TMS誌1000号付録のデータベース
■まず最初は「万力切り」の記事を探す.とれいん誌2024年6月号で今野喜郎氏が解説された元ネタである(鉄道模型情報室を参照).アイデアとか技法は,その考案者名を明らかにして敬意を表するのが礼儀.しかし,当方も探したけれど見つけられなかった.
「万力」で検索すると,あった! 1965年5月号(No.203)「糸鋸工作の特殊工具」で,筆者は小林義和氏だった.そうか,主題は「糸鋸」だったのか.
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1965年5月号(No.203)331頁
■次は「シーズン・クラック」を探す.![]()
ダイキャストの経年割れを指す言葉として,本来なら「亜鉛ペスト」か「ジンク・ロット」が妥当なところを,TMS誌がこちらを広めてしまった経緯がある.しかし,その初出が分らなかった.
まず「シーズン・クラック」で探す.見つからない.「シーズン」でも「クラック」でもだめ.「ダイキャスト」はゼロ.なら「ダイカスト」ではどうか.
出た! 1961年7月号(No.157)と,1970年5月号(No.263)で,共に「鉄道模型相談室」.当方が目にしたのは後者で既に発見済み.前者では,安価品は湯道などを再利用して金属の純度が落ちた結果と明言していて,これが正解.米国を含めて,ファン向けの文献で正しく伝えた唯一の事例かもしれない.たぶんこれは専門家に聞いている.当時は「粒間腐食割れ」という言葉が知られていなかったのだろう.(過去記事を参照)![]()
■次は人名の検索.「武直一」という戦後にクラフツマンとして名を馳せ,鉄道模型社では製品開発に当たった方がおられる.昨年4月にとある切っ掛けで情報をTMS誌から拾い出していた(鉄道模型情報室を参照).このデータベースで著者を「武 直一」と,苗字と名前の間に全角のスペースを挟んで入力すると3件をヒットした.スペースの無い「武直一」では,記事の題名で座談会のメンバーとして出てきた.
一方,手作業では,さらにグラフ写真2件と広告1件を探し出している.特に鉄道模型社の広告は有名.データベースでは,こういうものを探し出せない.![]()
TMS1966年8月号p495 D50 2-8-2 1/80 16.5 mm
■「伊藤 剛」さんでも探してみた.著者名で記事は66件が見つかった.これは手作業での検索と同じ.2014年8月号(No.868)の追悼記事は,著者名の備考欄で知れる.往時の人物紹介である「1952年9月号(No.49) p75 模型人の横顔(1)(F氏執筆)」は,記事表題にあって「随筆」で引っ掛かった(右画像).
「1949年8月号(No.15)第1回デザインコンクール"長距離急行電車"」は見つけられない.加えて,各記事が特集シリーズに再録されたことも判らない.(過去記事を参照)
■西尾博保さんの件では,高田正彦さんの作品と共に「77年頃、東京・池袋の西武百貨店模型売り場で展示された 」と,本ブログの読者から教えてもらっていたので,その告知を探した.これは発見できなかった.(過去記事を参照)
1970年6月号(No.264)表紙
■弄っていて釈然としなかったところは,このデータベースと,1946-1956年の全文PDFファイルとがリンクしていないこと.全文PDFファイルは巨大な上に頁が単に順番に並んでいるだけで,見たい月の号数を指定できるわけではなかった.また,CTRL+Fの検索も利かなかった.せめて号数毎に別ファイルにしてくれていたらアクセスしやすかったのにと思う.
ただし精細度は高く,現物よりも鮮やか.しかも閲覧しても冊子の破損や劣化の心配がない.
データベースに掛けた労力が膨大だったことは想像に難くない.用語の統一とか,作業者間の連携も難しかったはず.特に「先行記事」は入力者の記憶力と見識が問われる.
疑問に思うことは,このデータベースの想定する利用方法である.これだけでは,面白くもナンとも無い.記事の記憶があって,過去号を保有している者が探し出すために使うくらい.説明と分類,さらに入力が人手だから,正確性に一抹の不安を感じる.それらは全てが一義的に決まるものではないはず.TMS誌が長年続けてきた年毎の索引を電子化しただけなように感じる.
同誌がこれを出した理由は何だろう? もちろん,売上アップが大きな要因を占めるはず.ファンの懐古趣味を掻き立てる意味はあるのかもしれない.しかし,我々のこれからの趣味活動にインセンティブを与えるかと問われれば,首肯はできない.
これで検索して記事に魅力を感じてバックナンバーを探そうとするだろうか? 古書市場で価格が上がるだろうか?
このデータベース自体は,新たな価値を生まないのではないか.ひま潰しに少しはなる.ただ,すぐに飽きる.戦争直後10年間の記事は,今の時代に楽しめるだろうか.17冊のスタイルブックを入手したところで,自作する者が現れるだろうか.いや,TMSの読者なら,あり得るか.
■やはり,全文検索が欲しい.
アメリカのTrains誌は2010年に70年分の全ページを収めたDVDを約150ドルで売り出した.そして翌2011年にMR誌が75年分を200ドルと続いた.これらは自由語は言うに及ばす各種の検索が可能で,その期間を絞り込むこともできる.(鉄道模型情報室を参照).
そして2021年には有志による無料のRailroad Magazine Indexがネットに開設された.4年後の今では雑誌数が56,号数は合計8,664,総ページ数は613,207と謳っている.これ,著作権の関係から,記事本文は検索語前後の2,3行をアップするだけで,ページ全体はサムネイル(縮小見本)表示なのだけれど,大凡の見当は付く.記事本文はもとより広告もヒットするのでメーカーや模型店の消長,さらに語句の用例なども手に取るように分かる.我が国の人名も数多く見つかる.“HO gauge”から“HO scale”へ変遷した時期も見当が付けられた.
アメリカ型鉄道模型大辞典では前述の2枚のDVDと併せて頻繁に参照している.動作が高速なことはありがたい.MRH誌などのフリーペーパーへはダイレクトにジャンプし全文が読める.
雑誌の索引で,広告にアクセスできない点は,致命的な欠陥だろう.「製品の紹介」では足りない.歴史をたどれないからだ.言葉の揺れは重大事案である.このデータベースでは中尾豊氏が,いつから平仮名の「なかお・ゆたか」を使ったかを,まったく知ることができない.
アルファベットと比較して日本語はデジタル化が難しいのかもしれない.旧字体とか異体字とか,スペースの問題とか.OCRでも難儀をさせられている.AI技術で何とかならないものだろうか.
【追記】本号が売り切れ店続出という話を聞いた.税込み定価2,000円が,ネットオークションでは5,000円を超えて入札され,即決10,000円などという出品まであった.でも,DVDがMade in Taiwanなので,増刷は難しいかもしれない.
忘れていたけれど,初期のTMSの64号までと,スタイルブック17冊の目次を作り始めていた.2012-2018年頃のことである.表紙をスキャンしておいて,目次はボチボチ追加するという段取りだった.結局,中途半端で終わっている.>>鉄道模型情報室 2025-04-23
【追記2】アメリカのいくばくかの鉄道模型雑誌の過去号が,なんとScaleTrainsのサイトで閲覧できるようになった.MRG,RMJ,PTMの各誌.かつてTrainLifeで公開されていたものの復活である.今回は見違えるようにサクサク気持ちよく動作する.検索はRailroad Magazine Indexの機能を巧妙に使っている.2025-08-24![]()
【追記3】TMSデータベースの起動方法をつい忘れて慌てる.なんとも面倒.2025-10-26
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1970年前後を彼の地で過ごされたarxさんのブログ。NゲージでD&RGWコレクションを展開
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コメント
>> でも,DVDがMade in Taiwanなので,増刷は難しいかもしれない。
どこの本屋さんにも、もう無い感じですね。さっきIMONへ行ったら、増刷の告知が出ていました。ただワークスKさん、御懸念の通りDVD再生産などが手間取り、店頭に出るのは5月も遅くのようです。月刊誌が発売直後に売り切れなんて、さよなら国鉄の時の「鉄道ファン」以来じゃないでしょうか。驚きました。
>>「私の1000分の1」には唖然とさせられました.また「私の鉄道から」も拝読しました.TMSとも浅からぬご縁を結ばれていることに平伏です.データベースはこういう場合に役に立ちます.増刷の件,雑誌は“夢”を売っているのだと,つくづく思います.実用は二の次なのですね【ワークスK】
投稿: 宮崎繁幹 | 2025/04/24 17:51
実は私、この号の入手に失敗しています。気がついたときはどこも在庫切れ。車を出して、『鉄道模型趣味』を過去に見かけた本屋を5~6軒回ったのですが、どこも完売でした。ヤフオクなどでは定価の数倍の価格で売られています。入手できるのは、騒ぎが収まり、販売価格も落ち着いた数年後だと思っていましたので、増刷の情報を教えていただき、とてもありがたい話です。しかし、増刷分も早めに予約しないと買えないでしょうね。
>>アメリカ型ファンがこのデータベースを使うときの心得の一つは表記の揺れです.例えば,ペンシルバニヤ,ペンシルバニア,ペンシルヴェニア,ペンシルベニアという具合です.考え様によっては楽しめます.是非!【ワークスK】
投稿: delphinus | 2025/04/27 14:38