アサーン40'ボックスカーの初期製品(1)
Athearn's 40' slide-door boxcars, early-production part 1: Observation of actual products
アサーンの40フィート・ボックスカーといえばロングセラーで、アメリカ型の定番だったから、皆さんの中にもお持ちの方がおられるはず。
この製品、なんと50年以上も前となる1957年の発売開始。ただ、最初の頃の構造が後年とは異なっていて、かつてはコレクターが血眼になって探していた。
まあ、ここへきて必要とする連中には行き渡ったということなのだろう。手頃な価格というか、不完全なブツは見向きもされなくなってきた。興味があったので、オークションに入札しておいたら、落ちてしまった。6両が送料込みで50ドルほど。【画像はクリックで拡大】
ホコリまみれで汚い車体だから、例によって住宅用洗剤で洗った。
ところが、ところが、ここで、車体表面の印刷インクが落ちてゆく‥‥。
慌てて止めたが、GAEX車は完全に溶けた。ニューヘイブン車とラカワナ車は片面だけ少し落ちた。C&NW車とUP車は無事。PRR車は、濡らす前だった。
完全に落ちたGAEX車は、まあアンデコ。
分解してみると、全体の構成としては後年と一緒で、床が軟鋼板と魚骨の合わせ。ただし台車は、ダイキャスト製のスプリング入り。中心ピンが小ネジではなくて、木ネジ。車軸が磁性体の軟鋼なのは、この時代、ケーディーのマグネマティックが未だ開発されていなかったから。
カプラーポケットのフタがプラスチックのネジ止めで、ここが大きく異なる。ウエイト板に孔を開けて、ネジの先を逃げている。次は左が初期製品。
そして、見映え上で気になるのが、引戸の案内レール。
ブルーの現行品は、上レールが填め込みで、溝は下向き。下レールは車体と一体のモールドで、溝は下向き。よって、戸車支え?が必要。
ボックスカーレッドの初期製品は、上下レールとも接着取付。上レールが下向きで、下レールが上向きと、実車のイメージに近い。ただし、両レールは無塗装のブラック。冒頭から2枚目の写真では一部を塗っている。
さて、ここまでで気が付かれた方もおられることだろう。一部の横梁の位置がおかしい。車体枕梁の中央寄の2本が、側板を延長した目隠しと食い違っている。そのため次の写真で判るように、横梁端部を前所有者は塗っている。
現行品はどうやって解決しているか?
魚骨の横梁間隔はそのまま。
すなわち、外板の目隠しの位置が変更されている。
勘繰るに、側出入り口の下縁、上がりカマチの部分が強度的に弱かったのではなかろうか。それでなくても細いのに、下レールを填め込むために溝を掘ったものだから、バラで供給したキットでは破損が多発した。じゃあ下レールを上がりカマチと一体モールドにしよう。溝を下向きとすれば、金型的に可能。
車体を弄るのだから、ついでに横梁目隠しの位置を変更できる‥‥てな調子だったのでは。
ところで前所有者は、車番の末尾に鉛筆で「A」と書き込んでいる。これ、なんだろう。
【追記1】全体像をお見せするのを忘れていた。N&W車の方は後年製品で、カプラーのみケーディー#27(下シャンク)に換えている。これ、ケーディー社の推奨品番なのだけれど‥‥。
PRR車のロゴはシャドー・キーストーンといい、NH車と共に印刷が2色と手が込んでいる。2015-02-20
【追記2】後年製品ドアの戸車を"claws"と呼ぶ例を見つけた。weblio辞典には「猫・タカなどの鋭く曲がった"かぎつめ"」とある。そういえばプロレスに「アイアンクロー」なんていう技があった。
MR誌の1993年4月号p89や1991年12月号p142など、結構、みつかる。どれも切り落としていて、写実派には目のカタキにされていたようだ。2015-07-05
【追記3】プラスチック床板の長さが異なることに気が付いた。初期製品は約0.5mmだけ長い。車体内寸も対応しているから、後年製品へは削らないと入らない。2017-03-30
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コメント
たしかに住居用洗剤は塗装が落ちますね。
窓ガラス用洗剤に部品などを浸して1週間ほど放置すると塗膜が浮き上がってきます。残った塗料も柔らかくなっているので、ブラシやヘラで落とします。
塗料が溶解するわけではないので、浮いた塗料を漉して再利用もできます。
安価で入手しやすく、家庭用品なので溶剤と比較して環境や人体にもそれほど悪影響がないと思われるので、塗装を落とすのに愛用しています。
>>同じようにしても、いつも落ちるということではないので、インクの問題という認識です。塗料が落ちるということは、その洗剤にある種のアルコール類が含まれているということでしょうか【ワークスK】
投稿: YUNO | 2015/02/17 03:52