アサーンの40'グレイン・ボックスカー
Coupler-cushionizing projects, part 20: Reworking of Athearn 40-foot grain loading boxcars, 1 Roundhouse new model and 4 Blue-Box second-hand models
19世紀後半以降,穀物はボックスカーでバラ積みされるのが常だった.側出入口上部を4分の1ほど開けて内側に仮の木板を釘打ちする手法である.1960年代になるとカバードホッパーが台頭したものの,ピーク時にはボックスカーも運用され続けた.そんな中で1960年代後半,古いボックスカーの更新に合わせて,プラグドア上部にグレイン投入専用のハッチを設ける構造が西部の一部の鉄道で流行った.それがここに紹介するグレインローディング・ボックスカーである.1980年前後にはカバードホッパーが行き渡り,ボックスカーは穀物輸送の役目を終えた.
アサーン社は2015年7月にブランドを再編して、"Ready-To-Roll"の一部を"Roundhouse"へ移した。それらはブルーボックスと呼ばれる昔の看板製品だったから、競合していたMDC社のブランドでは違和感を覚えたものだった(高級路線がジェネシスGenesis、普及路線がRTR=Ready-To-Roll、前世紀レベル路線がRoundhouseといったところ。掲示板)【画像はクリックで拡大】
そんなこともあって、新しいラウンドハウスを手にするまでに2年が経過した。それがこの40フィート穀物用ボックスカー。真ん中のプラグドア上部に投入口が2つ付いている。
モデルの構造はRTRとなったときに変更されたままで、単に名前が変わっただけ。よって、車高が昔のブルーボックス時代よりも約1.5mm高い。次の写真をご覧になれば、手直ししたい気持ちをお判りいただけるだろう。ただ、同様のモデル数両を手掛けた経験では、なかなか手ごわい。
どうしてこんなことになったのかといえば、カプラーにマクヘンリーMcHenryの標準型を採用したから。ケーディーの#5と同じで、高さが1mm程度下がってしまう。当初は解放ピンをひん曲げたものがあった。で、単純に車体を持ち上げたわけ。
1.5mmプラスの内訳は、新設計の台車のレール面上心皿高さが7.8mmで、0.6mmのアップ。そして、車体ボルスタ(魚骨フレーム)の厚さが5.0mmで、プラス0.8mm。その他はウエイト鉄板貼付用の両面テープで若干、てな具合。(台車心皿高さは,NMRA 推奨規格RP-23で,HOが5/16"=7.9ミリと規定されている影響と考えられる.2023-11-24)
台車心皿部は,写真左が旧タイプで,右が新タイプ.0.6ミリの差が判る.2023-11-24
車体の枕梁は,左が旧タイプで,右が新タイプ.差は0.8ミリ.2023-11-24
過去の改造は、台車と魚骨フレームを共に流用したかったので、床板の構造が複雑になり、接着変形も起きた。
今回は幸い、旧製品の魚骨フレームを利用できた。これで、0.8mmがチャラ。台車はシルバー色の金属車輪付きでそのまま使いたいから、残りは0.7mm。
そこで鉄板ウエイトの1.5mm厚を、プラ板の1.0mmとすれば、0.5mmが吸収できる(過去記事)。併せて魚骨フレーム上面を少し削って、なんとか許容範囲に収まった。サイドからは床下機器がチラリとも見えなくなった。
カプラーには間座(シム)0.5mmが必要で、クッション仕様のポケット伸張タイプを取りつけた。魚骨フレームと一体モールドの機器は例によって配置を左右入換。床板の抜け止めを追加している。
印刷は、古いブルーボックスと較べれば、さすがに見事。車体の金型は変更無しのはずが、屋根歩み板の妻部支えが突出していて、欠けないように注意。
■プロトタイプは、ユニオン・パシフィック鉄道のグレイン・ローディング・ボックスカーで、ダブル・プラグドアが特徴。その右側の上部に穀物投入口"grain access door"を備えている。ボックスカーによる穀物輸送の最終形態。1965年から、BF-50-1、BF-50-2、BF-50-3が50トン積みで4,000両以上を自社工場改造だという。1973-1974年のBF-70-10とBF-70-12は70トン積みで計200両。
問題は、ハシゴの長さと、手ブレーキハンドルの位置。
ブラウン色は1966年改造のBF-50-2を名乗っているので、屋根歩み板が取り付けられた後に撤去された姿のはず。しかし、Aエンド(次写真)の妻面ハシゴが全高となっている。
イエロー色は1973年出場のBF-70-10なので、当初より屋根歩み板が無い。よって、手ブレーキ・ハンドルは次写真のような上位置では無くて、下位置。ハシゴはすべて下半分でなければならない……といったあたりが巷間の取沙汰。
当方の関心はリベット。溶接が一般的となったこの時代での採用理由を知りたいもの。また、各パネルの真ん中にリベット1列追加ということは、この裏に間柱が入っている。積み荷の膨らめ圧力を考慮したか。
模型の四隅が丸くない点は気になる。"W corner post"の時代なんだけどなあ、と、訳知り顔。
ついでに手持ちの4両にも手を入れた。
UP (BF-50-2) 実車に最も近い。黄地に赤玉は何かの試験車を示しているらしい。
UP (BF-70-10) カプラーのクッション化くらいで済ますのが無難。
Soo Line 1964年にFond du Lac工場で組み立てた200両は、70トン積みの50フィートで、エクステリア・ポスト。
NP コンビネーション・ドアなら存在したのだけれど……。
GN 1967年に、スムーズ・サイド225両と、エクステリア・ポスト200両を40フィートで新造。ただし幅広10'のシングル・プラグドアで、投入口は大きいものが1つ。
他、CB&Qは、ダブル・プラグドアだけれどエクステリア・ポストの50フィート。ATSFとCPは、40フィートでUP車と似ているものの、プラグドアがシングル。ATSFのダブル・プラグドアは50フィート。
ことほど左様に製品は、実車との乖離が悩み。手を出さないのも一興。厳密にチェックすれば、買うものが無くなり、全てを自作しなければならない。程々で折り合いを付けるのが現実的。ただ、その心境にたどり着くまでに歳月が……(笑)
このタイプのグレイン・ボックスカーは1960年代に登場し、1980年代前半で消滅、あるいは転用となった。資料はKalmback社2015年刊"The Model Railroader's Guide to Grain"p61-62。モデルはTony Cook氏のサイトで解説。
併せて、当ブログの「ディテールズ・ウエスト製ボックスカー(3)」をお読みいただくと、ボックスカーでの穀物輸送を御理解いただけると思う。また、「ボックスカーのルーフウォーク撤去作戦(1)」も乞う御一読。
【追記】クッション・カプラー化したモデルを製品のパッケージへ戻してみた。カプラーが引っ掛かると思いきや、余裕で納まった。メーカーの想定に入っているのかもしれない。もちろん、これでは収納効率が悪いので、パッケージは捨てる。2017-04-16
【追記2】2つあるグレインドア表面の文字がSOO車だけ読めた。左が"GRAIN DOOR"で、右が"INSPECTION DOOR"。使い分けるのだろうか? MRフォーラムに質問をしてみたのだけれど……。2017-04-30
御存じという方の発言は無かったものの、このモールドからの予想が1件。それに拠れば、この2枚のドアは、内側への観音開きで真ん中に縦桟が無い。穀物を投入するときは両方を開ける。検査でサンプルを採取するときには右側だけ開ける。右側を閉めてロックすれば両方ロックした形。
まあ、これで理屈は合う。2017-05-03
【追記3】2024年4月に新スキームが発表された.>>pdfファイル 2024-04-06
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コメント
on saleだったので、買ってみました。製造の経緯がわかると、何度も眺めて納得しています。ふと思ったのは、バラ積み小麦が積荷なのに、何故クッション緩衝装置を設備したのでしょうね?
>>それはラッキーでした。
ところで、これらのボックスカーは1年のうちの一時期だけ穀物輸送に駆り出されました。大半は一般品の輸送に供されて、そのためのクッション・カプラーです。スカイブルーのGN車が荷崩れ防止設備DF2を備えるのも同じです。グレイン専用ホッパーって実は稼働率が通年では低いのです【ワークスK】
投稿: 久原賢二 | 2017/10/05 09:41