転換クロスシートの探求(9)
山陽鉄道または鉄道局の1本リンク式(1888年?).赤松麟作・画「夜汽車」で知られる.
上野モノレールの簡易形1本リンク式って,どんなものなのだろうか?(日本車両豊川製作所 メモリアル車両広場)
国鉄2等車用の2本リンク式(丙種).オロ31(1927年)もしくはオロ35(1938年).
ブラジル向輸出用の2本リンク式.(1957年 ソロカバナ鉄道Estrada de Ferro Sorocabanaの誤植>>Wikipedia日本語版,車体設計は小田急2200形用を流用とのこと)
ブラジル車の図の拡大.リンクの長さ寸法に注目いただきたい.2本の長リンクは285ミリと同じなのに対して,背モタレのピン間隔が73ミリで,ベースのピン間隔が61ミリとなっている.名鉄車は74ミリと60ミリである.ここがこの2本リンク式機構の核心といえる.
■車両技術147 車両工業デザイン15「車両の腰掛」 1986年3月刊行
(1)背ずり転倒式 背ずりを回転させて,背ずりの上下を逆に入れかえて,座席の向きを変える方式で,この1軸回転式(写真5-1),と交差リンク式(写真5-2)があるが,現在はほとんど使われていない.
一軸回転式の実例は見たことが無い.背ズリの上縁に力を加え続ける分には機能するが,下縁を押すとたちまち破綻すると思う.開拓使号のものが背ズリとリンクとがT字形に固定されている所以である.ただこれ,可能性として,背ズリの両固定位置で背ズリとリンクをロックするという,手の込んだ機構を備えているかもしれない.まさかこの方式が1921年(大正10年)のナイロ20500だろうか.>>過去記事
交差リンク式は1961年版にも同じ写真が「I製作所が試作した新しい転換座席」として紹介されている.既にお伝えしているように,古くから外国に実例がある(フォーニー式).ご想像どおり,安全性に難がある.(I製作所は,株式会社泉製作所だと思う)
(2)背ずり転換式 背ずりを前後の方向に転換して,座席の向きを変える方式で,①背ずりが前後に移動する動きに連動して,座ぶとんが着座方向にスライドするもの(図5-6),②背ずりが前後に移動する際,座ぶとんがその中央を軸として,シーソー連動するもの(図5-7).③背ずりの前後の動きに関係なく,座ぶとんが固定されたままのもの.などがあるが,一般には①,②のものが実用化されている.
転換機構は,2本の転換軸と4本の転換リンクで構成されていて,2本の転換軸は左右の脚台に回転自在に取り付けられ,この転換軸の両端に,転換リンクがそれぞれ1本ずつ固定されている.リンクの他端は背ずり下端に取り付けられているリンク受金に回動出来るようにはめ込んである(図5-8).
(a)座ぶとんのスライド機構は,2本の転換軸のうちの1本に,座布団をスライドさせるためのリンク受金を設け,また座ぶとん枠の下にも同様なリンク受金を設けて,この受金間をリンクで連結し,背ずり転換時に座ぶとんを前に移動させるような機構になっている.なお,この際座ぶとんが円弧状の軌跡にスライドして,座ぶとん面が前上がりになって適当な傾斜が付くように脚台に案内を設けてある.
(b)座ぶとんがシーソー運動をするものは,背ずりを転換すると,座ぶとんはその中央を支点として,シーソー運動をして,座面の傾斜がかわるようになっている.この方式は簡単な機構であるが,座面の奥行寸法をスライド式のものと同じにするためには,前後のスライド分だけ,シーソー式の座ぶとんの奥行を大きくしなければならない.
これらの図は0系新幹線の2人掛け用だと思う(記述はない).3人掛けも同じ構造で,確か長リンクが太くなっているはず.
ここに座ブトンの傾きを背ズリの向きで変える方式として2種類,スライド式とシーソー式が示されている.これらは,2人掛けと3人掛けとで違えていたのか,製造年で異なっていたのかは判らない.
前出の名鉄車とブラジル車はスライド式である.当方の関わったものもスライド式だった.スライド式は抵抗が大きいことが難点で,自動転換式だと不転換の原因となる.
ここに示す0系新幹線用は珍しいことに座席の中間にも肘掛けがある.かつ,それは座ブトンに固定され一緒に傾く.ただし,両端の肘掛けは,他例と同じようにベースに固定されていて動かない.
ところで,もっと詳しい資料にアクセスしたいと様々な伝手で探っているが,欲しいものになかなか辿り着けない.気長に探すつもりではあるものの,こっちの寿命が尽きそうだ.あとはよろしく.
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