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2015/03/15

ロンビック・イコライザーの機構学

How to implement the "Rhombic (rhomboidal) equalizer

 友人より一通のメールが届いた。いつも熱く議論し合う相手。いわゆる論敵。

 ロンビックの効果が、未だに分からん。動作が不明なわけでは無い。 「中点連結定理」などで説明している範囲では、基本は2点支持だと理解している。車体が安定するためには、最低もう1点必要だと思うわけだが、みなさん、どこにその1点が有ると考えて居られるのかが分からない。
 拝見した限りのモデルでは、どちらかに傾き切ったところで安定している。実質は3点支持に見えるのだが‥‥‥。
(一部改変)

 おおっ、いつになく殊勝。

 読者の中で当ブログで初めてこの問題に触れる方は、まず、6年前の「ロンビック・イコライザーの幾何学」をお読みいただきたい。前半の「中点連結定理」はサラっと、後半が核心。

 十分にご理解いただけたところで本題。

 ロンビック・イコライザーは幾何学的にいうと、4つの支点(P1、P2、P3、P4)と、4つの結節点(W1、W2、W3、W4)から成り立つ。これらが正確でなければならない。支点は結節点の完全な中点で、8点が真正の平面になることが出来るということ。(ただし、稲葉清高氏が言われたように1:1以外の分割比でも可能)

 で、あなた。
 そんな工作が可能だろうか?

 十字のケガキ線の真ん中に孔を開けられるかっていうこと。ケガキ線の精度も問われる。それも1/100mm以下の精度で。そもそも、結節点は球継手にしなければならない。

 100人中99人、否、100人が無理。

 だから、出来上がったものは、必ず車輪が浮く。
 対策として、1つの支点の孔径を拡げる。ほら、3点支持になった。友人の認識はそのとおりで、まことに正しい。荷重は2点のみに架かっている。

 だったら最初からそれを見越して作ればいい。

 ここからが機構学の範疇。幾何学の仮想空間を現実空間で実現する方策。
 TMS誌2001年9月号の出羽文行氏の記述は、ここのところが不完全。追随した記事も同じ(失礼があったら陳謝。全部には目を通していないので)。
 前田昌宏氏の作例はちゃんと踏まえている(記述は駄目)。仙台市教育委員会も、そういう学習を進めなければならない。

 前記事に書いたように、荷重を受け持つ2点と、姿勢を保持する2点に分けて考える。そして、どちらかを弾性支持とする。まあ、後者が順当。両方なら理想的。これで、大概の誤差は吸収できる。8点の平面性も然り。
 って、百回書いても誰も解ってくれない(大人は判ってくれない‥‥もんだ。どなたか判り易いイラストを描いてもらえないだろうか)。

 主張は平明。難しいはずは無い。
 理解されない理由は、単に当方の信用度の問題なんだろう。一介の隠居老人だもんな。権威なんてクソくらえという態度が祟っているのかな。

 ところで、姿勢保持用の2点を1点としたら、製作が楽という見方がある。

 これは駄目。
 ロンビックの本質を誤解している。意味が無くなるから、できたものをそう呼んではいけない。「定義」の問題。単なる工作好きの絵空事。20m車の連結器がどうなるか、想像してみよう。
 中で、車両が極端に短い場合や、連結器を持っていない場合には受容できる。それがOneDog氏の作例(左図 ピンの高さが滅茶苦茶だけれど、“誤差の内”ってウソブくのは許容)。

 機構学っていう学問は、いうなれば、仮想空間を目の前に実現する方法。
 数学的に「平面」と言ったところで、これ、どうやって作るのか。平行や垂直にしたって、完全なものなんて、この世の中にありはしない。

 学校で吉村っていう先生に教わった要点は、次の3つ。
(1)スライダーを使うな
(2)機械要素の数を減らせ
(3)厳密な直線や円運動を求めるな

 スライダーは製造と運用が面倒。2面ないし4面の平行度を作り出すことは大変だし、摩擦があってスライド面が外部に曝されている。擦り減ったらどうするんだっていうこと(スライド・ガイドって滅茶苦茶高価)。まあ、蒸機のスライドバーの様に、採用が避けられないものもある。
 それに対してピン結合は、ピンとブシュは旋盤で出来るから精度が高く安価。給油も簡単。摩耗したら取り換えればいい。コロガリ軸受とする手もある。ただ、数が多ければ、ガタの累積でシステムは破綻し、意味が無くなる。

 そして、近似的な直線や円運動はリンク機構でも可能。

 この3つの採点基準からして、「ロンビック」と「フカヒレ」は、“いい線”をいっている。もちろん、オリジナルではなくて、当方の助言を受け入れた場合。機械屋つったって、吉村先生の話をちゃんと聞いていないと理解不能、だけどね。

 歯車って、どういう原理かご存知か?
 そう、丸い円盤の外周にギザギザが付いてるやつ。それが噛み合って動力が伝わる。これ、使い続けていると減る? 減らない?

 現実には減る。みんな知ってる。
 ところが、幾何学的な原理だけなら、減るはずがない。インボリュート曲線って、名前だけは聞いているかな。互いに接触する歯面は転がっているんだ。転動。すなわち、擦れない。摩耗しない。効率を99.99‥‥パーセントまで上げられる。11/66っていう歯車比を使ったことがある。“転位”っていう言葉を知らないと、この重要性が理解できないけどね。
 摩耗する理由は、加工精度の他に弾性変形とか種々ある。ヘルツ接触応力を勉強しなければならない(これ、意外なところで役に立った。機械加工の教科書も大好き。授業は講師の経験不足で退屈)。

 以上は平歯車やハスバ歯車、カサ歯車の話。一方、ウォーム歯車は摩擦(まさつ)する。だから効率が悪い。機械屋はハナから無視。ただし、ネジリ角を大きくしていくと、スパーギアの成分が増えて効率が上がる。歯車比は下がるから、直列にスパーギアを入れる。これがカトーのやり方。合理的。まさしく機械屋的。

 実際のところ、機構学って歯車の勉強。4節回転連鎖は付け足し。で、吉村先生にマトワりついていたら、判ってきた。北陸は自動織機が盛んで、その下地があったわけ。「飛び杼"flying shuttle"」なんて、その最たるもの。
 でも曰く、「リンクやカムで制御する時代は終わり」。
 例えばガバナー。センサーとアクチェーターがあれば、その間を電子屋が自在に変換してくれる。F1のアクティブ・サスペンションには唖然。必要なのは関数だけ。

 パンタグラフもリンク機構(ハイテクの塊のリニアは違うんかな)。
 これ、上から下まで押上力が一定って知ってた? そうそう、電車の一段下降窓のバランサーが同じ原理。偏微分を使うと解ける。

 機構学って、教科書だけでは全容がつかめず、奥が深い。
 イッチョカミして、判った気になったら、イカンゼヨ。

 「ロンビック・イコライザーの幾何学」も乞う御拝読。これを御理解いただいていないと、今回の記事は頓珍漢。

【追記1】すかさず、クダンの友人から「重量が問題なのでは‥‥」とメール。その通り、重ければ、各要素には弾性変形を期待できる。うぅぅむ、このところ筆鋒が鋭くなってきた。クワバラクワバラ‥‥。2015-03-15

 【追記2】と【追記3】は、別記事に切り分けた。

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コメント

てんびん棒では拙ブログにコメントありがとうございました。

姿勢保持用の2点の一点を上から押さえるだけではなく、上下方向に固定してやれば、その一点と荷重保持用の二点でロンビックイコライザーと同じ動きにならないですか?

それから4つの支点は同一平面上にあるけれども、4つの結節点は同一平面上にはないですよね。

>>コメント多謝。お書きになった文章が少なめなので、当方が誤解しているのかもしれませんが、前半は「姿勢保持用の2点を1点としたら、製作が楽」という話ですよね。これに対する答えは、本文中に書いた通りで、「3点支持として成り立つだけで、本来のロンビックの主旨から外れる」という意見です。姿勢保持用の1点を一方の車端に定めた場合、姿勢保持を省略した他方の車端が上下に大きく変動しますから、長大車ではカプラーが成り立たないという意味です。また、姿勢制御能力が半減します。
 それを一方の車側に定めた場合は、スパンが短く影響が少ないかもしれませんが、いずれの場合にも弾性要素を挿入することの方が遥かに実用的です。それは、前田昌宏氏の作例をご覧になれば、よくお判りになると存じます。

 後半に対しては、「中点連結定理に厳密に依存すれば“8点が1つの平面を構成することが可能なことが大前提”だけれど、実際上は違えても弾性要素を挿入することにより成立する」という主張と読んでください。
 4つのリンクはそれぞれ、両端に結節点を、さらに中点に支点を持っています。これらが幾何学的に厳密な位置関係に無ければいけないということを、そういう風に表現したのです。判り難かったようですね。「出来ること」とか「可能なこと」という言い方に注目していただくと、真意が伝わるのですが‥‥。

 今回の「機構学」では、原理的な部分を大幅に省いています。事前に6年前の「幾何学」を御理解いただいている必要があります【ワークスK】

投稿: ゆうえん・こうじ | 2015/03/16 01:46

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