香港クラウンの貨車(2)3ドーム・タンクカー
Shell Oil車のオリジナルの姿。タンク下面が黒ではない。
(1)カプラーのケーディー化
車体の組立は3本の木ネジ。台枠と一体のカプラーポケットをそのまま使うが、2つ問題がある。
一つはカプラー回転軸の径が2.2ミリで、ケーディー用の3.2ミリよりも大幅に細いこと。対策としては軸を切り取ってしまい、適当な丸棒を埋め込む。私はプラキットのランナーを利用した。真円である必要はないのでヤスリで調整する。具体的には丸棒の先を少しテーパーに仕上げて、2.8ミリ程度のドリル刃で開けたポケットの孔に突っ込んで接着する。一晩置いて出代を仕上げる。軸の中心に1.6ミリの下穴を開けM2タップを切る(図の緑色の部分)。
もう一つの問題はポケットのフタ。台枠下面カバーと一体となっている。そのまま使うとカプラーが大きく垂れ下がってしまう。原因は、フタの回転軸周りにボスのモールドがあることと、ポケット内の天地寸法が0.5ミリ大きいこと。で、ボスを平らに削り取り、回転軸の開口寄に0.5ミリのプラ板を貼り付ける(図の青色の部分)。プラ板は黒色のものを使い塗装しないのがコツで、カプラー首振りに対する摩擦抵抗を増やさないため。
この辺りは写真と断面図をご覧いただきたい。ケーディーはウィスカー・タイプ#148、止めネジはナベ小ネジM2×5。
フタのボス部を削り取ることにより、3.2ミリ軸の高さをポケットの縁に合わせればよいという加工上のメリットもある。
(2)タンク内へウエイトの追加
このまま金属車輪化を行うと、全重量(質量)が80グラムとなる。NMRA推奨値110グラムに30グラム足りない。私は14グラム2つを両面テープで貼り付けた。なお2両のうちの1両はタンク体を分解できなかった。これくらい軽くても直ぐに支障が出ることはない。
(3)タンク体下部の黒色塗装
アメリカ型の古いタンク車と言えば、タンク体の下部が黒いのが定番。この位置で分割する構造を採用した目的でもあるだろう。調べると他のメーカーは皆、そうなっている。なっていないのはクラウンだけ。で、塗る。シルバーの車は分解できなかったので、マスキングして塗った。そうしたら、テープを剥がすときにシルバーの塗膜も一部剥がれた。タッチアップをしたけれど見苦しい。これは無理をしてでも分解するべきだった。
上はRepublic Oil車の製品オリジナルの姿。下は改造後。
(4)アサーンやバックマンとの相違点
3ドーム・タンクカーは、保有するアサーン製とバックマン(台湾)製にもシェル・オイルがあった。ついでにキットバッシュしたら、ほんと、よく似ている。
奥から手前へアサーン、クラウン、バックマンの順。上回りは全く区別がつかない。同じ金型と思えるほど。ドーム頂部のハッチはどれも別パーツ。色はアサーンだけマスタード・イエローだが、別にオレンジも発売された。実車はどっちなんだろう。手すりは、アサーンが0.6ミリ径の無塗装で、クラウンとバックマンが0.5ミリ径の黒色。レタリングは微妙に異なる。
下回りも奥から手前へアサーン、クラウン、バックマンの順番。組立は、アサーンがインチ・ネジ(UNC 2-56)3本で、クラウンが木ネジとなっている。バックマンは焼き潰しだったが、M2のナベ小ネジ止めに変更した。また、バックマンだけ歩み板が広く、カプラーが台車マウントだった。
この写真はウエイトの取付方法を示すが、左のアサーンはケミカル・タンカーで、3ドームも同じ。1.4ミリ厚の平帯をタンク体の分割部高さに浮かせる構造で、完全な固定ではないから揺するとコトコト音がする。右はクラウンで、バックマンも一緒。タンク体底部に半円形に曲げた2.8ミリ厚の鉄板をプラスチックピンの焼き潰しで固定している。10グラムの増加となり、重心を下げる効果もありそう。改造では28グラムの増量分と共に両面テープで固定した。
こう見てくると、1957年のアサーンを、1963年にクラウンがコピーし、19711975年にバックマンがクラウンの金型を利用してトレイン・セット向けに仕上げたと推察できる。
■というわけで、わが社の3ドーム・ラインナップを御覧に入れる。画像クリックでコレクション・ページへリンクする。まずクラウン製の2両。
アサーン製も2両。
最後はバックマン製。
どうもタンク両側の歩み板にユガミが出やすいようだ。特にバックマン製には苦労させられた。プラスチック成型上で困難なことでもあるのだろうか。手持ちのトレインセット・レベルの製品に、タンク体下部と台枠周りを一体としたものがあって、結構シャキッとできている。次はライフライク製品。
こういう構造にあれこれ思いを巡らすのも面白い。
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