転換クロスシートの探求(6)
Search for link-type walkover sheet patents: part 1, Hale & Kilburn Co. and etc.
少々手こずっていたけれど、英国で復元中の蒸気動車に行き着いたときには、これだ! と小躍り。1908年製というグレート・ウエスタン鉄道の蒸気動車のメカニズムが紛れもなく4節回転連鎖なのである。【画像はクリックで拡大】
そのHPには大略、次のように書いてある。
Electrical Railway Journalの1912年10月号に掲載されたHale & Kilburnによる広告の右下に、GWR蒸気動車に合致したスタイルが示されている。これは当時の多くのトラムカーに採用されたが、GWRでは本車以外には無かった。特許番号は3478(1902)および5957(1905)で、イギリスのG.D. Peters & Co.が製造し、そのGotha工場はGWR本線沿線のSloughにあった。同社の座席は世界中に輸出され、復元車のものはオーストラリアから里帰りした。
蒸気動車本来のイスではなく、オーストラリアから譲受したものだから、1908年は座席の製造年ではない。ヘール&キルバーン社はCar Builder's Dictionaryの1895年版に出てきた。まさに転クロwalk-over seatの名の起こりである。
ところが、この特許が見つからない。それに、開発時期が1902年や1905年というのは、今まで調べてきた範疇では早過ぎる。スライド式なら分かるけれど、リンク式はもう少し遅いはずなのだ。
■闇雲に探し回って見つけたそれらしい特許を年代順にお見せしておく。もちろん全てアメリカのもの。
1898年出願(US658949A P.M. Kling)は、固定の2支点を縦に並べている。問題は背ズリが直立したときで、2本のリンクが重なるから、構成面を別としなければならないし、4節の2本ずつの長さの和を等しく採る必要がある。またそのとき、背ズリが不安定となり、ひっくり返る恐れがありそう。実用化は疑問。
1898年出願(US658864A C.K. Pickles)これも固定支点を上下に配置で、直前のものに同じ。出願日が5か月遅かった。
1916年出願(US1196908A S.A. Walker)とうとう本命の登場。2つの固定支点を水平に並べて、2本のリンクが同じ長さ。起源はこれの可能性がある。ただし、座フトンの可動方法にスライドが多くて少し難あり。照号23と24のリンクが、照号21と22の回転軸と弾性結合になるから実用化は難しいかな。
1918年出願(US1298823A C.C. Tylor)大胆にも固定2支点をスライドさせるというアイデア。こりゃあ無理だ。
1933年出願(US1968434A A.B. Bell)特許権者がHale & Kilburnで、"rockerless walk-over seat"と呼んでいる。メーカー名が合致だから、これだろうか。でも、1916年特許の方が遥かにスマートで実用的。この大胆なスライドは、先行特許を逃げる方便のような臭いがする……。
まあ、すべての特許を拾えるものでもないし、当時の生の文献でも見つかれば別として、探索はなかなか難しい。日本ではないと思う。欧州の可能性はありだ。
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