転換クロスシートの探求(7)
Search for link-type walkover sheet patents: part 2, Heywood Brothers and Wakefield Co. and etc.
転クロ探索はもちろん米国のインタアーバンもヒットした。メイン州Seashore Trolley Museumで復元中の車両で、セオドア・ルーズベルト大統領に縁があるらしい。そしてなんと広島電鉄が2002年に台車を寄贈していて、元京阪100、200型のボールドウィンだという(ウィキペディア日本語版)。【画像はクリックで拡大】
電車はLaconia Car Co.が1912年に製造のPortland-Lewiston Interurbanの14号車"Narcissus"。「ナルシサス」は水仙の意。
そのブログ記事を読み込むと、この座席は、Manchester & Nashua Street Railwayの38号車、1906年製のものだという。端板にはマサチューセッツ州Wakefieldの"Heywood Brothers and Wakefield Company"と鋳出し文字。
その広告としてElectric Railway Journalの1929年3月16日号が示されていて、端板の形が少し異なる(文中には1928年と)。これは確かにリンク式だ。ヒジ掛けは無い。文中"interurban"の文字はうれしい。
おっ、1929年(昭和4年)だ。
早速会社について検索する。Wikipedia英語版、同社の50年史はここ(pdf)。クラシック・トレインズ誌の掲示板はニューヨークの本社建物の話題で、イスについてはわずか
■特許は4つを発見した。ただし、うち3つは全体の機構ではなくて、なぜか背モタレと座席端面2種が別々。図は左が背モタレ(1916年出願US1283986 C.A. Van Derveer)で、右が通路側の端面(1913年出願 US1169728 E.C. Lang)。壁際の端面(1913年出願 US1169727 E.C. Lang)は省略。このリンクの接合部や端面がカタログに酷似。座フトンの転換機構は分からない。
■1915年出願(US1240244 G.M. Ogle)の特許は何と個別リクライニングである。照号44のループ取手を引くと、背モタレが緩くなる。座フトンの機構は1913年と同じに見える。
■しからばということで、考案者名で検索すると1910年出願特許(US1283986 Clarence A Van Derveer)が見つかる。
固定側2軸が貫通していない。座フトンを動かすのにこんなに複雑にしなくてもという思いがあるからか、仕組みが頭に入ってこない。コスト的にも難しいと判断しておこう。
このあたり、出願から登録までに日数が掛かっているふうでもあるので、もめたのかも。あるいは、出願に手練手管を使ったのだろうか。
いずれにしろ、広告の1929年(昭和4年)には発売されていたことがハッキリした。最初の出現が1913-1916年の可能性は大きい。
それまでのものより、保守性や安全性、さらに操作性が格段に優れていたので、いくつかの会社が手掛けて、また古いものを置き換えてしまった、というような妄想が広がる。
1930年(昭和5年)初版の石井貞次著「客貨車」がわざわざスライド式を解説しているので、1921年(大正10年)のナイロ20500と、1927年(昭和2年)の京阪600は、微妙だ。
■現代の機構がどうなっているかを知りたい方のために京阪8000系の実車座席がネット販売されている。プレミアムカーへの改造で撤去したものだという。設置ベースが付いて重さ80キロ、送料込みで9万5千円。ヒジ掛けの中のエアーシリンダーがそのままだったら自動転換化も夢ではない。買った人は連絡してね。製造は旧3000系と同じ日本発条(日本リクライニングシート)、新品で20万円だったかなあ。
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