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2016/01/11

フカヒレ・イコライザー幾何学原理

The fundamental principle of the Shark-fin equalizer system for four-wheel equipments

Butterfly01 このイコライザーでずっと悩んでいるのは、平面性のこと。
 我々の常識に従えば、幾何学的な平面は3点で定義される。一方、2軸車の車輪は4つ。この間をどういうふうに変換しているのかが理解できない。前記事「最適設計法」に追記したように、一義的ではないとさえ考えた。

 コタツに足をくべながら皆さんの報告や雑誌記事を見直していたら、伊藤剛さんのバタフライ台車でヒラメいた(TMS誌2002年7月号p99)。【画像はクリックで拡大】

 このポンチ絵を、第1図に描きなおす。キーポイントは荷重点なので、これを理解しやすいように車輪の位置にとる。
 すると、直角3角形が2つ現れる。
Fig10

 この直角3角形それぞれが3点支持となっている、と解釈したらどうだろうか。

 ここがブレークスルー・ポイント。思考の突破口。

 W1とW3の2点は共通。この2点を結ぶ直線上にヒンジが2つあると仮定する。車輪4つの安定は自明。

 次は、2つの直角3角形に、車体をいかに載せるか。これは簡単。
 直角3角形各々の真ん中に、斜線W1-W3と平行な軸(赤線)を設けて、この2本の上に車体を設定すればよい。そう、赤線2本同士も平行となり、それらは常に同一平面となる。それが第2図。
Fig20

 第3図では、車体と直角3角形とを各々2個のヒンジで固定し、直角3角形同士を結ぶヒンジを真ん中1つに置き換える。後者が長孔になっているとすれば、第2図と同じ動きをするはず(3角形の2辺の和は,残りの辺より大きい)。
Fig31

 ここで、直角3角形の先端が用をなさなくなったから、切り取ってしまう。
Fig41

 ほーら、フカヒレとなった。

 うぅぅむ、意外と単純。
 今まで何を悩んでいたのだろうか。

 あとは、前回記事の設計手法と合致するかの検証が残されている。また、ロンビックの中点連結定理とどこが異なるのかも確認する必要があるけれど、絵を描くだけで疲れてしまった。またいつか。

【追記】バネ要素のことを書いておく。すなわち、この機構が一義的だと証明できたので、以下の3つのことが断定できる。

(1)軸バネや枕バネとは共存しない

 これらのバネは、連動機構に直列に入る。すなわち、その動きを緩和する作用をなしてしまう。
 確かに相乗効果を狙うという面もあるだろう。しかし、面倒な機構を組み込むよりは、単純なバネを工夫して全てを委ねる方が遥かに簡単で、性能も優れている。基本的に実物はそうなっている。テンビン棒イコライザーの例もある。

(2)リンク姿勢維持用のバネは害悪

 前記事の追記で、ネジリ軸にトーションを掛ける案を描いたけれど、これは連動機構に自由度が残っているという仮定が下敷き。一義的なら、安定化要素は不要。というか、挿入すれば本来の動きを阻害する。O点のガタ=バックラッシを詰めるという意味は持つものの、それだけの目的にしては大層すぎる。
 垂れ下がりは、支点の位置を工夫したり、機構各部の調整で修正できる。

(3)ロンビック・イコライザーとの違い

 フカヒレでは、ことほど左様にバネを否定した。しかし、ロンビックでは、ひたすら入れることを推奨している(過去記事参照)。
 ひと言でいえば、フカヒレは1重系で、ロンビックは2重系ということ。
 1重系は、それだけで精度を出さなければならないから、それを下げる要素は極力、排除する必要がある。
 2重系は、2系統間にどうしても誤差が生じる。この解消をバネにさせるということ。上手く使えば、誤差の平均をとって精度をアップできる。これこそがロンビックの特長。2016-01-18

【ご注意】この記事は、フカヒレ・イコライザーが一義的に作動するリンク機構であることを証明しているだけです。実際に作る際には、ちょっとしたコツが要ります。難しくは無いものの、先入観に囚われると所期の性能が得られません。ぜひ「最適設計法」をご覧ください。

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イコライザー」カテゴリの記事

コメント

誤差の範囲ですが、車輪が上下したときに水平面で線路と平行にならないということくらいでしょうか?問題があるとは思えませんが。
となると、車輛中央にあるボルスターネジリ軸支点をもう一方の軸受けに持って来ても問題ないし、その方が車軸はより線路に直角方向で傾きますが、逆ひねりを実現する連結テコの腕が短くなる分精度が要求されることになるのかもしれませんね。
さらにボルスターネジリ軸支点をもう一方の車軸中央に近づけても機構は成り立ちますが、より精度が要求されることになり、究極的にはボルスターネジリ軸から垂直に立てた腕を床板中央に設置した旋回腕で逆方向にひねる等角逆ひねり機構と同じことになってしまうと理解しました。
つまり、斜めに配したネジリ軸を連結テコで逆方向にひねる機構と、一直線上に配したネジリ軸を逆方向にひねる機構の差というだけになってしまうわけですね。

>>幾何学的に成り立っても、機構的には避けたいことは間々あります。A点の位置が良い例で、ここの画では車軸の内寄ですけれど、「最適設計法」では、大きく外へ振ることを推奨しています。反対に、ネジリ軸2本の平行は、幾何学的には厳守ですけれど、実用上は少しぐらい狂っても、単に車体の傾きが平均から僅かにズレるだけで無問題といえます。
 実態に即して、一つ一つ考えるしか術(すべ)は無いでしょうね【ワークスK】

投稿: skt | 2016/01/11 07:44

勘違いしてました。車軸は線路の方向と直角に動きますから、車輪は水平面では線路と平行を保ちますね。

>>つくづく思うことは、この機構の名前です。もし、最初から「バタフライ・イコライザー」と呼んでくれていたら、真の原理を追求し、改良していくことは困難なことではなかったはずです。それが「フカヒレ」だったばかりに、斜めのネジリ軸の存在が見えにくくなりました。考案者を含めて多くの方が誤差の大きな機構を作られる結果となったのです。でも、言い慣らされて、中華料理が連想されなくなったときに初めて、その本質をみんなで考えられるようになったのだと解釈しています。
 その観点に立つと、貴兄のコメントにある等角云々の用語は大変に危険です。レール方向を指して使われているのでしょうが、枕木方向でも程度の差こそあれ、動きは同じなのです。さらに言えば、本来の目的である「姿勢や荷重の平均化」を忘れて、凝りすぎるという袋小路に迷い込むこと必定です。この用語の多用こそが「テンビン棒はイコライザーと呼べない」などという暴論に繋がった起点なのでしょう。
 言葉は魔物です。陶酔の呪縛から逃れることは容易ではありません【ワークスK】

投稿: skt | 2016/01/11 07:48

機構の名前はともかく、ワークスKさんが解析されるまで考案者の故伊藤剛さんも、フカひれ命名者のKさんも、このメカニズムの正確な作動原理を把握されていなかったことが不幸だったのでしょうね。
理論上の回転軸・リンクと実際のイコライザーの形態が違うのがこの機構が理解しにくい最大の原因だと思います。

ロンビックイコライザーも最初は動作原理が解明されていなかったので、4つの支点が同一平面上にないといけないということがあまり理解されなかったようです。

とはいっても模型ではガタがあるので、実際の理論と多少食い違いがあっても動いてしまうとことが多いのが面白いところだし、落とし穴があるのだと思います。

>>知識や経験、それに思考力の不足は抗えるものではありません。しかし真実追及の姿勢だけは、失うことが無いようにと心がけているつもりです。
 友人の忠告は、「それを他人にまで求めるな」でしたけれどね(笑)【ワークスK】

投稿: ゆうえん・こうじ | 2016/01/15 09:19

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