テンビン棒式イコライザーをコネクリ回す
A nonsense talk about axle box mobilization of four-wheel vehicles and the Balance-pole Equalizer devised by Kobayashi, Yoshikazu
TMS誌2015年3月号p88-91に発表された小林義和氏のテンビン棒式イコライザーが、ちまたで評判になっている。これを90度、捻ったらどうか、と思い付いた。
写真は、40年以上前に売り出されたエーダイの2軸車の下まわり。赤線で示した位置に切り込みを入れたものを作ったことがある。要は、4つの軸箱を片持ち梁で弾性支持する形。軸受体と側梁のディテールが破綻無く繋がることを期待した。
結果は、上下方向と左右方向の弾性のバランスが悪くてあえなく失敗。
これを考え直して、片側の2つの軸受体と車体側梁を一体とすれば、2点支持ボギー台車の側枠と同じとなる。その側枠と枕梁(ボルスター)=車体とをバネで拘束したらどうだろうか。側梁と車体の取り合いとか、面倒な問題もあるけれど、2軸貨車の究極的な解決策になるような気がしてきた。
自分勝手な言葉使いで、チンプンカンプンかな。これで理解しろ、という方が無理。でも、説明が面倒。懇切丁寧に解説する気が起きない。判る方だけ判っていただければ、それでOK。
エーダイのキットはここ。
TMS誌での小林氏の方式は、 軸箱可動の方式を「イコライザー」としているが、当方の見立ては「基本的には軸バネ式で、各軸毎に左右をイコライザーで拘束」というもの。
ゆうえん・こうじ氏のブログ「汽車をつくる」にコメントさせていただいた様に、カトーの方式の自由度を減じたものと解釈できる。
また、90度捻りの形から連想するのは、ロンビック・イコライザー。これは小林氏も言及されている。当方が提案している弾性要素入りのロンビックと同じように考える方がおられるだろうが、全くの別物。
その証拠は、姿勢制御の能力。前後と左右の姿勢。前後は連結器高さで、左右は車体の傾き。
ロンビックでは両者共ほぼ完全に一定であるのに、テンビン棒式では片方が変動してしまう。当方提案の90度捻り天秤棒では連結器高さが変わる(90度を捻らない小林氏のオリジナルでは一定で、左右の傾きが変わる)。
一方、大きなメリットとして、軸受の上下スライドのためのガイドが不要。アマチュアが作り易いといえる。また、上下動だって、荷重点を少し浮かせれば可能となり、カトー式のパフォーマンスを実現できる。
改良の余地が大きなものの、面白い方式だ。その改良すべき点を以下に列挙してみた。
(1)左右動規制の問題
小林氏の作例で大きな課題は、左右動。ネジリの柔らかさを求めると、テンビン棒の弾性は左右方向にも柔らかくなる。作例は天賞堂製の床板とのことで、両脇にリブが立っていて、これに規制させている。ただし、精度上と摩擦で危惧がある。
次は、ヤマ氏が試作された板バネ式。
これなら、ネジリと左右で別々にバネの剛性を設定できる。すなわち、左右をコワく出来る。
リブとの摩擦がローリングのダンピングに寄与するという意見もありそうだけれど、それだったら弾性体をプラスチックなどの顕著な内部損失を伴う材質とする方が確実。
また、左右方向の規制では、ゆうえん氏のように軸受を設けてしまう方法もある。
(2)軸受体回転中心高さの問題
さらに小林氏の作例は、軸受体の回転中心が高過ぎるという欠点を内在する。低速走行ならいざ知らず、高速では危ない。車輪踏面が、上下ではなく、左右に振れてしまうわけ。最善の回転中心高さは、もちろんレール面上。この心配は、フカヒレのときにBrass Solder氏が指摘された。エンドウやアダチの3点支持も同じ。
これをゆうえん氏は、車軸の直下まで下げられた。ところが、コン氏が「回転軸の位置を車軸の高さにすると安定」とコメントされている。これは是非、根拠を賜りたいもの。
(3)上下方向の弾性支持の問題
カトーの2軸車は御存じのように、軸受体全体を板バネで支えて上下動を効かせている。これが理想的と言われる方が多い。
小林式も、荷重点で少し浮かせれば、同じパフォーマンスが可能となる。しかも、上下動のガイドが不要だから、アマチュアでも取っつきやすい。
課題は、その効かせ具合。常時は底付きさせておいて、輪重抜け時だけ伸びるか、または、常時は伸びきらせておいて、衝撃時だけクッションさせるか。理想は、カトーの様に常時フワフワか。蒸機の動軸と相通じる考え方といえる。
車体が重い方が良いのは言うに及ばず。バネ定数自体も悩ましいところであるものの、板バネとすることにより、ある程度の自由が利く。
(4)各方式の優劣
16.5mm付近の軌間で2軸貨車の軸受方式を採点してみた。あくまでも当方流の考え方に基づき、装置、方式としての優劣なので念のため。
前提は、エンドウ、アダチの3点支持を合格点ギリギリの60点とし、カトーのバネ式を70点に置いて、当方が各々をどの程度に評価しているかという目安。今後書き換える可能性も大いにある。添え書きは、参考サイト(随時追加予定 乞う御教示)。
75点=テンビン棒式(小林義和氏発案)構造簡単で弾性支持を評価。改良により大きく化けるか。
汽車をつくる
高急モデルノート2
コンちゃんの模型日誌
73点=平心皿式(当方考案)普通のボギー台車と同等を狙っている。
当ブログ
70点=カトー式(独立板バネ式、カトー)弾性支持を実用化した点を評価。上下動のガイドがアマチュア的には難。
当ブログ
Brass solderのごにょごにょ
67点=ロンビック式(出羽文行氏発案)エレメントの数が多過ぎるものの、感度はフカヒレの4倍。
当ブログ
65点=フカヒレ式(伊藤剛氏発案)可動部分が少なく、構造が簡単。斜め2軸の連動機構に難あり。かつ、アームが短い。
当ブログ
汽車をつくる
コンちゃんの模型日誌
Brass solderのごにょごにょ
60点=3点支持式(エンドウ・アダチ)
当ブログ
ただし、ここまで論評してもなお、当方の根本的思想は、以前に書いた様に、「2軸貨車は軸固定で十分実用」。
小林義和氏のTMS誌記事には、天賞堂プラスチック貨車の材質が、エボナイトではなくて、ベークライトだという主張も盛り込まれている。それは当ブログのここにコメントいただいている。
【追記】TMS誌の翌月号、2015年4月号に小林氏の訂正文が掲載された。「てんびん棒バネ」に変更するとのこと。
ところで、「テンビン棒」の概念は一般的に考えて、単純梁。模式的には第1図。中央に荷重が掛かり、前後で支えている。
これを小林氏は、第2図のような支持とされた。乗っかる車体がコケるから。
でも、これ。次の第3図と同等。
片持ち支持梁が2本、相対して置かれている。できるだけ忠実に模式を描けば、第4図かな。
機能を抽出して描けばこうなる。テンビン棒などという、両者を貫く梁のイメージは無い。
「イコライザー」に異を唱えた方々が、訂正された呼び方にどう反応されるか見もの。
記事名のテンビン棒自体にはイコライザー作用が無いけれど、それが保持する軸受体がイコライザーの原理で働くのだから、言って言えないことは無い‥‥と編集部は考えたはず。そんなことが判らなかったとは到底、考えられない。大多数の同誌読者も同じ。
「フカヒレ」は、その呼び名からも判る通り発案者自体が原理を誤解していたし、「ロンビック」にしたって、中学で習う中点連結定理を知らずに8年間も模型人がコゾって有難がっていた。これ、事実。
無論、名がタイを表す方がいいけれど、それが万人に通じることも大事。他と厳然と区別できる個性的を良しとしたい。「テンビン棒イコライザー」、いいんじゃないかな。
イコライザーという言葉に陶酔し、チョイ噛みしたくらいで全容を知り尽くした気分に浸ったら、イカンゼヨ。
ベークライトの件は、編集部が悩んだだろうな。2015-03-23
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コメント
輪軸のローリングの中心位置についてですが、踏面の左右動だけに着目すればレール面と同一が好ましいと思います。
ただし台車より上、車両全体の重心移動を考えると、軸箱の左右動を抑えた方が安定するのではないでしょうか?
なお悪路を走る実物車両を正面から見た時、車体の回転の中心は枕バネや軸バネの中心高さになっていると思われます。
>>せっかくコメントをお寄せいただいたのですけれど、主旨が呑み込めません。もう少し詳しく説明していただけませんか。
(実車ではローリングを上心ロールと下心ロールに分けて考えます。上心ロールは、サスペンションよりも上の車体重心(車両全体の重心ではありません)を中心に回転する揺れで、高速走行時に起こります。下心ロールは、サスペンションの作用点を中心として回転する揺れで、主に低速走行時に起こります。またローリング以外に、平行移動的な左右動が働きます。車輪に作用する力は、横圧と輪重です。これらの用語を区別して使っていただくと、本ブログの読者が理解しやすいと存じます)
それとメールアドレスは、当方から連絡可能なものを入力してくださいね【ワークスK】
投稿: YUNO | 2015/03/30 11:13