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2016/01/22

福井鉄道フクラムの脱線原因は

Estimation of the derailment cause in Fukui Railway

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 昨日1月21日のニュースでの注目は、えちぜん鉄道と福井鉄道の相互直通運転。3月下旬に開始の予定で工事が進んでいるという(福井新聞サイト)。

 ただしビックリしたのは、超低床車両フクラムが昨年10月に脱線していたこと。さらに2か月半、運用されていなかったという話。写真は柳田雅夫氏のモデルで過去記事で紹介。この構造には悩んだ。
 そのときの感想は、よくぞこんな仕組みを考えたもの。
 だから、心外も心外。

 原因には興味が湧く。ネット上に報道を拾うと、

■福井新聞2015年12月30日
 脱線事故は10月15日午前7時55分ごろ、同市西木田2丁目のフェニックス通り軌道上の下り線で発生。新木田交差点の右カーブを曲がって直線に入った後、最後尾車両の前輪がレール左側に外れた。……鉄道総合技術研究所の調査では、カーブのレール幅が基準値より数ミリ拡がっていたことで車輪が浮き、遠心力が加わって脱線した……車両に問題はない。

■中日新聞2015年12月31日
 レールの幅が基準より広がっていたのが主因。

■日本気象協会:福井の実況天気(2015年10月15日)
 朝から快晴。降水量0.0mm。

 うぅぅむ。なにか怪しい。わずかな軌間拡幅で車輪が浮くか? そして即断で、最新鋭車だけを2か月半も止めるか?
 中日新聞の「主因」ってのも引っ掛かる。じゃあ「副因」は?

 特に「鉄道総研」は信用できない。権威付けに使ったニオいがプンプン。残念ながら取材した記者には知識が無い。加えて、地域の期待の星だというバイアスが働く。鉄道が出した玉虫色の発表を素人目線で鵜呑み。もちろん発表自体だって、騒がれないように工夫をしているはず。

 なお、国土交通省の運輸安全委員会は調査をしていない(調査中の案件)。

 さてこの車両、きわめて異色な構造を採る。

Fukuifukutram2
        路面電車とLRVを考える館より引用

 3車体に各々台車がついている。これが車体と直結した単台車だったら、揺れで大変なことになる。ピッチングとヨーイングが激しくて乗っていられないし、車輪は浮きまくり。

 過去記事でのrehsiさんのコメントによれば、3つの台車はボギーし、車体同士が油圧で連動という。予想と模型化案が次。

福井鉄道F1000 フクラム

 これ、直線でも、曲線中でも、問題は無さそう。

 ただし、直線と曲線の変わり目ではどうなんだろう。
 先頭寄が曲がり始めると、後尾寄は直線中なのに強制的に折れ曲がろうとする。これでは、内軌側へ脱線となる。
 反対に曲線から出るときは、先頭寄が直線にかかると、後尾寄は曲線中なのに強制的に真っ直ぐになろうとする。ここでは、外軌側へ脱線。これか。

 台車・車輪には押圧が掛かり、ナダルの式の脱線係数Q/P値が上昇する……という筋書きでいいかな。

 で、典型的な箇所が分岐器。まさか、車庫内では時々脱線していた? 営業線上はカーブが緩いからとタカをくくっていた? それで慌てた?

 対策はどうする?
 油圧配管に安全弁を設けるか。でも、働いたときがちょっと怖い。バネ押しのピストンで圧力を逃がす手はある。
 前後台車の空気バネで、左右剛性を下げるか。これが簡単。ただ、適当な既成品があるのかな。

 もう一つ、摩擦係数を下げるっていう方法がある。
 こういう曲線を検知して、自動でフランジとの接触面に塗油すればよい。粘着に影響する踏面には塗らない。技術的には難しくない。1つの鉄道で1両か2両ほど、レールの濡れ具合を見て決める。既に実施している鉄道はある。レールと車輪の摩耗も減少する。(厳密にいえば、事故原因が「乗り上がり」なのか「滑り上がり」なのかを見極めなければならないけれど、前日と当日の天気を確認するとずっと晴れているので、摩擦係数が低かったとは考えにくい。よって、「乗り上がり」と決めつけた)
 案外、これが正解かもね。

 これから、この型式を増やそうと計画しているのだろうし、さらに、えちぜん鉄道も乗り入れて来る。
 何もしないと、また、起きるよ。

【追記1】Chichiroさんにコメントいただいた画像は次。

 該当ページを自動翻訳に掛けるとアゼルバイジャン語と表示されるだけで英語へも変換できない。

 ただし、各台車がボギーすることは確か。
 問題は車体の折れ曲がり角度のコントロール。模型なら幌をゴムなどで適当に作ればよいのだろうが、実車ではそうはいかない。水平方向と垂直方向、それにネジリ。何か拘束を掛けてやらなければならない。単なるバネでは無理。

 Wikipedia英語版"ADtranz low floor tram"には2枚の図。

First Generation

Second Generation

 これじゃあ、余計に混迷。2016-01-24

【追記2】公表されているように「ボルスタレス台車」だとすれば、ボギー回転と左右動には、変位量に比例した反力が働く。よって、アゼルバイジャン語とウィキペディアの画の動きを説明できないことも無い。ストッパーはあるだろう。
 ただし、空気バネの横剛性だけで足りるかは疑問。十分に柔らかくしないと急曲線での横圧を下げられないし、それが至難のはずなのだ。曲線の多い線形でボルスタレス台車導入に失敗した経験があるだけに、この辺りの疑問が拭いきれない。
 あるいは、セルフシールではなくて、ボルト締結か。ボギー方向をだけを柔らかくして、左右動は、ガススプリングか何かで補うというのはありえる。

 もう一つの問題はピッチングの規制。以前に示した次のような機構が是非とも必要だろう。
福井鉄道F1000 Fukuram

 まあ、気長にお付き合いいただきたい。2016-01-26

【追記3】うぅぅむ、やっぱり眠れない(笑)

 車体の拘束がボルスタレス台車の空気バネだけだとすると、他の車両と連結したときに危ないのではなかろうか。
 あちこちの写真を眺めてもカプラーらしきものは付いていないけれど、故障とか、分解検査とか、自力で動けない場合はある。押されたとき、下手をすればグニャッと折れる。問題はカーブとか、勾配とか。引っ張るだけで対処というわけにはいかない。
 出来る限りの徐行をして、トラブっても被害を出さず、すぐに復旧できる態勢を採るということかな。2016-02-04

【追記4】ロシアはモスクワ近くのLRTが脱線した。2016年6月20日のようだ。フクラムと同じ3車体3台車構造で、中間台車が脱線。報じたロシア語のサイトから写真を引用。トラパシ鉄道模型掲示板とダブルポスト。2016-06-20

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老年の主張 戯言」カテゴリの記事

コメント

初めまして、いつも興味深く拝見させていただいております。

http://tram.ruz.net/tramcars/euro2000/GT6N_01m.jpg

上記はフクラムのベースとなったGT6Nの曲線通過時の図ですが、車体と台車がかなり複雑な動きをしています(台車は車体に対してある程度回転します、そうでなければ曲線に入って行けません)。
少なくとも前後車体が単純に同じ角度で連動しているという訳ではないと思われます。

>>御教示多謝。これ、アゼルバイジャン語ですか! 構造探求が振り出しに戻ってしまいますね。弱りました【ワークスK】

投稿: Chihiro | 2016/01/23 23:23

以前の私の説明は間違いでした。スミマセン。

この構造の目的はボギーでありつつ車内への
機器の張り出しを極力減らすことと思われますので、
1車両だけ突出して台車が振れる(ヨー)のではなく
3台車を常に平均して振れさせようという構造である
はずです。
隣り合った車体同士の屈折角度がA車B車間と
B車C車間で同じ角度、ではなくて、
各車両の車体とそれの台車の振れ角度が
3車体で同じ、ということ・・・かと思ったら
図だと微妙に違うようでもありますね。??

第二世代の4車体タイプはKT4DやGT4などの2車体
4軸のものを2両連結棒で繋いだものと等価であり、
ピッチング抑制には充分、連結部分の食い違いは
あるものの車体安定は問題ないということでしょう。
4車体化は定員増加が第一目的だとは思いますが、
3車体の機構の複雑さを避ける目的もあるのでしょうか。

>>模型ファンとして興味のある台車・車体連動の情報が無いのが悩みのタネですね。鉄道総研の「RRR誌2008年2月号(pdf)に解説がみつかったものの、2車体2台車式に関してで、また具体的な機構には言及されていません。まあボチボチいきましょうか(笑)【ワークスK】

投稿: rehsi | 2016/01/24 13:04

特許資料を探すと、新型路面電車の連結部の構造がいくつか出てきます。
これは近畿車輛の物なので、広島電鉄のグリーンムーヴァ等に採用されているタイプと思われます。
http://www.ekouhou.net/%E8%BB%8A%E4%BD%93%E3%81%AE%E9%80%A3%E6%8E%A5%E8%A3%85%E7%BD%AE/disp-A%2c2008-238999.html

この方式は台車がボギーしないのでフクラムとは構造がまったく異なりますが、何かの参考になりますでしょうか。

>>こりゃあ凄い。連接部がここまで分かる説明は初めて見ました。何を考慮して構造が決められているのか、よく理解できます。有難うございました【ワークスK】

投稿: YUNO | 2016/01/26 00:35

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