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2017/03/07

JR名松線への興味

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 先日、我が家に封筒が届いた。中身はディーゼルカーのストラップ。差出人が三重県津市の役場で、家人は怪訝な表情。
 実は昨年秋、ここの三杉という地区に宿をとった。JR東海の名松線(めいしょうせん)の沿線。生憎の雨だったものの、走り写真が2枚撮れた。駅にあった写真コンクールの案内をみて、応募していたわけ。【画像はクリックで拡大】

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2016-10-03 09:43 比津・伊勢奥津間 この程度のガーダー橋でC11が通れる?

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2016-10-02 16:21 伊勢鎌倉・伊勢八知間

 送付したのは、鉄橋を渡る方。結果はもちろん、参加賞(笑; 応募総数は51点で、3月26日に表彰式だそうな(美杉だより3月1日号)。
 ちなみに名松線は、松坂から名張へ抜ける予定から付けられた名称。

 で、なんでこの辺りに出掛けたかといえば、家族サービス。飼い犬と一緒に泊まれる宿があった。ついでに(?)少し北の貨物鉄道博物館(三岐鉄道丹生川駅)へも寄ったのだけれど、それはまた別の機会に。

 名松線には、2つの意味で興味があった。1つは、水害による6年半もの運休。てっきり廃線と思っていたら、再開のニュースにはビックリ。本当に動いているか確認したかったわけ。

 2つ目は、逸走事故。ディーゼルカーを夜間停泊させたら、ブレーキの空気が自然に抜け、車両が転がってしまったというニュース。帰宅後に調べたら記憶間違いが判明してギャフンだった。それまでは終点の伊勢奥津駅とばかり信じていて、線路を見に行ったわけ。

 写真では分かりにくいけれど、確かに傾いていた。規則では0.5%以下のはずが、もっとあるんじゃないか、土木技術で水平にできるんじゃないかと愚考。線路は、たったの1本。

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 「奥津」は「おつ」と読む。奥に、蒸機時代の給水塔がチラリとのぞく。絡まるツタを取り除けば名物になると愚考。

 駅舎跡は役場となっていた。近くには往時の賑わいを偲ばせる商店と住宅。観光資源になるのにと愚考。

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ところで、鉄道車両のブレーキの基本は、自動ブレーキ。

 引き通した管に空気を込めると、ブレーキが緩む。空気を抜くと、ブレーキが掛かる。そして、このままにしておくと、すなわち、空気圧縮機を停止させて放置すると、空気が漏れて圧力が下がる。すなわち、ブレーキが緩んでしまう。

 それに対して、スプリング・ブレーキってのがある。
 スプリングの力で掛ける。緩めるときは、空気を送る。その一例が近年、大型バスやトラックに装備され出したホイールパーク式パーキング・ブレーキ。

 これ、フェールセーフで安全、って思うだろう。大昔の宇治川おとぎ電車が採用。
 じゃあ、なぜ自動ブレーキなんだ? それは鉄道の特殊性。

 1本の線路の途中で列車が止ったらどうなる? その列車は動けなくても良いのだけれど、他の列車を通せない。自動車だったら、脇を通り抜けたり、無理やりにでも移動させられる。スプリングを手動で殺すことだってできる。
 でも、なん両も繋がった列車では大変。もしできたとしても、ブレーキが死んだ状態で動き出したら、今度はそれを止める手立てが無い。

 現役時代に遭遇した事故では、人力で押せる電車を見て、空気システムの有難さを実感したものだ。

 電気指令式ブレーキの一番面倒な故障は、非常ブレーキの不緩解(ふかんかい)。原理は、列車全長に往復させた非常ブレーキ線に、電圧を加えたときにブレーキが弛み、電圧がゼロになったら掛かるフェールセーフ。たとえば接点のどこかが浮いたときに働く。可能性のある個所はいくつもあって、初期には発見するのが難しかった。空気なら漏気音で判るけれど、電気はそうはいかない。1列車のたった1個所の接触不良で、鉄道システム全体が数時間、停止してしまう。

 ジョージ・ウエスチングハウスが発明した自動ブレーキの価値は、計り知れない。

 次は、いなべ市から美杉へ向かう途中で遭遇した近鉄特急。伊勢石橋第四号踏切かな。

伊勢石橋第四号踏切

【追記】訪問から半年後の報告なので、中身がスカスカ。こりゃあ反省。撮ってきた写真が少ないから、と言い訳をしておく。思い当るその理由は、ネット上に詳細な報告があったこと。例えば復旧前の紹介「台風被害で5年近く不通のJR名松線の現状はどうなっているのか見てきた」がそれ。既視感があったというか、現地での感動が希薄だったわけ。

 ただ、それ以上に気力を萎えさせたものがあった。それは熱気の無さ。沿線全体に鉄道への情熱が感じられなかったこと。一日の乗客が90人ほどだってんだから、さぞや盛んに乗車運動しているかと思っていたら、目に見えるものは皆無。そりゃあそうだ。「利用しそうな連中は、あいつとあいつ」ってな調子で顔をすぐに思い浮かべられて、それ以上に増える見込みなんてありゃあしない。

 じゃあ、なぜ復旧したんだ。バスの方が遥かにコストが安いし、運行回数や行先の融通が利いて、安全性だって問題無く、かえって高いくらいだ。道路を整備した方が、自家用車で移動する住民や観光客にも便利だ。JR東海や三重県、津市は、なんで何億もの金を出したのだろう。

 東洋経済ONLINEでは大坂直樹という記者が「JR東海が「不通路線」を復旧した本当の理由」なんていう一文を書いていたけれど、題名と中身は大違い。こりゃあ、編集長が広告主(財界?)の意向を「おもんばかった」な。
 もちろん、誰が考えたって、JR東海のイメージ戦略。東海道新幹線で稼ぎに稼いで、ローカル線を切り捨てたら、マスコミの格好の餌食。リニアの建設費と較べたら、ここの復旧工事費なんて屁みたいなもの。盲腸線はここだけ(?)だし、JR北海道とはわけが違う。自治体は解っていて同調。治水工事なんて、やって当たり前。地元は棚からボタ餅でさえなく、有難くもないから盛り上がらない。運転事故の遠因はモチベーチョンの低下。写真コンクールもオザナリ……てな勘繰りでどうだろうか。
 タイミング良く、三浦しをんの「神去なあなあ日常」の舞台となったのに。2017-03-09

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放置されていた地ビール工場の廃屋火の谷温泉

【追記2】朝日新聞2017年4月5日朝刊第8面に「JRのこれから(上)」という囲み記事があって、冒頭に名松線が登場。「復旧後の乗客数は、1日あたり平均約190人に回復した。ただ、今年2月は1日約60人まで減り、客足は遠のきつつある。……JR東海は、16年度の経常利益が5200億円になる見通しで……赤字の路線を抱える経営の『余裕』があるといえる」だとさ。
 乗務員の士気が心配。2017-04-05

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