コンコーの57'メカニカル・リーファー
このキット、1990年代初めとしては意欲的な製品だったと思う。旧態依然のアサーンやMDCに対して、モールドがシャープで彫りが深く、屋根上歩み板の有無を選択できる点が画期的だった。
カプラーポケットは精度が良い上に回転軸にあらかじめ穴があいていて、さも小ネジ止めしてくれと言わんばかり。軸径も3.4ミリと適切。当方は穴を1.6ミリキリで貫通させて、M2のタップを切り、M2×3のナベ小ネジを取り付けた。ただし、フタの穴が小さめで2.5ミリキリで拡げた。
MR誌1993年11月号p43-44の製品紹介に「ケーディーカプラーが垂れ気味だから、フタ上面に0.01インチ(0.25ミリ)厚のプラスチック片を接着」とあるけれど、当方のものは大丈夫だった。改良されたのかもしれない。
他にも欠点がいくつか。いずれも修正は容易。設計者はユーザーがあちこち工夫することを想定しているようだ。単なるイージーキットではない。
台車の動きは好みにもよるけれど、左右のローリングが効かない点が当方には不本意。台車側梁の上面が車体枕梁に当たるのが原因で、中心ピンに0.5ミリ厚のワッシャをかまして対処した(Details West製品と一緒)。カプラーと車体の高さの変化は許容範囲(ということにしておく)。金属車輪化は短軸(26ミリ弱)で十分。ただし、5両分20軸のうち2軸は少し緩すぎて長軸とした。
床板の問題は歪み。金型を凝りすぎたせいだろうか。ウエイト鉄板に長めのアサーン50'車用を使うことで矯正。
重さは、NMRA推奨値が伸張カプラーポケット基準で147グラム。前述のMR誌は5.25オンス(149グラム)といっている。補重すれば重みで床板が抜けやすくなるから、抜け止めが必須。一方、キット添付のウエイト鉄板を用いると110グラム程度となる。この鉄板、ご丁寧にも説明書に包んで梱包されていた。
燃料タンクの取付は、ピンではなく根太との接触面に接着剤を流すのが強度的に無難。ハイドラクッションの垂直シリンダーはわずかに短い気がする。魚腹台枠様の中梁は、たぶん台車のボギー回転を考慮したもの。
まあ、総じて組み易いキットといえる。UPやSPのファンにまとめて買わせようと番号違いがたくさん発売された。
■プロトタイプについては、同種のアサーン製品を組む記事に書いた。
入手したのは1990年代の中頃、BNにトチ狂っていて、そのマークが付いているものは何でも買いあさっていた。で、その中に真っ白なこのBNFE車があった。車体側面に温度計と錠前のイラストを掲げて、"Temp-Lok"を謳っている。マイクロスケール社からはデカールが発売されて、BN友の会の会報"The BN Expediter"1995年1月号に解説が出た。
この車は炭酸ガスを使う極低温リーファー"cryogenic reefer"の試作車で、"BNFE 3"という車番。量産車はBN 751000-76の77両で、共に1966年製CB&Q車からの改造だった。一見はコンコーモデルとそっくり。ピークドルーフに、エクステリアポストと高位置手ブレーキ・ハンドル、さらに床下の垂直シリンダーが特徴的なハイドラクッション付きというわけで、オレンジのPFE車4両は塗り変えるつもりで入手した。
ところが子細に検討すると、実車は少し長いようだ。記事には60フィート車とある。室内長が試作車53'-8"と量産車54'-9"、さらに車外長67'-8"などの寸法は直接較べられないものの、台車中心間46'-3"はHOスケールで162ミリと、コンコー製品の158.5ミリよりも3.5ミリだけ大きい。それで"BNFE 4"などという架空の番号を付けたのだろう。ちなみに"3"は、第3世代の冷蔵車の意味が込められていて、"1"と"2"は存在しないという。
で、改造しようか、または、このまま行こうかと逡巡ばかりで20数年が経ってしまった。昨年10月の時点では未だ塗り変えるつもりだった。でも、残された余生のことを考えてこのまま組むこととした。始めればあっという間。1日で完成。これでメカニカルリーファーは21両。組立品はここを乞う御高覧
BNFE車は原理的にいって燃料タンクが不要なはずが実車には付いている(重量バランスの関係だろうか)。ただし、キットを長年出したり仕舞ったりしている間に2つのうちの1つ失った。で、取り付けないこととした。形が少し異なるという理由もある。
コンコーの広告はMR誌1993年6月号p27、同時にNスケールでも発売された。HOはPFEとSPFEを2種類ずつラインナップ。SPFEはハイドラクッション付きという選択なのだろう(垂直シリンダーを切り取ればUPFEも可能!)。このうち、オレンジ一色の車体にブラック文字の品番009801は、"1966 PFE orange/black scheme"だというから、新造時の姿で屋根歩み板付ということとなる(一部は1967年製で歩み板無し?)。MR誌製品紹介のモデルもそうなっている。しかし説明書などには一切記されていない。
このタイプのモデルは現在、高精細なインターマウンテン(元レッドカブース)製完成品が出ている。でも当方は安価なキットの形態がいいし、コンコーのレベルで十分。その点、ネットオークションで入手できるのはうれしい。もう少し潤沢で、送料が安ければよいのだけれど。
【追記】"A PFE gallery, Variations in the PFE fleet"という記事をRMC誌1994年9月号に見つけた。R-70-15, -16, -20, -22のカラー写真が5頁にわたって載っている。他に同誌の1990年9月号、1988年1月号、1982年7月号にも情報があるという。2020-01-18
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