Globeの木材金属混成キット 40'オートカー
入手した組立済のモデルは,だいぶクタビれていた.メーカーが塗装とレタリングを施して供給したのは側板だけで,残りはユーザーの手になることが明白.塗膜の剥がれとブラック塗装が目につく.プライマーは使われていないようだ.
カプラーはDevoreというメーカーの製品らしい.台車はアサーン製だろうか.ともにダイキャストである.
金属板を止めている釘は,容易に抜くことができた.木材ブロック同士は釘と接着剤の併用で,これもバラすのは簡単だった.この接着剤はセメダインCのような感じだから,同じセルロース系のアンブロイドAmbroidかもしれない.セメダインCは1960年代前半にゴム動力飛行機やプラモデルで愛用していた.あの臭いは好きだった.
屋根と台枠は0.25ミリのアルミ板で,屋根リブは0.1ミリの黄銅板,側板と妻板,それにドアは0.25ミリの黄銅板だった.プレス性を重視して使い分けたのだろう.
台車は車輪を含めてそのまま用い,中心ピンだけボス式に改造した.カプラーはポケットごとケーディーへ代えた.機器配置はAAR車の標準に変更した.
このキットの欠点の一つは,ドア上部の剛性が弱いことで,次の写真に示す木板を追加した.
もう一つの欠点は,ダブルドアがピッチリと閉まってくれないことで,上下のガイドの終端が支障している.そこで,向かって左のドアの写真の位置に切り欠きを入れた.なお,これら2枚のドアは同じ6フィート幅用でプレス模様も同じである.本来は左のドアのタックボード表現は不要.後述のカタログに別売パーツとして"4424 Doors, Notched"とあるのは,これの置換用かも.
ところで一つ目の欠点は,1年前の1948年に売り出したシングルドア・ボックスカーでも同じだったはずなので,改良が無いことを訝らざるを得ない.二つ目は,安直に部品を流用したことに対する落とし穴といえる.かつて構造物の図面書きを生業としていた身には耳に痛い話ではある.
側板以外の金属部分は,ザッとサンドペーパーを掛けてプライマーを塗った後,適当な色の缶スプレーを吹いた."適当"という意味は,手持ちの似たような色を3つほど塗り重ねたということなのだけれど,色合わせは残念ながら成功したとは言えない.
木材同士の結合には釘とホワイトボンドを併用した.金属板の貼付けは瞬間接着剤とエポキシ接着剤を使って,釘は用いていない.木材と金属のハイブリッド構成なので両者の収縮の差が気にかかる.2020年2月に組み立てて4年が経過したが今のところ異常は出ていない.これ以上に大きいモデルだと釘止めとしなければ難しいと思う.
屋根歩み板と枕梁はダイキャストで,"GLOBE"の刻印があった.枕梁の中心に埋め込まれたプラスチック(ベークライト?)のブッシュは,両台車の絶縁のためだろうか.カプラーもダイキャストだから,それに気が付かなければ原因不明のショートに悩まされたかもしれない.今回はカプラーをポケットがプラスチックのケーディーに代えているので,その恐れは無い.
なお,車輪と車軸は金属で,共に非磁性だった.アルミ板の台枠を介して2つの車体ボルスターが電気的に繋がる可能性があるので念のため絶縁車輪の側を4軸で揃えている.
このホワイトのレタリングは見事だ.隠蔽力といい,精細度といい,シルク印刷の面目躍如といえる.パッド(タンポ)印刷がこのレベルに到達するのは40年以上も後の1990年代になってからである.
手ブレーキハンドルは,もう少し高い位置に付け替えれば良かった.
Page 10 of the Nov. 1949, Model Railroader magazine
■グローブのカタログがHOSeeker.netに公開されている.
専用塗料が別売されていて,このモデルもそれを使ったのかもしれない.
ここの塗装のヒントは,ハシゴをジャガイモに突き刺して吹き付け塗装をせよなどと罰当たりなことを書いている.食物を粗末にしてはいけない.
工場内には大層な機械が並び,従業員もそれなりに雇っていたようだ.創業者の経歴なども書いてある.
このキットの構造を"tab in slot"と呼ぶ等というグローブ社についての議論が,MRフォーラムで交わされている.
美しいSouthern Belleのレタリングを持つダブルドアのボックスカーを調べると,実車でもモデルでも50フィート車しか見つからない.40フィートの自動車運搬用は無いことは無いけれど,まあ,そういうことなのだろう.
次のパッケージ写真はオークションサイトからの引用.ウィスコンシン州ミルウォーキーの文字が読める.1951年には会社がアサーンに買収されてカリフォルニア州ロサンゼルスへ移り,このデザインも変わった.
画像はこちらに収蔵>>Cascade Green Forever!
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コメント
突然失礼致します。東急電鉄車両部のOBの者です。
数ヶ月前から貴ブログを拝見しており、どうやら自分と同じような経歴をお待ちの方であろうと思っておりましたが、今さらながら自己紹介を拝読して、とても懐かしい思いに駆られました。私が寝屋川の車両工場を見学させて頂いた折りには、栗生様は確か車両課長をされていて、とてもご丁寧な対応をして頂きました。ありがとうございました。
私も60年にわたり鉄道模型を趣味としております。日本型の他には欧州型が好きですが、最近は今さらながらアメリカ型にも興味が沸いてくるのを抑えるのに苦労しております。
これを機会に楽しいやり取りなどできれば幸甚に存じます。
>>ようこそおいでくださいました.長津田工場は全国車両屋のお手本で,教えを請いに伺わせていただいたものです.
アメリカ型は円安で逆境と言えますが,そんな中でも楽しみ方は選り取り見取りですよね.ご活躍を期待しております【ワークスK】
投稿: 川口雄二 | 2024/03/26 15:00
私が見学させて頂いた時、上下の窓がワイヤーで繋がった二段窓の機構に感心しました。京阪さんには賢い方がいらっしゃるのだな、と。東急で多用していたエキスパンダ式のバランサを使う一段下降窓のバネの復元力と窓枠の摺動抵抗をバランスさせる機構は、ちょっと素人っぽい感じがしました。
>>たぶん,フリーストップ・カーテンのことだと思います.上下させても任意の高さで止められ,決して傾かない機構です.元は阪神が側開き戸用に使っていたアイデアを頂いたと聞きました.1959年から採用され,材質と終端処理を工夫して,私が現役の頃は完璧,全国でも唯一無二の存在でしたね.鉄ピク1991年12月増刊号をご覧ください【ワークスK】
投稿: 川口雄二 | 2024/03/27 10:22
そうです。カーテンのことでした。あの左右のワイヤーがカーテンの横棒の中で入れ替わっている機構に興味を引かれたのでした。
上下の窓がワイヤーで繋がっていて、下窓を上げると上窓が下がる機構は、どこかの電車で見たことがあるのですが、それと記憶が混ざっていたようです。失礼しました。
投稿: 川口雄二 | 2024/03/27 22:33