は、あの駅だった場所の
ガラス張りを見つつ通過しています。
営業前で、不思議な光景として映ります。
さて、よくよく弊BLOG記事を見直すと
新木場駅の西にあるトラス橋もしっかり
撮影していることが判明しました。
URLにアップしました。2007年ですから
8年前ですね。記事には曲がっていること
の記載はしていません。(笑)
>>おおっ! それは羨ましい! 是非、途中下車されて、ガラス張りの中から迫力のあるお写真を!【ワークスK】
投稿: SDTM | 2013/11/04 22:10