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2014/02/14

柳田雅夫氏の路面電車はOゲージ

 先に掲示板で紹介した神戸市立青少年科学館での「鉄道模型とあそぼう」はホント、盛況だった。18回を数えて知名度が上がっていることもあろうが、展示運転するメンバーの熱意というか、サービス精神旺盛なことが絶対に寄与しているはず。NゲージやHOゲージと並んで、JORC関西によるOゲージは、図体の大きいことに加えて、面々が自信作を持ち寄っているものだから、黒山の人だかり。

 中でも飛び切りに目を惹いたのは、車内灯をコウコウと灯して走り回る路面電車だ。【画像はクリックで拡大】

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 デモンストレーションの解説を担当された楠居利彦氏によれば、昨年登場したばかりの福井鉄道F1000型(ウィキペディア)で「フクラム」という愛称が付けられているとのこと。モデルの着手が早かったためか、先頭部の印象が若干異なるものの、このエネルギーは凄い。

 作者の棚田雅夫氏に伺えば、まだまだ制作途中とのこと。
 一番力が入ったのは人形で、全座席に配した50体は、白いプラスチック・モールドを一つ一つ、腕などを改造しながら、すべて塗装。
 側板はペーパー、屋根と床板はアクリル板。
 車輪は15mm径で、中間台車は車体に固定。市販のアルミ・チャンネルを利用し、90cmが800円。

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 先頭台車は、実物どおりに固定したら脱線したので、ボギーするように変更した。100円モーターの釣り掛け式は、標準仕様とはなっているものの、速度が出過ぎるのが玉にキズ。

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 次は会場での作者。遠景でマイクを握るのは楠居氏。その手前に座っている方が、以前レイアウトを紹介させていただいた鎮目泰昌氏。

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 他も注目で、玉電200型には唸る。

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 パンタグラフは固定式。

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車輪径が大き過ぎたって、完成させればオーケー。窓ガラスが無くたって走れば判らない。

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 中間1軸台車は脱線に悩んで、大きなウエイトを掛け、ボギー回転のストッパーを設けたという。
 ちなみに、この軸を保持するためには、弾性体(バネ)、およびリンクを用いた事例があって、前者はエレクトロトレン社のタルゴ客車、後者は宇治川おとぎ電車をそれぞれ当ブログで紹介している。

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 阪神国道線を、通学で利用とは羨ましい。金魚鉢と呼ばれた73-75号車は、特に愛着を持たれている様子。

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 20-24は、阪国1型で、モデリングを再開した最初の作品。Yゲルも固定。

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 “リアリティ”なんてクソくらえ! という姿勢が誠に心地良いと感じ入った一刻だった。

 いろいろとお伺いして、次はご本人からいただいたメール。

 学校を卒業後は海運会社で30年、外国航路の船の機関長として海上勤務をいたしました。在職中は酒とマージャン、外国では?に明け暮れた毎日でした。
よくもまあ女房がついてきてくれたと、驚いています。
 高校時代は鉄道研究部で、ここでの先輩がJORCのメンバーに3名もおられます。退職後はゴルフ、魚釣り、オートバイとアウトドアでの遊びが主体でしたが、腰痛を患ってからはインドアに変わりつつあります。2年前に再び模型を始めだし、クラブに入会させていただきました。従いまして54年のブランクがあります。

 船の模型は走らせることが出来ず、鉄道模型がやはり面白いですね。私はまだズブの素人です。ご覧のとおり車体の“ぶさいくさ”は天下一品。誰にも負けません。まったくお恥ずかしい。
 と言いますのも、福井LRTは塗料代節約のため?にラッカーを使わずホームセンターで普通のペンキを買ってきて筆塗りです。100円モーターを使い、台車もホームセンターでアルミのチャンネルを買ってきて車軸が貫通する穴をあけたのみです。従って3車体1編成に車輪やLED込みで2万円前後です。

 自宅で孫が運転するとオーバースピードもはなはだしく、脱線のみならず転覆、そして破壊はざらです。高級車両ではたまったものではありません。家が狭いので自宅レイアウトは600Rのエンドレスです。この急カーブレイアウトを通過するには路面電車しかないのです。
 度重なる修理を経たおかげで事故に強い車両となりました。これが私のモデルの言い訳です、技術はそっちのけで‥‥。(柳田雅夫)

【追記1】アメリカ型鉄道模型大辞典に、4ホイール・カー(2軸車)の項を書き込んでいて思い付いた。フクラムの実車が中間車体の台車を自由回転させている理由は、座屈防止ではないか。前後車体との屈曲角度を連動させられれば確かにシステムとして成り立つ。渡り線などのSカーブでも大丈夫。メリットは軽量化と検修上の便利さか。
 rehsiさんのコメントを基に、模型化する方策を考えてみた。要は、パンタグラフのイコライザーと同じ原理で、4節回転連鎖の擬似等角逆回転連動。あっ、玉電200型も中間車体を1軸台車と見立てれば同じでイケる!

福井鉄道F1000 フクラム

 さらに、3車体のピッチングをコントロールするには、次のリンクを天井に付けるのはいかが。実車はガススプリングかな。

福井鉄道F1000 Fukuram

 なお、紹介が出ているという鉄道ファン誌2013年6月号を覗いてみたけれど、台車機構に関する記述は「ボルスタレス4輪ボギー×3台」とだけ。長さ約27mで自重不明。
 同じ号に出ている札幌市交のA1200という3車体2台車のアルナ車両製も「台車:SS12形 2軸ボルスタレス台車」。長さ約17mで重さ23.3トン。ネットでは「リトルダンサー」なんていうブランドも見つかった。でもちっとも分からない。2014-07-31

【追記2】柳田氏の新作、東急世田谷線の300型を拝見した。同じ科学館の「鉄道模型と遊ぼう」で、準備中に試走されていた様子を撮影。当日は駈けつけられないので、ここで披露。2015-01-31

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【追記3】実車のフクラムが脱線してしたとのことで、その原因を考えてみた。>>2016年1月22日記事

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コメント

いつも楽しく拝見しております。
フクラムについて、
「先頭台車は、実物どおりに固定したら脱線したので」
とありますが、実物は固定ではなく、中間台車も含めて
ヨー方向に自由に動けたと思います。
元ネタとなったヨーロッパの機種では
そのうえで、リンクか油圧装置で2カ所ある連接部の
屈折角度を同じにすることでヨー安定を保たせて
いるようです。
模型の場合、スラックも大きめなので直線上で
ピタッと車体がまっすぐになりづらいので、
中央台車を車体固定、前後台車をボギーとするのが
無難かと思います。

>>御教示ありがとうございます。なかなか複雑な構造になっているのですね。機会があったら勉強してみたいと存じます【ワークスK】

投稿: rehsi | 2014/02/18 14:42

5月の連休中に、福井鉄道に乗りました。駅名変更、鉄道線駅の低ホーム化、田原町のえちぜん鉄道との乗り入れ工事など、10年以上のブランクがあると、変化した感じがありました。
F1000形は、仕様では広島電鉄のLRVより定員が多いということで、ちょうど混雑時に巡り合わせましたが、有効な感じでした。逆に乗客3人、運転手と指導運転手、という何とも贅沢なタイミングもありましたが。
新潟トランシス(新潟鉄工)のLRVは、国内最初の熊本市交から、台車はわずかにボギーします。その営業開始前の試乗会中に後部運転台に座らせて頂きました。ちょうど信号待ちの停車中に知り合いが真正面から写真を撮ってくれました。座りたかったのはそれが目的ではなく、カーブから直線に入った時の振れ戻しの動きが一番大きい場所で体感したかったからです。もちろんこの福井鉄道のLRVもその動きがあります。鉄道ファンでこれを指摘する人は少ないようです。
アルナのLRVは、伊予鉄道の単車は例外ですが、基本は台車と車体は固定なので、振れ戻しの動きはありません。広島電鉄のLRVも固定なので同様です。

>>おおっ! ご乗車されましたか! 福井も変わりつつあるのですね。お聞きすればするほど新潟トランシス製LRVの構造が気になります。しかし、ネット上には見つけられません。【ワークスK】

投稿: とやま | 2014/07/05 08:28

福井鉄道の車両は、ワークスKさん撮影のちょうど40年前のカラー写真と42年前の写真が貴重です。
現在の200形の復活塗装は、40年の時を忘れさせます。
市役所前の交差点で撮ると、同じ場所に立つのだなあと思いました。ホームへの地下階段も変わりません。他の車両は、デキ以外は一変です。イベント用に土佐電から元シュツットガルト市電まで導入しました。
新潟トランシスのLRVの構造や仕様は、意外にオープンでは無いように思いました。当初の熊本市交は輸入品ばかりの機器でしたが、現在の台車はライセンス生産、制御装置、主電動機、空調装置などは日本製に変わっています。見た目で運転台機器やパンタグラフは輸入品の香りがしますが。
F1000形はローレル賞受賞となり、福井鉄道にとっては良い事と思います。

>>福井周辺は昔も楽しかったのですが、今でも日々刻々変化が起こっていて面白いですね。1972年といい、1974年も、撮影が目的でわざわざでかけたわけでは無かったものの、良い思い出、記録となっています【ワークスK】

投稿: とやま | 2014/07/06 09:06

どこにコメントしようか迷いましたが、ED14の謎ではなくこちらで続けさせていただきます。

まず、3車体2台車や5車体3台車の低床LRTの台車は「車体に対して首を振らない」という前提を頭に入れて下さい。奇数号車の車体は常に台車と同じ、そして線路と同じ向きになります。海外では7車体4台車なんてのも走っていますが構造は同じです。

普通のボギー車で、前後の台車をリンクで結んで回転角を対称にしたらどうなるでしょう?カーブの入り口やS字カーブなどで台車と線路の向きが食い違って脱線しますよね。
LRTでも同じです。前後の車体をリンクで結ぶのは台車を結ぶのと同じ意味なので脱線してしまいます。

このビデオの冒頭10秒間をよーく見てください。3車体2台車のLRTですが、直線→カーブ→直線の部分で2箇所の連接部分の角度は同じになっていません。
http://www.youtube.com/watch?v=SF8R_DkVLCM
じゃあ連接部の角度はどうやって決まるか?頭の体操です。「電車はどうして曲がれるのだろうか?」を書かれた栗生さんならピンと来るはずです。

>>なるほど、長崎電軌3000形ですね。これ、中間車体に台車が無くて、要はこの車体自体が長い連結器と解釈できますよね。すなわち、貴兄のご発言で「2つの台車枠を連結するピンが縦に長」いのではなくて、レール方向に長い形になっているのです。ただこれも、ネジリを許容するためにどういう結合になっているのか、ぜひ現物を拝みたいものです【ワークスK】

投稿: YUNO | 2014/08/11 01:42

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