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2015/08/31

アサーンの50'メカニカル・リーファー(2)

Coupler-cushionizing projects, part 15: 50 foot mechanical reefers manufactured by Athearn

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 メカニカル・リーファーの積み荷は概ね段ボール箱入りだから当然、車内には荷崩れ防止のローディング・デバイスを装備。さらにカプラーはクッション化されている。中にはこのサザン鉄道SRの様に「スーパー・クッション・サービス」などと謳うものもある。グレート・ノーザンGNの車番を調べたらハイドラ・クッション付だったので、一緒に加工してみた。【画像はクリックで拡大】

 もちろん、リーファーといったところでモデルはボックスカーと同じ。既にお伝えしている方法で簡単に出来てしまう。床板に燃料タンクがブラ下がっているだけ。
 次の一番奥が製品オリジナル。機器配置の左右が例によって間違っている。

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 真ん中がGN車で、ハイドラ・クッションを想定し中央に垂直シリンダーを加えた。ブレーキ3点セットは、実車写真をにらんで適当に配置換え。魚骨フレームのブレーキテコ・モールドは、垂直シリンダーに支障するので削除。

 そして手前がSOU車。ちょっとした出来心で、アキュレールのポリアセタール製ブレーキ・リギング(品番180 Underframe Brake Rod Set)を取り付けてみた(過去記事)。そう、サイドビューでいったら、冷凍機寄が燃料タンクで隠れるから、残りに40フィート車用を取り付けても不自然は無い。ただし、燃料タンクと台車との間が繋がっていない。
 なお、赤文字で示した取付穴は、0.8mmの方がスンナリ入って、簡単には抜けない。

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 GN車の中央のステップが折れていたので、このアキュレールのモールドに含まれているパーツを取り付けた。蛇足ながら、ステップの垂直部分が斜めになっている理由は何だろう。2段になっていることと共に、昔から疑問。それに手スリが無いから昇るに昇れない。

WFCX 8813, Western Fruit Express/GN

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 このモデルだけ側面に縦リブが入る。メーカーがいうところのoutside bracedスタイル。今となっては、ボックスカーと一緒で、エクステリア・ポストexterior postの方がシックリ。1960年代後半から普及して、リーファーは車体長57フィート以上が普通。実車のWFCX 8800-8979も、車内長が50フィートで、車体長は56フィート8・5/16インチ。実は、Car Builders' Cyclopedia 1970年版p140に、まさしく当該形式の図が掲っている。
 まあ、そんなことに目くじらを立てていては、ブルーボックス・モデラーは務まらない。

 呆れるチョンボは次の写真。左のSOU車(リベットサイド)が正しくて、こちらがAエンド。右のWFEX/GN車は、なんと冷凍機室がBエンド=ハンドブレーキ寄に設置されている。ここ2年ばかり注意しているけれど、こんな実例にはお目にかかれていない。

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SOU 938, Southern Railway

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 サザン鉄道は1960年代、"Super Cushion Service"を標榜。これは頭に"Refrigerated"を付けている。

 ところでここのリポーティングマークは"SOU"なのだけれど、1970年頃までこの側面の様に書いた。妻面は"SOU"となっているものの、実車例(RR Picture Archives)の"SOUTHERN"がほとんど。AARの規則では、アルファベット2文字以上4文字以下だから、おかしい。
 それと、どうして"SR"を採用しなかったのか。S氏は、「イギリスの同名鉄道に義理立て」との説だったものの、アメリカの方が成立が古い。

 ベブベルBev-Belというサード・パーティの製品。

TLDX 37, Libby's Famous Foods

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 こちらは、1965年に売り出された最初の5種類の一つ。他はPFE(SPとUPの子会社)、NYMX(同NYC)、NPM(同NP)、SFRD(同AT&SF)と、そうそうたるラインナップ。ちなみに、モデルはPFEのR-50-6クラス(300713-301212)と同じ設計(Tony Cook氏サイト)。次はMR誌1965年9月号p9の一頁大広告で、イエローのマーキングがそれら。

Mr196509p9d

 大所に伍して発売された理由は、TLDX。すなわち"Transport Leasing, a Division of Pullman"、プルマン社のリース部門ということ。所属する貨車の中でピカイチのスキームだったのだろう。
 リビーズLibby'sは現在、ネスレ社の一ブランドで、パンプキンパイ用のカボチャ缶詰を扱っている(Nestle USAサイト)。"Hydroframe 60"はPS社のEOCC(end of car cushion)。ドア左の"LD"は隔壁型荷崩れ防止装置ロード・ディバイダーLoad Dividerで、たぶんEquipcoのブランド。以上は推測。

 実車の写真を探すと、プルマン・スタンダードのカラー本に次のメーカー公式写真があった。レンズの歪や明るさを弄っている。

Tldx_35
quoted from "Pullman-Standard Color Guide to Freight Equipment, The Decade of Color: 1960-1970" copylight 1995

 意外にも、水色ボディにメタリック・ドア。
 メカニカル・リ-ファーではなくインシュレーテッド・ボックスカーで、レタリングの"LD"を"DFB"とした他は全て一緒。車番はTLDX 35-39の5両といい、アサーンの37を含んでいる。この35の奥に同色の36が写り込んでいるから、5両とも同じと考えるのが妥当。新造は1963年8月と、モデル発売の2年前。

 ネットで水色スキームのHO製品を探すと、E&Cショップスが出していた。Nではマイクロ・トレインズ、Oはアトラス。
 一方、アサーンと同じ黄色は、HOでAHM、Lima、PMI(耳慣れないメーカー名)という3ブランド。

 うぅぅむ。
 たぶん、アサーンは実車のレタリング図案を基にしている。その根拠の一つがメカニカル・リーファーとしてしまったこと。インシュレーテッド・ボックスカー=保冷車をリーファーと呼ぶ知識が無かったのではなかろうか。前回のBREX車の例もある。
 そして担当者が実車通りのカラーリングで社長に見せた。反応は「リビーズならカボチャやろ。水色なんて売れへん。黄色にせえ」となった。大衆のイメージどおりだから販売は順調。1994年にも、ありえないTLDX 45をリリース。全米で5両しか走っていないものだから誰も見たことが無くて、他社も追随。
 1995年にPSカラー本が出版されて、みんなビックリ。以上は邪推(笑)

【追記1】"PMI"についての情報がTony Cook氏のHO-Scale Trains Resourceにあった。正式名称は"Precision Model Inc."で、モデル・パワー社のブランドとのこと。アメリカ型鉄道模型大辞典に項目を立てておいた。黄色のリビーズの3メーカーは同一製品ということになる。次はLIMAブランドで、"HYDROFRAME SO"や、ローディングデバイス・マークが情けない。2015-09-01

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【追記2】MDCラウンドハウスの広告にLibby's Foods車をみつけた。MR誌2002年9月号p31で、もちろん水色。2017-11-11

【追記3】Classic Freight Cars the seriesの第3巻40 ft. Refrigerator Carsのp12に次の写真が出ていた。イメージが一緒。角度や色調をいじっている。General American Transportation Corp.所有で、Libby McNeil & LibbyへリースしたLMLX 1656。Protocraftが1/48のデカールを販売。2017-12-05

Cfc3p12

【追記4】あちらにも出入り口位置のステップに疑問を持つ奴がいて、MR forumで話題となった。ボックスカーには無くて、リーファーだけという理由は何か? 文献には見つけられないけれど、輸送途中に何度か庫内の温度等を検査するためだろうということでほぼ一致。2018-02-20

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コメント

サザンのレポーティングマーク、SRだと1832年設立で今も健在なStrasburg Rail Road (SRC)と紛らわしいから、というのはどうでしょう。Southern Railway in Mississippi (1894年設立・SRRM)なんていう鉄道もあったようです。

貨車に表記するにあたって、車籍簿通りのレポーティングマークではNSやAEG、CGなど色々あり過ぎてややこしいから、というのはどうでしょう。これらは側面右上隅に小さく表記してあります(このリンク先画像を参照ください)。

2段ステップ、確かに不思議ですね。荷物車にも似たものが付いているものがあります。荷車が貨車の床下に潜ってしまわないように、かな?

>>御高説痛み入ります。なるほど、いろいろ考えられるのですね。【ワークスK】

投稿: arx | 2015/08/31 14:39

Reporting Markとは何か?、は良く知られているが、その歴史や実態は、必ずしもよく判っていないような気がする。実物ファンは、お気に入りの鉄道は関心があるが、横断的に全ての鉄道に関係するようなことは、気にしないと云うこともあろう。こう云うのを気にするのは、むしろ模型ファンだろう。AARが貨車のレタリング標準化に乗り出したのは、何と百年以上も前の1901年のことだと言う。今はどうか知らないが、少なくとも第2時大戦直後までは、このルール(標準)に強制力はなく、皆の為になるんだから、守ろうよ!、と云うものだったそうな。Reporting Markは、AARが各鉄道に割り当てたもので、其々の鉄道の意向を反映したものではなかったようだ。

その為、割り当てられたReporting Markを使わない会社もあったらしい。どこだ、SOUTHERNだ!。いや、それだけではないらしい。外に、ERIE、ALTONなどが逆らったとか。ペンジーも、フルネームで記すのを好んだと云う。こんな話を私がよく知っている筈はない。ネタ元を紹介しておこう。“Freight Car DESIGN MANUAL for Model Railroaders”と云う古い本。著者は、Wm. K. Walthersで、1946年の出版。Walthersって、あのワルサーズ?。そうだから言ったでしょう、こう云うことを気にするのは、模型ファンだって。

>>そういうことなら合点がいきます。ACIラベルやAEIタグを用いる前は肉眼で読み取っていたわけで、融通が利いたはず。こりゃあ大辞典を書き直さないと……(笑)【ワークスK】

投稿: 宮崎 繁幹 | 2015/09/01 22:48

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