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2015/06/22

スリランカの鉄道博物館と模型と

A few photos of the Sri lanka National Railway Museum through tourist bus windows, and the country's model railroad fans

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 スリランカ、すなわちセイロンの鉄道博物館ったって、例によって家人の撮影。それもツアーバスの車窓から。通りすがりに慌ててシャッターを切ったってんだから、ピンボケだし、傾いているし、ロクなものでは無い。【画像はクリックで拡大】

 まあ、気に掛けてくれて、撮ってきてくれただけでも、良しとしなければバチが当たるか。

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 さすが元イギリス領だけあって、機関車と客車は我が国の明治時代。
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 博物館は、以上。
 仏舎利の観光地、キャンディKandyの近くのようだ。同じ場所を撮影した邦人のサイトWikipedia英語版

 そのキャンディの駅舎? 根拠とした風景はここ
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 次には線路がかすかに写っている。人影が濃い。
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 跨線橋から駅が遠望できて、軌間の様子が判る。こりゃあ広軌。
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 次は踏切。ただ、それだけ。
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 ツアーガイド氏にもらったというPR用のDVDに鉄道風景が2回出て来る。
 まず、滝の前を通り過ぎる列車。
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 もう一つは、石積み?のアーチ橋。あははっ! 曲がってる!
Srilanka2b

 こういう場面を収められたということは、撮影ポイントを熟知する現地趣味人の存在証拠。

スリランカの鉄道と趣味の現状

 情報をネットに捜せば、英語でも日本語でも潤沢にありつく。スリランカ鉄道公式サイトWikipedia英語版(日本語版あり)。動画も多い。例えば、次のキャブ・ライドは途中で車庫を覗けて面白い。1分40秒には蒸機?の残骸。ターンテーブルが人力。ダブルスリップの多さには羨望。2012年撮影だといい、車両が真新しい。

 これだけ鉄道が多様ならば、さぞやモデルも、と検索すると、なんとスリランカ模型鉄道クラブがあった。Sri Lanka Model Railroad Club - Home of the Sri Lankan Railfans

Srilankamrc2

 書いてある言語は英語でも、イギリス系というか、それもスリランカ風というのだろう。一言一句に四苦八苦。

 何とか読み解くと、自国の車両モデルそのものの市販品は無いけれど、ブラジル・フラテスチ製の南ア、メキシコ向けG12のカラーを変えれば、カナダGM製G12=スリランカ国鉄M2になるという。(メーカーサイト

 同国の歴史に疎いので、時系列がまったく頭に入ってこない。

 1942年に閉店した日本人のオモチャ屋が多様なブリキ製を扱っていた(小野商会?)。1940年代、1950年代には趣味人は自由に活動していた。輸入が制限されはじめた1961年にクラブを立ち上げた。輸入品の店はいくつかあったものの廃業。
 1977年に貿易が自由化され、冒険的な店舗が、バックマンとかホーンビー、フライッシュマンの列車セットを扱い始めた。1983年に、とある店がイタリアのリマ製品を輸入し始めて、趣味の自由度が改善され、1988年以降、盛衰はあるものの、現在は1軒が潤沢に供給している。
 1989-1991年にコロンボの南東15マイルの工場で西欧向けブラスモデルを作っていた。
 クラブは博物館活動にも協力。

てな調子だろうか。誤訳や見落としがあったらご教示をお願いする。

 驚いたのは、ゲージ、スケールで、HOだという。OO(ダブル・オー)ではない。もちろん、2つの違いを十分に認識している様子。改めて調べると、総延長1,500kmは全て軌間1,676mmとある。

 また、実車の過去現在のリストがあって、写真付きで解説されている。機関車の輸入元はフランス、ドイツ、中国などだから、あるいは既製品で代用可能なモデルが出現しているかもしれない。初耳だったのは、我が国の日立製ディーゼルカーが活躍していること。(話題とした掲示板ログ

 その他は、コロンボ市内にある模型店、Model Railway Sri Lankaのfacebook。37, Galle Road, Colombo

 Ranjan Kannangara氏という個人のレイアウトを紹介するテレビ番組?の第1回。自作車両がたくさん登場。第2回にはGゲージのサウンド付ディーゼル機。

 日本語で「スリランカ、鉄道模型」と検索したら、鉄道各誌掲載の写真が、「鉄道模型資料館」というところにリストアップされていた。
 また、横浜の原鉄道模型博物館が記念切手がどうのこうのと伝えているけれど、「贈呈」したのか、「贈呈」されたのか、はたまた、どういう意味があるのか、先方にどういうメリットがあるのか、ちっとも呑み込めない(同サイト)。

 まあ、何やかやで、スリランカは野次馬的に興味深い国といえるのかな。

スリランカのゲージ論

 さて、鉄道模型として考えさせられたのは、実車の軌間が1,676mmというところ。これを1/87、16.5mmの“HO”とするという。
 で、最初に抱く疑問は、こういうモデルをHOと呼べるのかということ。1,067mmの車両を1/87として、16.5mmの線路に走らせるのと一緒。

 もちろん、1,676mm÷87.1=19.2mm。この数字で直ぐに連想できるのは、On3、そしてアメリカンOO。
 逆に16.5mm軌間としてスケールを求めれば、1,676mm÷16.5mm=101.6となる。この1/101.6は、イギリスに前例がある。3mmスケールのTT-3といって、最初はTTの12mmに載せていたけれど、厳密な軌間を求めて後年は14.2mmとなった。その流れで16.5mmを採用できるとは愉快。

 名前はどうする?
 1/87、19.2mmはHOw? あるいはHOb? HOb5.5? HOb66? HOsri? まさかな。この組み合わせの選択肢はインドも採りえる。また広軌は、ロシア1,524mm、アイルランド1,660mm、スペイン1,668mmなどと存在。スリランカ単独で決められるとは到底考えられない。我が国での命名は台湾やニュージーランド、南アのことなんか考慮していないけれどね。

 ところで、1942年に山崎喜陽氏は16.5mm軌間を1/80の縮尺としようと提唱した。これに対し数年前、1/80は過誤だ。1/64とすべきだったと言い切った御仁がいて、唖然とさせられた。
 スリランカの現状を考えれば、山崎氏の決断がよく理解できるだろう。

 なお、我が国に1,067mm軌間の“狭”軌感に憬れるファンがいるのだから、この“広”軌感を再現したいと考えるスリランカ・ファンは将来、必ず出現する。16.5mmと19.2mmの差は、2.7mmと大きい。また過去には762mmが存在したと知れば、ファイン・スケールなんとかで悩む若者像が脳裏に浮ぶ(笑)

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 軌道のレール間隔より、隣のレールとの間の方が狭いんだものなあ。

171_0【追記1】右は宮崎繁幹氏にコメントいただいたDavid Hyatt著"Railways of Srilanka"の表紙。コメント欄には画像を表示できないので、ここにアップ。なんと、赤い流線型蒸機が走っていたってんだから仰天。
 アマゾンにも見付かる。

 で、さらに驚いたのが本書の追補版と思しきサイトの存在。ここ。特に、ダウンロード補足パート2に画像多数。また、前述の模型クラブHPでも紹介。2015-06-27

【追記2】ウィキペディアの博物館に関する記述が少し細かくなっていた(英語版)。2014年12月にオープンだというから、家人の撮影はその直後。2017-09-05

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コメント

何となくインクラインの線路のように見えてしまうのは、京都に住んでいるせいかな。
テレビ番組を拝見しました。カーブポイントがあったり、シグナルが作動していたり、小スペースですが楽しまれている雰囲気が伝わってきます。気動車や客車はペーパー自作のようにも見えます。第2回を見るとカプラーがホーンフック型のように見えるのですが、パーツはアメリカ製?
モデルの方が綺麗に塗装されているので、実物の方がみすぼらしく感じてしまいます。

>>京都蹴上のインクラインということで検索すると、とあるブログに、2540mm=100インチ。1/80とすれば32mm、Oゲージ!【ワークスK】

投稿: ヤマ | 2015/06/27 01:56

旧名のセイロンの方が、いまだに耳に馴染むような気がするスリランカ。情報が飛び交う現代でも、本はあまり出ていそうもない国ですが。実はあるんデス。“Railways of Srilanka”(David Hyatt, 2000年 COMRAC刊)がそれで、この国の鉄道に関し、これまでで最も総括的に記された書物。私がそう云っているんじゃなくて、カバー袖に記してある惹句にそうあります。本文262頁に地図や図版100頁ほどが付いている、A4判のハードカバー本で、相当に力が入った書籍です。

なかなか正直な著者で、スリランカの鉄道については、この本以前に少なくとも3冊が出版されていると、冒頭にある。うち1冊は、セイロン国鉄そのものが、1965年に出版した”The Ceylon Railways One hundred years 1864-1964”だと云うから、同国の鉄道は日本の先輩と云う訳だ。
ワークスKさん御推察の通り、ゲージは、広軌(5'6")で、インド鉄道に倣ったもの。当時はこのゲージが南アジアの標準軌間になると思われていたそう。

図版が本文中でなく、巻末にまとめてあるので、ちょいと読むのが億劫ではあるが、なに絵だけ見れば良いのだ!、と思えば見易い本とも云える。蒸機時代の写真も結構カラーが多く、保存機かと思いキャプションを読むと世紀の変わり目近くまで、蒸機は動いていたらしい。ちょいとスリランカの鉄道を調べてみるか、と思う人もいるかと思い、紹介しました。

>>表紙画像を披露していただいたのですけれど、ここでは表示できないので、本文の「追記」に掲載しました【ワークスK】

投稿: 宮崎 繁幹 | 2015/06/27 20:59

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