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2020/09/25

アサーンの86'ハイキューブ・ボックスカー(4)

Athearn 86-ft hi-cube boxcars (4) Coupler-cushionizing projects, part 27

4. ケーディー製の伸張スイングポケット

先日使ったウォルサーズ社のコンバージョンキットは廃版になったようだ(品番933-977 Swinging Coupler Adapter Kit)。そこでもう一つの選択肢であるケーディー社製にトライしてみた(品番#451 Extended Swing Gearbox)。【画像はクリックで拡大】

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左奥のPRR車にウォルサーズ製を、右手前のNW車にケーディー製を装備

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このパーツの作用を説明するのは難しい。要は、皿ネジのまわりに左右15度ぐらいスイングする。MRフォーラムの例のスレッドにrestoratorという方が写真を交えて説明しているのでご覧いただきたい。オフィシャル・ウエブサイトによれば定価は1両分1ペアが7.40ドルで、我が国でも割と容易に入手できる。この試みでは付属するカプラー#148(ミディアム長・中シャンク)をシェルフ・タイプの#118に交換して使う。まず取り付ける方法を考える。

(4-1) A案:ボックスカーの床下面にサラ小ネジを直接ねじ込むのが簡単である。ケーディーもこれを想定しているはず。

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ただし、ここのレール面上高さが10.6ミリだから、11.5ミリには0.9ミリ足りない。そこで、台車の心皿にワッシャを挟んで車体全体をかさ上げする。もちろん屋根高さも上がって60.4ミリ(計算上)と、プレートFをオーバーしてしまう。1ミリ程度は誤差の内と許容する考え方もある。

(4-2) B案:この1ミリが許せないという場合は、ワッシャに頼らず、ポケットの取付位置を1ミリ程度、かさ上げしなければならない。

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幸い、プラスチックの床板が厚さ1.1ミリなので、これを一部切り欠いて、ポケットをウエイト鉄板に直接取り付けると、レール面上11.7ミリとマアマアな寸法になる。なおポケットはポリアセタール(POM)製なので滑りが良好、かつカプラー本体を車体から絶縁できる。

ところが、一部の手持ちキットのウエイト板がステンレス・スチールだった。ステンレスはタップ切りが難しく、しばしばタップを折った。ドリル刃による孔明けだったらできる。

(4-3) C案:アダプターを介してサラ小ネジを上下逆さまに使えば、ウエイト板にメネジを立てずに済む。

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サラ小ネジの実測長が9.2ミリなので、レールとのクリアランスを略図のように2.3ミリ確保できる。さらに、このサラ小ネジは弱磁性体で、アンカプラーの影響を受けない(Custom Rail製3段オートキャリアーで実験済)。寸法を決定するために次の図を描いた。現物とは若干異なる。

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サラ小ネジを緩みにくくするために、メネジの有効長を6.2ミリ確保している。床下に突起が出現することは我慢する。
 なお完成後、取付ネジをきつく締めるとアダプターが傾くような気がした。アスタリスク(*)を付けた7ミリという寸法は8.5ー9.0ミリとすべきだろう。

(4-4) アダプターはポリスチレン板を重ね合わせて作る。

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切り出した材料を示す。板厚は1ミリ、1.2ミリ、1.5ミリ。これでアダプター1個分。黒い板は、滑り面を塗装しないために用いた。このところ黒色が入手しにくく、使用を必要最小限にとどめている。

(4-5) アダプターの組立は流し込みタイプ接着剤(liquid cement MEK)を使う。

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タップ加工までに48時間を空けて十分に固着させた。カプラーは仮組で、アダプターの塗装時に外す。そのとき、滑り面はマスキングする。

(4-6) 1.2ミリのスチレン板で裏打ちした床板を切り欠き、取付孔を開ける。

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孔の位置精度が肝心なので手順を詳細に説明する。まず、床板下面に孔位置をけがく。ポンチを打って、ピンバイスで慎重に穴明けする。次に床板とウエイト板を小ネジで固定する(方法は後日に示す予定)。床板の孔を治具としてスチールのウエイト板に、ボール盤か電動ドリルで孔明けする。その後、固定小ネジを外して切りクズとバリを除去する。なおドリル刃は、M2小ネジに対して2.2キリを使った。ステンレス板の孔径拡大はドリル刃を折り易いので、自信が無ければ2.4キリが無難である。

アダプターにポケットを固定する際にサラ小ネジを締め付けると、ポケットまで回ってしまう。ちょうどよい角度とするためには何度もやり直す。

(4-7) 車体シェルの妻面下部をポケットのスイングに支障しないように削り取るのは、ウォルサーズ製の(1-6)と一緒。

そして出来上がり。裏返すと突起が異様で、プロトタイプ・モデラーには薦められない。線路の上に置けば目立たず、機能最優先の私は気にいっている。
 ところで、このパーツが発売された時期が判らない。保有するウォルサーズカタログで最も新しい2012年版には載っていない。記憶が無いが、何かを見て注文したはず。手掛かりをお持ちだったらコメントをいただけるとありがたい。

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実車についての情報がModel Railroad News誌9月号に掲載されて、全文が出版社のウェブサイトで公開(8月6日付)となった。筆者はTony Cook氏で、Nゲージ製品にも言及がある。HOゲージ製品のタンジェント社といい、まさかとは思うが、私の1月のMRフォーラムでの発言が切っ掛けだったら愉快である。

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コメント

 飽くなき探求の姿勢、他者への情報共有姿勢に今回も感動して読み込みました。連結器と台車が楽しい走行再現に不可欠であることを、更には線路や路盤が大切であることを車輪のように丸いお月様を眺めながら再認識しておりました。

>>コメントをありがとうございます。これからもよろしくお願いします。そういえば昨夜は満月でした。【ワークスK】

投稿: Sadaaki Ohtani | 2020/10/03 05:07

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