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2018/05/18

転換クロスシートの探求(2)

The first reversible seats in Japan were probably equipped with on the Kaitakushi passenger car built in 1880. It is now being exhibited at the Railway Museum in Omiya city, Saitama.

 松本哲堂氏に開拓使号の写真データを送っていただいた。我が国最初の転クロ装備車である。鉄道博物館の展示は薄暗く、撮影には苦労されたようだ。拡大してみたら、装飾ライニングの華麗さにビックリ。新製当時のステータスの高さを思い知るとともに、修復の大変さが察せられる。【画像はクリックで拡大】

 問題は車内なのだけれど、ガラス越しということで、これまた難渋されている。幸い照明が完備していて、座席のソデ(鋳鉄製?)がよく分かる。CBD1879年版のイラストにソックリだ。来歴を読めばオリジナルと考えられる(ウィキペディア日本語版)。もちろん繊維や木材は難しい。背モタレが赤で、座フトンが緑って奇妙な配色。

1879cbdp884

 ところで、天井の装飾が見事だ。高松塚古墳もかくや! 乗る者を楽しませようというメーカーの気概を感じる。

 連結器は、残念ながら当初のミラー式(別記事)へは復元されていず、自連のまま。氏が言われるようにナックルに"SHARON"の文字が読み取れる。因みに、このコンタ=輪郭が問題で、またいずれ話題にしようと思う。

 端梁左右の小さな箱は電気ジャンパーだろうか。二つの丸いものはトラスロッドの端部。

Kaitakushi100a.jpg  この車両と弁慶号のウンチクは松本風雅亭へ。

 右は、交友社1974年刊「100年の国鉄車両2」p178に示されている開拓使号の車内。座席の構造は全く分からないし、言及も無い。背モタレの裏が綾織の布張りと見てとれる。2018-06-01追加

前回は現行転クロの起源を求めるのが主目的だったので端折ってしまったけれど、この方式もなかなか興味深い。ウォークオーバーwalkover・シートではなくて、リバーシブルreversible・シートのほうで、背モタレにT字形に回転アームを取付けて引っくり返すもの。

 開拓使号のソデが鋳物製というのは、どうも“上等”ということのようだ。次は“下等”用の木製。前後座席用の足掛けFoot-restが付いている。(CBD1881年版)

 ペンシルベニア鉄道規格に採用されたメイソン・ロッカー式Mason Rocker Car-seatは、背モタレで座フトンを押し込んでその傾きを変えるという画期的なもの。ただ、操作する者が機構を知らないと上手く動かないような気がする(CBD1888年版)。これはジョンH.ホワイト氏の本に曰く、1879年にペンシルベニア州AltoonaのC.C. Masonが特許を取得し、1883年には2万セット以上が使われていたという。

 アームでピニオンを回転させて座フトンを強制的に傾けるものはガードナー・ギアード式Gardner's Geared Seat(CBD1888年版 たぶんニューヨークのGardner and Company製)。

 えっ、"Emigrant-Car"って移民専用車? 単に「下等車」っていうことだろうか。もしそうだったら、日本のボックスシートは何なんだ。

Emigrant_car

 次が分からない。補助イスではなくて、荷物置きだろうか。(CBD1888年版)

 さて追求すべきは電車。この時代までの路面電車はボギー車が無く2軸車だけ? 妻入りだからロングシートが標準。この辞書はそれをサイド・シートと呼んでいる(Side-seat; A car-seat, the back of which is against the side of a car.)。ロングシートって和製英語か。
 で、1888年版にある夏用路面電車が次。いうなれば、転クロとボックスシート。自走できそうにないかな。

CBC1888pE298a.jpg

 そういえば、背モタレを可動式としたモデルを持っていた。MTS/KMT製品。このあたりは1911年刊"Electric Railway Dictionary"にたくさんの図面と写真がある(別記事)。

 一度にドッと乗降できるので野球場などの輸送用として便利に使われたとどこかで読んだ。風雨の吹き込みのことを考えたら座席の板張りは仕方がないのかもしれないが、公園のベンチじゃないのだから、揺られたらお尻が確かに痛そうだ。これは某所でM氏からうかがった体験談。

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